ユーザ事例に造園業界のグランスケープを追加
2018年3月19日

ランドスケープ・ガーデンのプラン、設計、施工、メンテナンスおよびコンサルティング事業をされているグランスケープ有限会社。「人と植物が寄り添う空間の創造」をコンセプトとした、店舗・集合住宅・個人邸のガーデンを手掛けられ、自然な環境を創出した”森”のような庭づくりを得意とされています。今回は、Minicad 6から使っているVectorworksでの業務の行程と魅力について、代表取締役の大石剛正(おおいし たかまさ)さんと取締役の舘林康行(たてばやし やすゆき)さんに語っていただきました。

造園業界のニッチな存在

御社の特色を教えてください

詳細な図面の提出を求められるゼネコンの仕事も、特殊な植物を取り扱うデザイン的なご要望にも応えられることがグランスケープの強みです。図面作成・工事・メンテナンスを分業化せず、一人一人のスタッフが全ての工程をできるようにしているので、トータルで植物とつきあえて知識が偏らないことが、他社との違いと言えます。

はじめは手から

仕事はどのように進めるのですか?

案件は、集合住宅が多いです。ゼネコンさんからモノクロの建築図面データをいただいて、そこにカラーで設計をしていきます。一番初めの形は、手で描くことが多いですね。脳と手は繋がっていると考えていて。人が歩く曲線を、コンピューター上でカチカチするよりも手で滑らかに描く方が自然にぴったりはまるんです。デッサンした絵を見ながら、Vectorworksで図面に投影させる作業をしていきます。

大石 剛正 氏(左)と館林 康行 氏(右)

3Dで打ち合わせ資料を作成

打ち合わせでは、お客様にまず平面図をお見せして、ご要望を書き込んでいきます。マンションの顔みたいなところはお客様が特に気にされるので、玄関のファサードデザインを3Dで提案します。また、ラウンジの中からどう見えるのかを表示して、この樹はあっちの方が良いというように、打ち合わせを進めていきます。

Vectorworks Landmarkを導入する前は、建物を作成した後、画像処理ソフトで樹木を入れていたんですよ。リアルには表現できるんですが、これが時間がかかる。5mの樹高もなんとなくでしか入れられない。Landmarkで正確な高さの樹木が表示できるようになってから、楽になりました。

外部スペース全体の改修計画図。舗装のタイルと主張しすぎない植栽の表現が、見やすく美しい図面を作り出す。

機能がスキルを超えた

Vectorworksはいつから使っているのですか?

Minicad6から使っています。3Dへの取り組みは早くて、16、17年前からVectorworksで3Dを描いていたんです。立ち上げるのも簡単で、自分の頭の中を立体化するにあたって面倒な手順を踏まなくて良いから、ゲーム感覚でやってましたね。

ただ、以前はパソコンのCPUの性能も高くなかったので、アングルをかえたらレンダリングが進まなくて、もう手で描いちゃえ、と。ウッドデッキとか建物パースだけを印刷して、そこに植物を手で描いていた時期もありました。

この頃から比べたら、今のLandmarkの機能は夢のようですね。パソコンの処理能力も高くなって、理想に機能がどんどん追いついてきて、スキルを追い越されてきた(笑)。昔3D表現に挫折した中高年の造園家に、ぜひ今Vectorworksを使ってほしいですね。本当に使いやすいから。

イメージパース。高低差のある地形の外構をさまざまなアングルから確認している。

資料作成はケースバイケース

ご提案のデータはどうやって作成されていますか?

お客様にイメージを伝えるにあたって、図面と植物の写真を混在させることがよくあります。図面を見慣れない方だと平面図だけでは伝わらないので。これを大判の紙に印刷して見せています。3Dの作成はすべての案件ではなく、ケースバイケースですね。個人のお客様の場合も、こだわりの強い方や不安を抱えたお客様の時は、印刷した紙面だけでなくパソコンを持って行ってその場でアングルを変えながら見せることもあります。

植物選びはキャスティング

植物のイメージは写真だけで伝わりますか?

パースでイメージを持ってもらってから、お客様を連れて実際の植物を見に行く「材料検査」をします。平面図で5mのシマトネリコとあっても、樹には1本1本個性があるので見に行かないとイメージとまったく違うものになる場合もありますから。

植物選びって、映画のキャスティングと一緒で、主役もいれば脇役もいて、エキストラもいるんです。みんなそれぞれに役割があるので、主役ばかりでは映画が成り立たない。例えば株立ちの柔らかい印象になる樹木を主役にするなら、周りは別にするとか、MIXさせていくんです。

使用する植栽イメージ。多い時で1案件200種類の植栽を扱うこともある。

引き渡しは完成形で

作成したCADデータと竣工後のギャップはありますか?

パースが立派すぎると、工事の段階で完成形にしないといけないんです。昔は、5年後10年後に庭が完成するように、引き渡しの時はスカスカの状態が普通だった。今は引き渡し時に作成したパースの状態を作っています。昔からの職人さんには「植えすぎだよ」と言われるんですが、実際は植物同士で生存競争が働くから、5年後でも作った時のまま、意外と大丈夫なんです。

汎用性の高さが魅力

Vectorworksを使う上でのメリットは?

うちの業務の1/3はメンテナンスです。造った庭を管理するので毎年増えていくのですが、その報告書にもVectorworksを使っています。文字入力や写真貼り付けなど、別のソフトでももちろんできることですが、Vectorworksで行うと決まったフォーマットにはめ込むだけのルーチンにならない、クリエイティブな作業になるんです。

平面を描いてすぐに3Dに立ち上げることもできる、報告書類の作成にも使える、表現手段として汎用性が非常に高い。そこが一番の魅力ですね。

メンテナンスの報告書。決まった枠にはめ込まれない自由さがある。

自然との調和

こういったメンテナスの知識は、次のプランニングに活きています。植物は色と形だけではなく、日陰に強いとか環境への適性があるので、プランニングの際に考慮しなければいけない。この植物はこうあるべき、という自然の感覚は誰しも必ずあるので、そこから逸脱するとデザインとしてもおかしくなるんです。

感覚的に植物を選んでデザインをするのと同じように、感覚的に操作ができるという点においてVectorworksは僕らにとって使いやすいソフトです。

シームレスなデータのやり取り

建築設計会社とのデータの受け渡しが必須かと思いますが

個人邸の場合は、建物はアトリエ系の設計会社さんが多く、そのほとんどがVectorworksを使っていらっしゃるので、シームレスにデータのやり取りができています。ゼネコン系の会社さんはDXFかJWデータが多いですね。JWデータに関しては、昔はレイヤが崩れたりとかありましたが、今はほとんどトラブルがないです。VectorworksでJWデータを直に取り込める、そういう対応が、地味に非常に助かってます。

実際の作業の様子や今が見頃の植物の紹介もあり、説得力のある報告書となっている。

手放せないデザインツール

Vectorworks Landmarkをお使いいただいていかがですか?

3DができるようになってからVectorworksだけでほとんど完結できるようになりました。うちの唯一のデザインツールですね。正直、途中で他のCADに替えようかと思った時期があったんです。でも、一度覚えちゃうと他のCADにいけないんですよね。このツールボックスは他にはないというか。Vectorworks2016、2017あたりのバージョンアップで性能がバンとあがったことも大きい。Landmarkの植物がだいぶリアルで、かなり楽になったんです。もう手放せないですね。

VRで積極的なアプローチを

Vectorworksを使って今後取り込みたいことは?

今の機能を使いこなせていないと思うので自身のスキルアップも必要ですが、今後は、Vectorworksでアニメーションとかにも取り組みたいですね。今は、VRの機能もあるじゃないですか。VRもチャレンジしてみたいかな。商業施設などの案件で、もっと積極的なプレゼンテーションを目論んでいます。

取材協力
  • グランスケープ有限会社
  • 代表取締役 大石 剛正 氏
  • 取締役 館林 康行 氏

詳しくは、エーアンドエーのウェブサイトで。

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