「建物が建てられない」事態をBIMで切り開く
2018年6月18日

「建物が建てられない」という事態進行の中でBIMで状況を切り開いていく

2017年の人口の自然減は39万4,373人
2013年の空き家数は819万6千戸で空き家率は13.5%

6月1日に厚生労働省から衝撃的なデータが公表されました。2017年の人口動態統計によると、合計特殊出生率は1.43で、前年より0.01ポイント低下し、低下傾向が止まりません。2017年に亡くなった人は134万433人で、130万7,748人だった前年より3万2685人増加し、戦後最多となっています。これによって出生数から死亡数を引いた人口の自然減は39万4,373人で、統計を始めて以来、最大の減少幅となりました。

これだけの人口減による国内市場の縮小が続くと、まさに「建てない建築」「建物が建てられない」という事態が現実味を帯びてきます。

株式会社野村総合研究所では、「2030年度までに新設住宅着工戸数が53万戸に減少する」と予測しており、「新設住宅着工戸数が減少しても、それを上回るスピードで世帯数の減少が見込まれる」とも指摘しています。

2013年の総住宅数は6,062万9千戸、空き家数は819万6千戸、空き家率は13.5%でしたが、既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年には総住宅数7,106万7千戸、空き家数2,146万6千戸、空き家率30.2%に上昇すると予測しています。

以前、積水ハウスのCADシステムについて取材した際、インタービュー後に語られた言葉が思い出されます。それは「建てない住宅メーカーというものも指向しないと生き残れないかも……」というものでした。
※出典:株式会社野村総合研究所「2018年、2023年、2028年および2033年における日本の総住宅数・空き家数・空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)の予測」

空き室を民泊施設へと転用する際の改修設計・施工にBIMを用いて新たな市場を開拓

空き家などのストックを最大限に活用する施策のひとつとして注目が集まっているのが民泊施設への転用です。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、日本を訪れる外国人の数はますます増えていくことが予想されます。住宅の空き家、空き室を宿泊施設として利用できる民泊新法も6月15日に施行されます。

そのような状況に目を付けた民泊仲介サイト「ホームアウェイ」では、日本各地の古民家を民泊用に改修して、特に外国人旅行者に紹介する試みを進めています。福岡県うきは市では、築150年余の古民家を改修し、民泊の営業を始めました。(6月4日:NKH総合ニュース)

このうきは市のケースのように、「建てない建築」「建物が建てられない」との事態に建築の側から積極的にコミットできないのでしょうか。ひとりの若手建築家の活動を紹介します。

その建築家は実質一人で事務所を運営しており、BIMを用いた標準化・商業住宅とのコンセプトの基、地場の工務店の設計部門としても活動していました。安定収入を得る目的で、事務所の空きスペースを民泊施設として改修し、民泊仲介サイト「エアービーアンドビー」に登録した処、ほぼ満室状態となったのです。勿論、都心からも交通の便が良いなど立地条件も良かったのですが、ここに新たな市場があるとピントきたわけです。

現在では、彼のところに、さまざまな空き室情報が寄せられ、それら物件を民泊へと転用する総合プロデューサ的な仕事を進めています。

以前から、BIMは新築と共に、既存建物のデジタル化に効果があるといわれてきましたが、現実的には適用事例はほとんどありませんでした。民泊への転用という経営的な戦略の中にBIMを位置づけ、改修設計から施工へと活用し、さらなる再改修にもBIMを活用します。BIMによる情報のデジタル化のメリットを活かして次なる新たな市場開拓に挑戦している事例です。

参照:総住宅数・空き家数及び空室率の実績と予想結果(株式会社野村総合研究所)

詳しくは、GLOOBEのウェブサイトで。

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