コラム「竣工後の建物をIoTで捉える建築の新サービス」を公開

2018年7月10日

BIMで建築が夢をみる

#38 竣工後の建物のさまざまな挙動をIoTで捉えて建築の新たなサービスへと繋げる

何度か論じたように、「消費が遅れてきた生産だ」とすると、「(不動産=竣工後)の建物は遅れてきた建築だ」とも考えられます。BIMを始めとするデジタルツールは、主に設計施工など業としての建築内部の生産性向上などとの関わりで語られることが多かったのですが、FM業務への適用を更に進めて、建物のさまざまな挙動をリアルタイムで捉えるIoT(Internet of Things)との関わりも顕著となってきました。

今回は大手ゼネコンの大林組が公表した『建物のあらゆる情報を集約できるプラットフォーム「BIMWill®」を東京都内のテナントオフィスビルに国内初適用』とのニュースを題材として検証してみます。

キーワードはリアルとサイバーのデジタルツイン

株式会社大林組では、建設時のBIMモデルを活用して維持管理履歴を始め建物に関するあらゆる情報を集約するためのプラットフォーム「BIMWill®」を開発し、大林組グループの大林新星和不動産株式会社が所有するテナントオフィスビル「oak神田鍛冶町(千代田区)」に初適用すると6月25日付けで発表しました。

これによって建物完成時のBIMモデルに対して、各種設備機器の稼働情報や維持管理情報だけでなく、地図や天候といった外部情報を集約することで、建物管理業務の効率化、高度化を図ります。建物利用者の位置情報や体感(暑い、寒いなど)情報なども集約することで、「BIMWill®」が実際の建物のデジタルツインとなり、これを活用するさまざまなサービスを展開していくことが可能となります。

モノのインターネットと訳されるIoTを説明する概念として、よく用いられるのがデジタルツイン(Digital Twin)という概念です。建築分野に先駆けてIoT導入が進む製造業のデジタル化を説明する際にもよく用いられます。

工場などでの製造ラインや製品などの物理世界(モノ=Physical)の挙動を、そっくりそのままデジタル(Cyber)上にリアルタイムに再現するという意味です。可動する工場や作られた製品を、あたかも双子のように、システム上に現実世界を模したシミュレーション空間を構築し、現実の工場の制御と管理を容易にする手法のことです。

不動産を動産化する建築におけるデジタルツインの可能性

このようにリアルとサイバーのデジタルツインを考える時、最初に述べた「不動産=竣工後の建物は遅れてきた建築だ」の意味が新たに明らかになります。

業としての建築の内部で、設計施工時に作られたBIMモデルは、その後に、遅れてきた不動産=竣工後の建物に適用できます。一方で、建物は不動産とも称されてきたように、FMシステムでBIMモデルを用いる際も、止まった状態=静的な状態での利用となっています。

ここで威力を発揮するのがIoTです。デジタル化された建物モデル=BIMモデルと、実際の建物に設置された各種センサーなどをデジタルツイン化、電子の双子化することで、時々刻々と挙動する動産としての建物の挙動を把握できるわけです。そして、そのようにして収集したデータをビックデータ化することで、AIなどを用いて、精度の高いシミュレーションなどへと適用されます。

デジタルツインで拡がる建築分野での新たなサービスの可能性

今回の大林組のケースでは、実際の室内空間に設置した各種センサーから取得された情報がIoTを通じてクラウド上のBIMモデルに反映されると、現実空間の建物と仮想空間のBIMモデルが「BIMWill®」上で、リアルタイムで同期します。さらに建物に関連するさまざまなシステムの稼働情報などを統合、集約することで、「BIMWill®」は、現実建物の「今」が仮想空間で再現された電子の双子として捉えることができます。

これによってデジタルツインに集約されるさまざまな情報を活用した新たなサービスの提供が可能となるでしょう。商業施設においては室温や湿度、明るさなどの環境情報と来館者の位置情報や購買記録を組み合わせて見える化することで、店内の明るさと温湿度の調整などと連携した、来店客の購買意欲を高める新たな販促方法が提案できるようになるなど、従来は得られなかった気付きが得られ、新しい価値を提供できると考えます。

さらに加えて「BIMWill®」は建物の「今」を知ることができると同時に、「過去」の情報が利用しやすい形で蓄積されているため、将来的には建物の「未来」を予測し、設備機器などの予防保全をはじめ、上述の例に倣えば、購買意欲を高める室内環境の知見を、商業施設の設計および施工に活かしていくことも可能となるでしょう。

◇出典:大林組ニュースリリース(6月25日発行分)

参照:「BIMWill®」のシステム概要及びユーザーの利用イメージ

詳しくは、GLOOBEのウェブサイトで。