GLOOBEデータを活用した確認申請に関する事例が公開
2018年9月24日

国産BIMのユーザー会によるBIM建築確認申請の
効率化に向けた取り組み<J-BIM研究会>

2018.09.19

BIMデータを活用する上で、課題の一つとなっているのが確認申請である。
申請者と指定確認検査機関の間でBIMデータを活用した確認申請を目指し、GLOOBEのユー ザー、指定確認検査機関、ソフトウェア開発者が「J-BIM研究会 BIM申請分科会」を結成。
活発な活動の結果、専用の確認申請用テンプレートの作成と凡例を共通化、さらにGLOOBEの
確認申請に関連した機能の拡充と改善がまとまり、メンバー会社による特殊建築物でBIMを活
用した確認申請が行われ、2018年8月末に確認済証が交付された。BIM活用による確認申請は
いよいよ実用段階へ踏み出した。

「J-BIM研究会」発足の経緯と「BIM申請分科会」の誕生
「J-BIM研究会」は国産BIM「GLOOBE」と「J-BIM施工図CAD」のユーザー会で、2014年に
発足。大手設計事務所やゼネコンなどのBIM担当者が集まり、活動をスタートさせた。
会長を務める奥村組の浅野氏は「実務者が本当に使える、地に足の着いたBIMをGLOOBEで育
てたいという想いで始めた」と語る。事務局をGLOOBEの開発メーカーの
福井コンピュータアーキテクト(以下、福井CA)が務め、現在では全国の約50社が参加している。
これまで、BIMの実運用と定量化された成果を共有しながら、BIMに関するさまざまな課題を
抽出し、J-BIM研究会の中に専門部会や分科会、勉強会を立ち上げて検討を重ねてきた。開発
者である福井CAも参加することで、BIMモデル作成機能のスピーディーな改良や充実が図られ
てきたことが特徴だ。「開発者とユーザーが直接リンクしているメリットは大きい。研究会で
出るさまざまな要望に対して、協働しながら一緒に答えを探し求める体制ができた」と浅野氏
はいう。

          J-BIM研究会 会長 / 株式会社奥村組 
          西日本支社建築設計部 部長 浅野 博光氏

J-BIM研究会 会長 / 株式会社奥村組           西日本支社建築設計部 部長 浅野 博光氏

さらには確認検査機関である日本ERIも入ることで、GLOOBEで作成したBIMモデルを活用し
た確認申請の実用化に向けた活動がスタート。これが2016年12月に発足した「BIM申請分科
会」(以下、分科会)である。
同分科会は発足以来、GLOOBEで作成したBIMモデルによる確認申請用テンプレートや凡例の
標準化に向けて活発に取り組んできた。リーダーを務める東畑建築事務所の中田氏は「確認申
請における図面表現、建物や設備仕様を表現する凡例などについて各社の事例を持ち寄ったと
ころ、各社ごと、場合によっては担当者ごとに表現が異なっていることが判明。まずは、会社
の垣根を超えた確認申請用の凡例の統一、共通化を行う必要があった」という。

         J-BIM研究会 BIM申請分科会 リーダー      
         株式会社東畑建築事務所 情報システム室
         部長 BIM設計推進室 中田 秀司氏

J-BIM研究会 BIM申請分科会 リーダー                株式会社東畑建築事務所 情報システム室          部長 BIM設計推進室 中田 秀司氏

福井CAの楠田氏は「部材や寸法のペンの設定などについて各社の内容を持ち寄っていただいた
上、日本ERIに審査者の視点からの表現方法について精査いただき、標準的な内容に置き換え
ていく作業が進められました」と振り返る。メンバーである松田平田設計の松下氏も「2次元
の図面で自由に表現していたものを、GLOOBEでどのように表現できるのかを模索しました」
という。

 凡例 ⒸスターツCAM

凡例 ⒸスターツCAM

BIMモデルに標準テンプレートや凡例を活用することで申請図を作成
約1年半に渡る活動を経て、2018年4月にテスト案件による検証プロジェクトを開始。さらに
実用化に向けてブラッシュアップの中核を担ったのは、実際に計画されている6階建ての共同
住宅をパイロットスタディとしてGLOOBEモデルを作成した、スターツCAMの横井氏である。
「実案件はスターツCAMと日本ERIと福井CAの3者で取り組みました。分科会メンバーと作成
したテンプレートを整備し、共同住宅用に改良し、確認申請を行いました」という。

 スターツCAM株式会社             日本ERI株式会社 
 建設統括本部 BIM生産管理部          BIM推進センター長
 BIMマネージャー 横井 敏子氏         関戸 有里氏

スターツCAM株式会社             日本ERI株式会社   建設統括本部 BIM生産管理部          BIM推進センター長  BIMマネージャー 横井 敏子氏         関戸 有里氏

横井氏は「これまでは、BIMモデルから切り出した2次元の図面に、防火設備や採光距離など申
請に必要な情報を書き込んでいましたが、モデル作成時に担当者が情報を入力し、テンプレー
トを利用すれば申請図が作成できます。今回は初めての取り組みということで、いろいろ試行
錯誤をしながら行いました。苦労はありましたが、実施BIMモデルを申請に活用する目的を達
成出来ました。今後、確認申請用テンプレートがソフトに実装されれば作業時間は半分に圧縮
されるのではないか」と見込みを語る。

 凡例設定後3Dモデル ⒸスターツCAM

凡例設定後3Dモデル ⒸスターツCAM

 凡例防火区画 申請機関確認モデル ⒸスターツCAM

凡例防火区画 申請機関確認モデル ⒸスターツCAM

福井CAの楠田氏は「GLOOBEではBIMデータと2次元の図面のデータ間で情報が切れずにリン
クしているので、設計図と申請図の整合が取れています。また日本独自の対応として、避難規
定に係る竪穴区画などで必要となる耐火や防火設備の情報も、アドオンではなく元々ソフトに
埋め込んでパッケージしています。有効採光や換気排煙などの情報も、建築基準法に基づく根
拠の式がBIMのデータベースとして入っていることで、自動的に計算・判定され、計算根拠も
表示できます」という。図面とBIMモデルの整合性は、ワンクリックで確認が可能。さらに図
面上では防火の構造や建具、また面積表なども種別に異なる色がつけられることで識別しやす
く、漏れなく確認できる。単なるPDF書式での申請と比べると、情報量や確実性が格段に高
まっているのである。 なお、2018年10月下旬にリリースされる「GLOOBE2019」では、新コマンドが追加され、
年内には申請テンプレートのリリースも計画中である。

 凡例面積 申請機関確認モデル ⒸスターツCAM

凡例面積 申請機関確認モデル ⒸスターツCAM

申請者と確認検査機関の両者にウィン・ウィンの効果がある
日本ERIは、BIMを活用した確認申請に2015年から積極的に取り組んでいる確認検査機関だ。
今回の試みでは、分科会のメンバーとして確認審査プロセスにおける検証も行った。日本ERI
の関戸氏はまず、「審査側の意見が反映された標準テンプレートや凡例が整備されたことは、
確認申請手続きの効率化に大きな前進であった。効果として審査初期段階における省力化に
一歩前進した」と語る。これは申請者によって多種多様であった図面表現が整備され、両者間
の法解釈の行違いが少なくなるためだ。

 株式会社松田平田設計 総合設計室         福井コンピュータアーキテクト株式会社
 テクニカルデザインセンター         商品開発部 企画開発二課
 副主任 松下 雄大氏              楠田 雄三氏

株式会社松田平田設計 総合設計室         福井コンピュータアーキテクト株式会社  テクニカルデザインセンター         商品開発部 企画開発二課  副主任 松下 雄大氏              楠田 雄三氏

併せてGLOOBEの機能について関戸氏は「GLOOBEは採光規定などの自動計算や、延焼線内防
火設備の自動チェック機能が備わっており、審査ツールとしても有効であった」とし、更には「GLOOBEはBIMモデルとシートデータの連動機能に優れているため、事前相談段階からネイ
ティブデータを活用でき、審査側でシートデータからPDF化を行い電子申請に繋げる初の試み
にトライできたことも大きい」という。

 GLOOBE活用による建築確認申請フロー図 Ⓒ日本ERI

GLOOBE活用による建築確認申請フロー図 Ⓒ日本ERI

分科会では今回の実検証にとどまらず、継続して取り組み、確認申請用テンプレートの改良や
GLOOBEの機能拡張のための活動を進めていくという。今後の取り組みとしては、オフィスや
ホテルなど、集合住宅以外での建物用途のBIM申請について、新たな実物件で標準テンプレー
トを増やしていく予定だ。「より多くの人が幅広い用途で使いやすくなるよう、テンプレート
の運用マニュアルの整備とともに、進めていきます」と中田氏は力強く語る。
日本独自の法規にきめ細やかに対応し、パッケージ化されたGLOOBEのBIMを活用した確認申
請で、業務効率化は格段に進むに違いない。浅野氏は「申請者と確認検査機関の両者の立場で、
開発者とともに申請モデルをつくり上げることができた。ウィン・ウィンの関係が無理なく築
かれることで、BIM本来の“データ連動”の機能が存分に発揮されるはず」と展望を語った。

また、BIMを活用した確認申請の研究の日本の第一人者である、国立研究開発法人建築研究所
上席研究員の武藤正樹氏に、今回の分科会によるBIMを活用した確認申請についての評価と感
想を伺った。
「申請者と確認検査機関との間で、BIMデータで取り組んだ例として、両者が膝を突き合わせ
て、より深く取り組んだ好例ではないか。BIMモデルからの確認図の出図についていいルール
作りがされたと思う。これから取り組まれる、他の申請者や確認審査機関が悩まなくて済むよ
う、この仕組みが波及することを期待している。
特にGLOOBEについては、国産ソフトの強みである、延焼区域の計算機能など、元々持ってい
る機能がいい。これは、J-BIM研究会の活動による機能向上の取り組みの成果だと思う。入力
の妥当性を含めた出力の計算結果の妥当性の検証による審査手法など、審査の省力化・自動化
につながるような、いままでにない、新しい可能性が見えた。
今回の取り組みが、「BIMを使っている人が迷わずに確認申請に向える」だけでなく、「BIM
を使うと確認申請が楽にできる」といった、大きなきっかけとなるのではないか」(武藤氏談)

詳しくは、GLOOBEのウェブサイトで。

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