現場を丸ごと点群データ化し、会社に持ち帰る

2018年11月26日

現場を丸ごと点群データ化し、会社に持ち帰る

FARO Laser Scannerを活用し、施工性に配慮した設計を実現

愛知県名古屋市名東区に本社を置く株式会社奥村設計事務所(以下、奥村設計事務所)では、FAROの3Dレーザースキャナー「Focus3D X 330」をこれまでに3台導入しています。現況地形を丸ごと点群データ化して会社に持ち帰り、細部を確認しながら設計を行っています。奥村真次代表取締役の現場経験に基づいた「施工可能な設計」は、発注者やゼネコンからも高く評価され、会社も急成長を続けています。

点群データで現場を確認しながら設計

「建設コンサルタントは、現場状況を知らずに設計すると失敗します。そこで設計室でも詳細な現場状況を確認できるようにするため、3Dレーザースキャナーで現場周辺を丸ごと点群データ化し、会社に持ち帰っています」と、奥村設計事務所代表取締役の奥村真次氏は話します。

設計者は現場を見るのが基本と言っても、遠隔地の現場では何度も通うことは困難です。また、以前はカメラやビデオで撮影した画像から寸法などを割り出す方法であったため、図面が現状と合わないことも起こっていました。そこで現地調査のときにFAROの3Dレーザースキャナー「Focus3D X 330」を使用し、現場周辺を3Dスキャンにより点群データ化しています。そうすることによって、手戻りのない、より現状に合った図面を作成することができます。

その作業は本格的です。ときには3台のFocus3D X 330を現場に搬入し、複数の点群データを結合する目印となる球形マーカー(スフィア)を25個、標定点上に据え付けて同時に計測を行います。こうすることで、Focus3Dやマーカーの位置を変える作業が減って効率的になります。

Focus3D X 330と複数のマーカーを設置し、現場周辺を一気に点群データ化

Focus3D X 330と複数のマーカーを設置し、現場周辺を一気に点群データ化

トンネル坑口の写真

Focus3D X 330を使った点群計測作業

トンネル坑口の写真(上)とFocus3D X 330を使った点群計測作業(下)

計測された坑口の精密な点群データ。トンネル構造物本体のほか、周囲の手すりや電線なども忠実に記録

計測された坑口の精密な点群データ。トンネル構造物本体のほか、周囲の手すりや電線なども忠実に記録

「2万平方メートル程度の現場も1日でスキャンが完了します。現場の敷地はもちろん、周辺の電柱や電線、照明灯など細かいものも含めて点群で記録して帰ります。というのも施工計画を行うときに、思わぬ障害になることもあるからです」と奥村氏は説明します。

「角度によっては見落としがちな障害物も、スキャンをしておけば確実に把握できますし、またムービーでシミュレーションもできるため、より分かりやすいのです」と奥村氏は続けます。

高精度の点群計測を実現

点群計測の精度にもこだわりがあります。奥村設計事務所は6台のGPS測量機を保有し、点群計測の際に正確な位置となる標定点を60m以内に設けることで、点群の座標精度を上げています。そのため、奥村設計事務所では50m以上先の点群データは結合時に使いません。近い部分のデータを使うことで、国土交通省の定める基準に則した計測誤差を把握し、正確な数値を算出することで成果物の提供へとつなげています。

社有車にキャリアを搭載しその上に足場を組んで、6mの高さにスキャナーを設置。高いところへ上げることで、橋梁などの大型構造物も少ない回数でスキャン可能。随所に工夫を凝らして、作業効率を向上。

社有車にキャリアを搭載しその上に足場を組んで、6mの高さにスキャナーを設置。高いところへ上げることで、橋梁などの大型構造物も少ない回数でスキャン可能。随所に工夫を凝らして、作業効率を向上。

また、橋梁などの大型構造物のスキャンでは、少ない回数でスキャンが完了できるよう、できるだけ高いところから計測するように努めており、そのための専用の足場も導入しました。

Focus3D X 330で計測が困難な支承周りなどは、ハンディスキャナ「FARO Freestyle3D X」を使用し、設計に必要な部分は細部まで点群データ化しています。軽量なため片手で操作可能なFreestyle3D Xは、女性技術者でも簡単に扱え、Focusで取得したデータとシームレスに結合が可能です。

橋桁や橋台など大きな構造物はFocus3Dで計測。

橋桁や橋台など大きな構造物はFocus3Dで計測。

支承周りなど細かい部分はハンディスキャナFreestyle3D Xで計測。

支承周りなど細かい部分はハンディスキャナFreestyle3D Xで計測。

Focus3Dにて堤防の計測を行うことで、 草の裏にある地盤高を正確に求めることが可能。

Focus3Dにて堤防の計測を行うことで、 草の裏にある地盤高を正確に求めることが可能。

点群計測を行った業務件数は、2015年は9件、16年は8件、17年は15件と徐々に伸びており、スキャン方法に工夫を凝らし、より精度の高い計測を目指してきた奥村氏のこだわりが功を奏してきています。

施工性に配慮した設計を実践

奥村設計事務所のモットーは、「施工性に配慮した設計」を実践することです。その理念は、奥村氏の建設業界における多様な経験に裏打ちされています。

「以前の勤務先では、発注者の事務所に出向し、発注用に図面修正する仕事に携わったこともあります。そのときは、施工段階で手直しが必要となる設計が多くあり、やはり現場を見ないといけないという思いがありました」と奥村氏は振り返ります。

「近年では震災の復興事業や東京オリンピック関連工事などで、特殊な工法も求められています。高齢化が進み、技術が変化してきている中でも、生産性を向上する必要があります。現地を自分たちの目で見てこそ、そこで生活する人々の思いを設計に反映することができます。こうした設計をわれわれは目指しています」(奥村氏)

奥村設計事務所では3Dレーザースキャナーを使い、誰がやっても同じ結果であることを重視し、短時間でスピーディーに現地調査を行う一方で、ライフラインとしてのインフラ設備を、より「実生活」に近いものにすることに配慮した設計を実践しています。

様々な計測機器の導入と今後の展望

奥村設計事務所の3D計測業務はFocus3D X 330だけにとどまりません。高解像度カメラを搭載したドローンや、河川底や湖底などを計測できるGPS+音響測深機などが搭載された小型ラジコンボートも導入しており、今後は軽量レーザースキャナーと高分解能カメラを搭載したUAV・レーザー測量システムなども導入し、“陸海空”からの3D計測ソリューションをそろえ、顧客からの様々なニーズに応えていく方針です。

また3Dプリンターを導入し、スキャンしたデータを造形してプレゼンするなど、サービスの提供拡大を計画しています。「今後は下請け業務だけでなく、発注者にも3D計測のメリットをPRして元請け業務も手がけていきます。現在、社内にはインドネシア人技術者が数人働いていますが、彼らがいずれ母国に帰国するとき、インドネシアにも拠点を設けたいと思っています」と、奥村氏は将来の展望を語りました。

株式会社奥村設計事務所について

2002年の創業以来、道路、橋梁、河川・砂防といった公共インフラ整備を事業領域に、各種構造物単体の設計を含む事業全体の施工計画や工程管理、積算業務等を手がける。現場経験を生かした道路や橋梁などの設計は、施工性の高さに定評がある。2014年に「FARO Focus3D X 330」を導入し、3Dスキャン業務を始める。従業員数は30名(2018年2月現在)

〒465-0025 愛知県名古屋市名東区上社4丁目31-1 Tel: 052-704-3330  Fax: 052-704-4440

URL: www.om-s.co.jp

詳しくは、FAROのウェブサイトで。