マックと西松建設がFARO Focus3Dを車載システム化
2018年11月26日

マックと西松建設がFARO Focus<sup>3D</sup>を車載システム化

トンネル切羽を5mm以内の精度で点群計測

山岳トンネル用の施工管理システムなどを開発するマック株式会社(本社:千葉県市川市、以下、マック)と西松建設株式会社(以下、西松建設)は、FAROの3Dレーザースキャナー「Focus3D」をクルマに積み、山岳トンネルの切羽周辺を約6分、5mm以内の精度で点群計測しデータを解析する「車載式トンネル3Dスキャニングシステム」を共同開発しました。コンピュータからの自動制御機能に優れている点、また粉じんや水滴など、精密機器にとって過酷なトンネル現場で求められる計測の速さや利便性の高さなどの理由から、FAROのFocus3Dを採用しました。

世界一精密な山岳トンネルの施工管理を実現

「近年、土木工事の中でも山岳トンネル工事は、生産性向上が著しく進んでいます。掘削精度の例では、設計断面を確保しながら、『余掘り』と呼ばれる余剰掘削を50mm以内で抑えるという精密な施工管理を行うことにより、材料費、工期、人件費が削減され生産性が向上します。当然、目視では50mmは判別できませんので測量機を使いますが、従来のトータルステーションでは多数ポイントの測定には時間が掛かり、工期への影響があること、3Dスキャナーの測定は、機器及び基準球の設置、データ処理に時間が掛かるという問題がありました。」と、マック代表取締役社長の宮原宏史氏は語ります。

「そこで西松建設と共同でこの計測システムを開発しました。切羽周辺を約6分で前後20mの範囲にわたって5mmの精度で点群計測およびデータ表示が行えます。万一、掘削断面に達していない部分があってもひと目でわかるので見逃しがありません」と宮原氏は続けます。

切羽周辺の点群データを設計断面と比較した画面(上)と印刷物(下)の例。設計値からの余掘り量がヒートマップによって色分け表示され、断面不足はひと目でわかる。

切羽周辺の点群データを設計断面と比較した画面(上)と印刷物(下)の例。設計値からの余掘り量がヒートマップによって色分け表示され、断面不足はひと目でわかる。

ある山岳トンネル現場で計測した余掘り量の周方向分布を、グラフと数字で示したもの。ほとんどが50mm以内に納まっている。

ある山岳トンネル現場で計測した余掘り量の周方向分布を、グラフと数字で示したもの。ほとんどが50mm以内に納まっている。

マックと西松建設が共同開発した「車載式トンネル3Dスキャニングシステム」は、ワゴン車の屋根に、FAROの3Dレーザースキャナー「FARO Focus3D」を取り付けたものです。火薬を仕掛けて爆破するために穴をあける発破用の削孔作業や、発破後に掘り出した岩石や土砂を運び出すズリ搬出作業、岩盤が崩れないように支える仮説構造物である支保工の建て込み作業などの短い合間に、点群計測をスピーディーに行えるのが特長です。

Focus3Dは防振用空気バネに支えられた自動水平保持架台に取り付けてあるので、計測地点に停車すると自動的に水平が保たれるようになっています。そしてFocus3Dをすっぽりと覆うように、開閉式のほろが取り付けられています。

ワゴン車の屋根上に搭載されたFocus3Dや自動水平保持金具など。

ワゴン車の屋根上に搭載されたFocus3Dや自動水平保持金具など。

また、屋根上にはマーカー4個が搭載されています。これらのマーカーには、中心部分にトータルステーションで位置測定を行うためのプリズムが内蔵されています。

まず、トータルステーションにプリズムを向けて各マーカーの位置を高精度に測量した後、Focus3Dでこれらのマーカーを含めて点群計測を行います。すると点群データをマーカーの座標によって統一した座標系に変換することができるのです。これらの動作は全て全自動で行なわれ、水平保持、トータルステーションの視準、マーカーの回転、スキャン開始はボタン一つで実行されます。これにより、測量技術者のいない夜勤時においても計測が可能となりました。

マーカーの中心にはプリズムが内蔵されている

マーカーの中心にはプリズムが内蔵されている。まず、トータルステーション側にプリズムが向きマーカーの正確な位置を測量し(上)、 その後自動的に球状面をFocus3Dに向け、マーカーとしてFocus3Dで点群計測を行う(下)

ボタン一つで簡単に点群計測

山岳トンネル工事では、通常昼夜交代で24時間連続施工を行います。夜間には元請け会社の職員が現場にいない場合もありますが、そんなときも、掘削や支保工の建て込みなどを行う重機オペレーターが、現場用のタブレットパソコンの画面上でボタン一つを押すだけで、遠隔で点群計測ができるようになっています。

点群データといえば、膨大なデータ量を処理するために、ハイスペックなワークステーションが必要なのではと思う人も多いですが、このシステムでは点群の数を自動的に間引く機能があるので、2GBメモリー、Core2プロセッサー、クロック周波数1.4GHzといった低スペックのパソコンでも、軽快に動くのが特長です。

システムのコントローラーとなる工事現場用タブレットパソコン。

システムのコントローラーとなる工事現場用タブレットパソコン。

発注者も3Dでトンネルの維持管理を

トンネル変状の計測は、一般の地上型3Dレーザースキャナーやトータルステーションを三脚で設置した場合、1日1回が限度でした。一方、現場に3Dレーザースキャナーやトータルステーションを常設しようとしても、発破の飛石や重機稼動スペース確保のため、後方からの計測となり、計測精度が落ちる、障害物に遮られる等の課題がありました。今回、開発した3Dスキャニングシステムは、これらの課題を解決するものです。

トンネルの施工中に定期的に3D計測を行うと、肉眼ではなかなかわからないトンネル内壁の変位も面的に把握できるので、掘削中に一部が崩落する肌落ちなどの事故防止にも有効です。「近年、日本の発注者は、CIM (Construction Information Modeling)(海外ではBIM)の導入を推進しています。トンネルが完成した時点での、出来形点群データの納品を求められることも多くなりました。新設時の点群データを残しておくことで、その後の経年変化による壁面の変位管理もしやすくなるからです」と宮原氏は説明します。

マックが初めての3Dレーザースキャナーを試験的に導入したのは2016年6月のことでした。以来、「車載式トンネル3Dスキャニングシステム」に使用するものを含めて、9台を導入しました。そのすべてがFocus3Dです。

「その理由は、点群計測のスピードが速いこと、スキャナー単体でも使えること、そしてWi-Fiによるデータ送信が速いことです。トンネル内には粉じんや水滴が飛び交っていますので、メモリーカードの抜き差しを行うと、故障の原因になってしまいますから」とマック開発部課長の宮地順吾氏は説明します。

このシステムを開発するにあたっては、Focus3Dのソフト開発キット(SDK)を使って、API(Application Program Interface)によってFocus3Dの操作やデータ交換機能を開発する必要もありました。

「SDKを使った開発でも、FAROの開発部隊がしっかりサポートしてくれました。こうしたアフターサービスもあったことも、Focus3Dの大量導入につながっています」と宮地氏は振り返ります。

過去の点群データと比較することで、トンネル内壁の変位(上)や切羽面の変位(下)も面的に把握できる。

過去の点群データと比較することで、トンネル内壁の変位(上)や切羽面の変位(下)も面的に把握できる。

トンネル壁面の変位を展開図上に描き、ヒートマップで色分け表示することも可能。

トンネル壁面の変位を展開図上に描き、ヒートマップで色分け表示することも可能。

マック株式会社について

1971年に創業。情報や電気、土木、機械など他分野の技術者を擁し、山岳トンネル用の測量システムや発破掘削用の削孔位置誘導システム、大規模製鉄所向けのレーザー計測システムなど、ハードとソフトが連携したシステム開発を手がけています。2016年に「Faro Focus3D X 130」を導入して以来、18年3月までに最新の機種含め、9台のFocus3Dシリーズを導入しました。従業員数は25名(2018年3月現在)

〒272-0832 千葉県市川市曽谷8-16-3 Tel: 047-371-3191  Fax: 047-371-3190 URL: http://mac-net.co.jp/

詳しくは、FAROのウェブサイトで。

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