管理人のイエイリです。
トンネルを造ったとき、内面の断面形状や寸法はこれまで、一定間隔で設定した管理断面で巻き尺やレベルを使って計測していました。
この方法だと、管理断面以外の出来形がどうなっているのかが分からなかったり、断面形状は合っていても位置ズレがあるのかが分からなかったりといった問題点もありました。
そこで、東急建設と九州大学は共同で、こうした問題を解決する構造物出来形即時確認システム「RaVi(Real-time architecture Visualizer)」(PDF)を開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
ハイテクな手押し車
とトータルステーションによって、トンネル内面の形状や寸法をトンネル全長にわたってリアルタイムに計測するシステムなのです。
構造物出来形即時確認システム「RaVi」(写真・資料:東急建設。以下同じ) |
手押し車にはレーザーでトンネル内空面の3次元形状を測定する装置と、設計データを記録したノートパソコンが搭載され、測定データと設計データをその場で比較することになり、出来形を即時に確認できるようになっています。そのため、検査作業が大幅に効率化できることが期待されています。
このシステムは、平成21年度の建設技術研究開発助成制度の政策課題解決型公募で取り上げられた「施工段階における監督・検査の出来形の自動確認に関する技術開発」に、東急建設が応募した「構造物現況形状データと設計データを用いた品質確保と施工支援に関する技術の開発」が採択され、平成21年度と22年度に補助金を受けて九州大学とともに開発したものです。
「RaVi」による出来形確認のイメージ |
このシステムは、国土交通省中国地方整備局発注の「尾道・松江自動車道下本谷トンネル工事」( 広島県庄原市内) に、
このほど導入
されました。
下本谷トンネル工事では、出来形確認作業と関係者へのヒアリングなどを通じて、実用性の検証やソフトウェアの操作性などについて、改善点の抽出を行ったそうです。
土木分野では、国交省が3次元ベースによる構造物の設計、施工、維持管理を目指すCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の導入を進めていますが、この出来形確認システムもCIMの流れに沿ったものです。
ただ、これまでの検査手法では検査する断面が決まっていたため、許容精度が多少高くても施工者側で対応できましたが、全断面を面的に合わせるのは大変です。面的な検査を行うならば、それに合った出来形検査指標を考えないと、かえって過剰品質や生産性低下を招くかもしれませんね。