ウチからの眺めは?VRが土石採取場のスモールアセスに大活躍
2013年9月24日

管理人のイエイリです。

長野県大町市で骨材の原料を取る土石採取場の開発計画が進んでいます。大規模な開発計画の場合は、法律に基づいた環境アセスメントが必要ですが、この計画はその規模には達しません。

しかし、開発主体の企業は自主的に「スモールアセス」と呼ばれる簡易的な環境アセスメントを行い、その業務を地元のNPO地域づくり工房(代表:傘木宏夫氏)に委託しました。

地域づくり工房では、土石採取場や周辺地域を

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

バーチャルリアリティー

 

ソフトの「UC-win/Road」で再現し、住民説明会や意見の募集などに使ったのです。

この事例が、9月14日、東京・飯田橋の法政大学で開催された「環境アセスメント学会」の第12回大会で報告され、注目を集めました

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掘削中の土石採取場の風景(資料:NPO地域づくり工房。以下同じ)

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講演する傘木宏夫氏(左)とVRをデモンストレーションしながらの講演風景(右)(写真:家入龍太)

スモールアセスにバーチャルリアリティー(VR)を使った成果は、そのわかりやすさです。土石採取場が採掘によってどのように形を変え、緑化が進むか、付近からの景観はどうなるかなどを住民説明会での説明に使ったところ、出席者の90%が「よくわかった」または「わかった」とアンケートに回答しました。

説明会では「ウチの旅館から土石採取場はどう見えるのか?」といった質問が出ました。傘木氏らはUC-win/Roadをその場で操作し、旅館からの見え方や太陽の軌跡がどのようになるのかを再現しました。

ふるさとの風景が土石採取によってどう変わるのかを心配していた住民も、VRで未来の姿を見たことで安心したようです。

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旅館からの土石採取場の見え方と太陽の軌跡

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付近の国道からの見え方
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土石採取場の脇を通るJR大糸線からの見え方
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隊列を組んで走行するダンプトラック

傘木氏らはVRを元に作成した動画も作成し、地域づくり工房のウェブサイトで公開。意見を募集しました。その結果、付近に生息するカワシンジュガイなどに対する影響や、付近の住宅地に対する騒音や粉じんの問題などに関する15件の意見が集まりました。

その結果、土石採取場の出入り口などにダンプトラックのタイヤ洗浄プールを増設したり、掘削場所の縁に高さ5mほどの小堤を残しながら掘ることで防音壁として使ったりといった改善案づくりに役立ちました。

さらにある大学教授からは、

 

掘削面を凹型にする

 

ことにより、岩肌を目立たなくする景観上のアイデアも寄せられたそうです。特に費用はかからずにできるので、この案も採用となりました。

建物や土木構造物をBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)で設計すると、こうしたVRやアニメーションなどは、比較的簡単に作れるでしょう。

単なる完成イメージのプレゼンだけでなく、「スモールアセス」として幅広い視点から工事の影響をまとめ、説明会やウェブサイトで活用することで、プロジェクトに対する理解や支持もいっそう深まるのではないでしょうか。

プロジェクトに対する合意形成や反対運動への対応などにからむ「隠れたコスト」を節約することにもつながりそうですよ。

ちなみに、このスモールアセスの取り組みは、「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」で審査員特別賞(アカウンタビリティ賞)を受賞しました。

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地域づくり工房のウェブサイトで公開されている動画

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