管理人のイエイリです。
土木分野におけるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の技術面を検討する「CIM技術検討会」がまとめた「CIM 技術検討会平成26年度報告」(PDF)が、日本建設情報総合センター(JACIC)のウェブサイトで5月22日に無料公開されました。
この年度は12月に国土交通省による「産学官によるCIMの構築」が発表されるなど、CIMに対する取り組みが一段と充実し、現場での活用が質・量とも拡大していることが96ページにわたってまとめられています。
さらにすばらしいのは、日本建設業連合会の会員企業における10分野、33現場でのCIM活用の具体例をまとめた「巻末資料:施工CIM事例集」(PDF)も同時に公開されたことです。
その中には、
ナ、ナ、ナ、ナント、
使用した属性情報やソフト
も具体的に書かれているのです。
CIMは、構造物や現場を3Dモデル化し、さらに施工管理や維持管理などに使うデータである属性情報の活用がポイントです。
各社がどのような属性情報をCIMモデルにインプットし、活用しているのかがわかるのはとても貴重な資料ですね。
土木現場では、大規模な盛り土・切り土や土量をCIMによって効率的に管理することが大きな課題です。
そこでCIMソフトとともに活用されているのが、測量機器です。
例えば事例No.8「中部横断自動車道 八之尻トンネル工事」(清水建設)では、UAV(無人機)によって広大な土工現場を短時間で写真撮影し、その画像から0.5mメッシュの数値標高モデルを作成。土砂搬送の土量管理に使った例が紹介されています。
また、現場の3D形状を無数の3次元座標の集合体である「点群データ」として記録する3Dレーザースキャナーも各社の現場で使われていることがわかります。
例えば事例No.27の「渋谷駅東口地下歩道(南東部)構築工事」(東急建設)では、移動式3Dレーザースキャナーと、トータルステーションを組み合わせて、細長い現場の3D形状を記録する方法を使った例が報告されていました。
CIMモデルを使った部材や鉄筋の干渉チェックの事例も多く掲載されています。面白いのは事例No.25「平成26年度東海環状揖斐川橋右岸下部工事」です。
この工事で前田建設工業は、高圧電線の警戒範囲を空中に3Dゾーンで描き、クレーンのブームがこの範囲に入らないかどうかを考慮して施工計画を立てました。
このほか、CIMを4Dによる工程管理や5Dによる原価管理との連動を試行した例として、事例No.24「東北中央自動車道 長老沢3号橋上部工工事」(大成建設)なども参考になります。
これらの事例を見ると、建築分野のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に負けないくらい、土木分野でのCIM活用が進んできたことがわかります。
そして、今後に生かしたいのは各社が現場でCIMを活用した結果、
明らかになった「課題」
の数々です。
例えば、「CIMモデルから得られる情報を、そのまま数量計算や提出書類に使えない」、「設計段階からCIMモデルが作られ、施工段階で活用できればさらに効率的」などの声が目立っていました。
こうした貴重な声は、ぜひ、発注者サイドも耳を傾けて、CIMによるワークフロー改善や生産性向上がさらに実現できるよう、制度面での改善も進めてほしいですね。