管理人のイエイリです。
早稲田大学建築学科の嘉納成男教授と言えば、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)という言葉が生まれるはるか以前から、約40年にわたり建築生産プロセスの研究を極めてきた第一人者です。
嘉納教授は2018年3月30日、その研究の集大成とも言える著書『建築工事における施工シミュレータ~設計BIMと施工BIMとの橋渡し』を、早稲田大学出版部から出版しました。
建築工事のシミュレーションとは、実際の現場をコンピューター上で再現し、作業手順や工程などを計算によって計画したり予測したりすることです。
以前から、ネットワーク工程表を使って工事の進ちょく管理を行う「PERT」などもありましたが、3Dで現場の空間を表現できる
BIMの登場
やコンピューターの高性能化、低価格化によって、施工シミュレーションが現実化してきました。
嘉納教授のスゴいところは、BIMによって施工過程を“見える化”するだけでなく、PERT的な手法で工程に影響を与える「クリティカルパス」を分析したり、全体工期を求めたり、作業を平準化する「山崩し」を行ったりといった、定量的な分析も目指していることです。
その過程では、
ナ、ナ、ナ、ナント、
人やエレベーターの動き
まで考慮するという、“超精密”な現場の再現を追求しています。
つまり、実際の現場を「情物一体」としてデジタルモデルで再現するために必要な「実体」、「作業」、「空間」、「時間」の要素や、モデリングの考え方が具体的に解説されているのです。
残念ながら、BIMと連動した施工シミュレーターのプロトタイプ開発までには至っていないようですが、本書のコンセプトは施工BIMに時間的、物流的な要素を取り入れて「IoT(モノのインターネット)」化へと進化させる上で、不可欠なものと言えそうです。