鹿島がトンネル工事をIoT化!もろい岩盤を瞬時に発見、スマホで共有
2018年5月15日

管理人のイエイリです。

岩盤にドリルで孔を開け、発破しながら掘り進む山岳トンネル工事では、目の前の岩盤が崩れやすいのかどうかを見抜く力が要求されます。

これまでは事前の地質調査で得た情報をもとに、掘削最前線の「切り羽」で岩盤を直接確認しながら、慎重に掘り進めてきました。しかし、予期せぬ断層や急激な地質変化などもあり、岩盤が崩落するリスクもあります。

そこで鹿島は、山岳トンネル工事にIoT(モノのインターネット)技術を導入し、安全に工事を進められる「スマート切羽ウォッチャー」というシステムを開発しました。

目の前の岩盤の状態を

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

リアルタイムに評価

 

し、その結果を現場最前線で働く作業員や現場事務所、そして本社の技術者までが共有できるのです。(鹿島のプレスリリースはこちら

リアルタイム統合地質評価システム「スマート切羽ウォッチャー」の概念図(以下の資料:鹿島)

リアルタイム統合地質評価システム「スマート切羽ウォッチャー」の概念図(以下の資料:鹿島)

岩盤の評価には、2つの技術を使っています。

1つめは、コンピュータジャンボと呼ばれる機械で発破孔やロックボルト用孔を掘るときに計測した「弾性波速度」をもとに、評価する方法です。

掘削作業で得られた弾性波速度のデータを現場のコンピューターで解析し、わずか5分で切り羽前方5mの地質状態を高精度に予測、評価します。

さらにシミュレーション解析によって、もろい岩盤が80%以上の確率で出現する箇所を、切り羽前方の30mまで割り出します。

岩盤のせん孔データから予測した地質状態ともろい岩盤分の分布

岩盤のせん孔データから予測した地質状態ともろい岩盤分の分布

2つめは、切り羽をデジタルカメラで撮影した画像データの解析をもとに、岩盤の風化度合いや割れ目の分布などを定量的に評価し、崩落の可能性がある箇所を検出する方法です。

切り羽のデジタル写真を解析して検出した崩落危険箇所の例

切り羽のデジタル写真を解析して検出した崩落危険箇所の例

驚くべきは、解析から評価、そして工事関係者間での情報共有までがリアルタイムで進むことです。

工事中に得られたコンピュータジャンボやデジタルカメラのデータは、Wi-Fiを投じて現場のコンピューターに送られ、自動的に解析が始まります。その結果は即座に、スマートフォンやタブレット端末をによって

 

切り羽の社員や作業員

 

にフィードバックされるのです。

コンピュータジャンボのオペレーターは、まるで前方の切り羽の奥を“透視”するような感覚で、安全に作業できそうですね。

コンピュータージャンボのオペレーターは、切り羽の奥を“透視”するような感覚で施工できそうだ

コンピュータージャンボのオペレーターは、切り羽の奥を“透視”するような感覚で施工できそうだ

デジタルカメラ画像の解析結果は、わずか10秒後に切り羽で作業する社員や作業員のスマートフォンに通知される

デジタルカメラ画像の解析結果は、わずか10秒後に切り羽で作業する社員や作業員のスマートフォンに通知される

さらにクラウドを通じて、岩盤の評価情報は現場事務所や本社、技術研究所でも情報が共有されます。

このシステムがあると、岩盤に何かトラブルが発生しそうなときも、いちいち会議を開いたり、本社や技術研究所の専門家に問い合わせたりすることなく、リアルタイムに関係者の知恵や経験、アドバイスを集約しながらスムーズかつ安全に施工を進めていけそうですね。

現場→デジタル情報化→コンピューターによる解析・評価→現場へのフィードバック、という流れが完全に自動化されていますので、名実ともに山岳トンネル工事の「IoT」と言えるシステムでしょう。

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