管理人のイエイリです。
ビル工事で使われる鉄骨を工場で作るとき、ベテランでも時間がかかるのが鋼材への罫書き(けがき)作業です。
図面を確認しながら、補強用のリブや他の部材との接続金具などの取り付け位置を、鋼材の表面に描き込むのはもちろん、けがきが合っているかをもう一度確認する作業が、部材の付け作業の半分以上を占めます。
この作業を効率化するため、有限会社宮村鉄工(本社:高知県香美市)は画期的な鉄骨製作の支援ソリューションを開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
HoloLensをけがき代わり
にして、スピーディーに部材を仮付けしていくことができるのです。(宮村鉄工のプレスリリースはこちら)
HoloLens(ホロレンズ)とは、マイクロソフトが開発・発売しているMR(複合現実)用のゴーグル型コンピューターです。
これに鉄骨の3Dモデルを入れて、加工前の鉄骨梁を見ると、これから取り付ける部材の位置がまるで完成後のように見えます。
けがきしないでも各部材の位置がわかるので、その位置に部材を点溶接でどんどん仮付けすることができます。
HoloLens用の3Dモデルはまず、鉄骨を3Dレーザースキャナーで計測した点群データを元に、「FARO SCENE」や「KeyCreator」というソフトを使って設計と3Dモデリングを行います。
続いて、そのデータをHoloLens用に変換しますが、この作業には宮村鉄工とNTTドコモが共同開発したMRソリューション「建築鉄骨MR基盤」を使います。
では、HoloLensを使うといったいどれくらい生産性が上がるのでしょうか。「寄せ棟造の隅棟部」の部材を想定したH鋼(H-350x175x7x11)を使って実験が行われました。
HoloLensを使ったのは、けがき経験のない事務員さんです。それに対して、入社30年目のベテラン職人と6年目の一般職人が、従来方式によって作業時間を競いました。
その結果、部材の仮付けまでにかかった時間は、ベテラン職人が50分、一般職人が100分だったのに対し、HoloLensを使った未経験の事務員さんは
わずか15分で作業完了
となったのです。
従来の方法では、図面から鉄骨上に部材の取り付け位置をけがきし、さらに転記ミスを確認するという作業にかなりの時間がとられていました。
一方、HoloLensを使った場合は、図面と実物が一体化して見えるので、「けがきや転記ミスの確認」が必要ありません。こうして情報の重ね合わせが自動化されることにより、削減できる作業は多くありそうですね。
HoloLensを使った場合でも、現在は念のために定規を使って検査を行っていますが、将来的にはMRソリューションだけで行えるように開発を進めています。
このシステムは2018年9月末まで、5社に対して有償でトライアル提供を行っています。気になるお値段ですが、初期費用としてHoloLensなどが1セット60万円(税別。以下同じ)、導入時のセミナーが1回10万円、そして月額費用としてWebサービスやMRアプリの利用料が10万円となっています。
商用サービスの一般開始は、同10月1日を予定しています。「けがき不要の工場製作」のインパクトは、製造現場に大きな革新をもたらしそうですね。
A day at MiyamuraTech.co.jp from miyamuratech.co.jp on Vimeo.