初心者でも職人の4倍速かった!宮村鉄工がHoloLensで鉄骨製作
2018年6月5日

管理人のイエイリです。

ビル工事で使われる鉄骨を工場で作るとき、ベテランでも時間がかかるのが鋼材への罫書き(けがき)作業です。

図面を確認しながら、補強用のリブや他の部材との接続金具などの取り付け位置を、鋼材の表面に描き込むのはもちろん、けがきが合っているかをもう一度確認する作業が、部材の付け作業の半分以上を占めます。

この作業を効率化するため、有限会社宮村鉄工(本社:高知県香美市)は画期的な鉄骨製作の支援ソリューションを開発しました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

HoloLensをけがき代わり

 

にして、スピーディーに部材を仮付けしていくことができるのです。(宮村鉄工のプレスリリースはこちら

HoloLensを使って鉄骨部材の仮付け作業を行う職人(資料:宮村鉄工のプロモーションビデオより)

HoloLensを使って鉄骨部材の仮付け作業を行う職人(資料:宮村鉄工のプロモーションビデオより)

宮村鉄工の工場で行われたHoloLensの実験風景(以下の写真、資料:宮村鉄工のプレスリリースより)

宮村鉄工の工場で行われたHoloLensの実験風景(以下の写真、資料:宮村鉄工のプレスリリースより)

HoloLens(ホロレンズ)とは、マイクロソフトが開発・発売しているMR(複合現実)用のゴーグル型コンピューターです。

これに鉄骨の3Dモデルを入れて、加工前の鉄骨梁を見ると、これから取り付ける部材の位置がまるで完成後のように見えます。

けがきしないでも各部材の位置がわかるので、その位置に部材を点溶接でどんどん仮付けすることができます。

HoloLensを着けてH鋼を見る職人さん

HoloLensを着けてH鋼を見る職人さん

HoloLensを着けないで見たとき。もちろん、メインの鉄骨しか見えない

HoloLensを着けないで見たとき。もちろん、メインの鉄骨しか見えない

HoloLensを着けて見たとき。メインの鉄骨に様々な部材が付いた完成形が見える

HoloLensを着けて見たとき。メインの鉄骨に様々な部材が付いた完成形が見える

HoloLens用の3Dモデルはまず、鉄骨を3Dレーザースキャナーで計測した点群データを元に、「FARO SCENE」や「KeyCreator」というソフトを使って設計と3Dモデリングを行います。

続いて、そのデータをHoloLens用に変換しますが、この作業には宮村鉄工とNTTドコモが共同開発したMRソリューション「建築鉄骨MR基盤」を使います。

HoloLens用の3Dデータ作成の流れ

HoloLens用の3Dデータ作成の流れ

では、HoloLensを使うといったいどれくらい生産性が上がるのでしょうか。「寄せ棟造の隅棟部」の部材を想定したH鋼(H-350x175x7x11)を使って実験が行われました。

HoloLensを使ったのは、けがき経験のない事務員さんです。それに対して、入社30年目のベテラン職人と6年目の一般職人が、従来方式によって作業時間を競いました。

実験の題材に使った「寄せ棟造の隅棟部」を想定した部材

実験の題材に使った「寄せ棟造の隅棟部」を想定した部材

職人さんたちが使った図面

職人さんたちが使った図面

その結果、部材の仮付けまでにかかった時間は、ベテラン職人が50分、一般職人が100分だったのに対し、HoloLensを使った未経験の事務員さんは

 

わずか15分で作業完了

 

となったのです。

作業時間の比較。HoloLensがけがき代わりとなり、未経験の事務員さんの方が4倍くらい速かった

作業時間の比較。HoloLensがけがき代わりとなり、未経験の事務員さんの方が4倍くらい速かった

従来の方法では、図面から鉄骨上に部材の取り付け位置をけがきし、さらに転記ミスを確認するという作業にかなりの時間がとられていました。

一方、HoloLensを使った場合は、図面と実物が一体化して見えるので、「けがきや転記ミスの確認」が必要ありません。こうして情報の重ね合わせが自動化されることにより、削減できる作業は多くありそうですね。

HoloLensを使った場合でも、現在は念のために定規を使って検査を行っていますが、将来的にはMRソリューションだけで行えるように開発を進めています。

このシステムは2018年9月末まで、5社に対して有償でトライアル提供を行っています。気になるお値段ですが、初期費用としてHoloLensなどが1セット60万円(税別。以下同じ)、導入時のセミナーが1回10万円、そして月額費用としてWebサービスやMRアプリの利用料が10万円となっています。

商用サービスの一般開始は、同10月1日を予定しています。「けがき不要の工場製作」のインパクトは、製造現場に大きな革新をもたらしそうですね。

A day at MiyamuraTech.co.jp from miyamuratech.co.jp on Vimeo.

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