「今、何やってるの」がわかる!西松建設がAIでトンネル切り羽の作業を自動判定
2018年9月10日

管理人のイエイリです。

発破しながら掘り進めていく山岳トンネル工事では、掘削最前線となる「切り羽」で1~1.5mごとにドリルによる穴開け、爆薬の装てん、発破、そして発破後の土砂搬出といった一連の掘削サイクルを繰り返して進んでいきます。

トンネル工事の生産性向上のためには、どの作業に時間がかかっているのかを明らかにする必要がありますが、人間がずっと現場に張り付いてストップウオッチで記録するのは現実的ではありません。

そこで西松建設は、sMedio(本社:東京都中央区)と共同で「掘削サイクル判定システム」を開発しました。

トンネル現場内に設置したネットワークカメラの映像から、現場では「今、何の作業が行われているのか」を

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

AIで自動的に判定

 

することができるのです。

トンネル坑内に設置されたネットワークカメラ(左上)(以下の写真、資料:西松建設)

トンネル坑内に設置されたネットワークカメラ(左上)(以下の写真、資料:西松建設)

「掘削サイクル判定システム」画面。AIがカメラ映像から「穿孔・装薬」中であることを自動判定

「掘削サイクル判定システム」画面。AIがカメラ映像から「穿孔・装薬」中であることを自動判定

このシステムは坑内のネットワークカメラとクラウドサーバー、そして複数のパソコンで構成されています。現場事務所や本社などに設置したパソコンにはAI(人工知能)が入っており、カメラから送られてきた映像から、現場での作業内容を自動的に判定します。

AI(人工知能)がカメラ映像を見て、「今、どんな作業が行われているか」を判定できるのは、過去の様々な写真とその作業内容を対応させた「教師データ」を作り、それをもとに構築した「学習モデル」によってAIに教え込んであるからです。

とはいえ、AIといえども時には判定を間違うこともあります。それに気づいた人間は、修正した判定結果で教師データを作り、学習モデルを更新します。これを繰り返すことで、AIはますます賢くなっていくのです。

「掘削サイクル判定システム」の仕組み

「掘削サイクル判定システム」の仕組み

「教師データ」の作成画面

「教師データ」の作成画面

このシステムの用途ですが、まずは各作業にかかっている時間の自動計測です。どの作業に何秒かかったのかを自動的に計ることができるので、各作業の時間別内訳を自動的に集計することができます。

作業ごとの時間がはっきりと定量化されるので、掘削サイクルの時間を短くするためには、どの作業を重点的に効率化していけばよいかという狙いがつけやすくなりますね。

作業ごとの時間内訳を自動計測、集計した例

作業ごとの時間内訳を自動計測、集計した例

また、自動判定された作業内容に応じて、坑内の換気設備などの出力を最適化することで、

 

使用電力量を削減

 

することもできます。

このほか、将来の坑内作業無人化に向けて、坑内重機の移動や稼働のタイミングを制御することも視野に入れています。

西松建設では、山岳トンネル工事の省人化や無人化施工を目指して「山岳トンネルAIソリューション」の構築をこれからも推進し、工事の自動化や生産性向上、労働災害の低減などを進めていくとのことです。

「山岳トンネルAIソリューション」の全体構想

「山岳トンネルAIソリューション」の全体構想

土木工事のなかで、山岳トンネルは生産性向上の超優等生です。というのは、1960年代の東海道新幹線時代から生産性はすでに10倍以上、上がっており、今後はAIや無人化でさらに生産性向上が実現しそうだからです。

これは世界に誇れる日本の建設技術ですね。

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