管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の時代になっても、「意匠デザインを自動的に作るなどありえない」と思う方は多いでしょう。
ところが、立命館大学理工学部建築都市デザイン学科の建築情報研究室(主催:山田悟史講師)の4回生、大野耕太郎さんはこんな常識を覆すAI(人工知能)システムを卒業論文のテーマとして開発しています。
あのフランスの巨匠、ル・コルビュジェ風のデザインを自動的にどんどん作成するもので、その名も
ナ、ナ、ナ、ナント、
「コルビジェネレーター」
というのです。(研究の詳細はこちら)
これが実用化されると、上司から「あ、今度の建物ね、施主がお気に入りのサボォア邸とロンシャンの礼拝堂をミックスしたテイストでデザインを作っておいて」といった“無理難題”が来ても、条件に合った建物デザインをスイスイと量産できるのです。
なるほど、上の作例を見ると、サボォア邸の特徴であるピロティや水平連続窓、ロンシャンの礼拝堂の屋根スタイルを踏襲したデザインになっていますね。
このデザインの生成に使われた技術は、「対立的生成ネットワーク」(GAN)というものです。デザインを自動的に生み出すシステム(生成器)と、そのデザインにダメ出ししていいものだけを選ぶシステム(判定器)からなります。
それぞれのシステムを
ディープラーニング
(機械学習)によって鍛えることで、コルビュジェらしいデザインを生み出せるようになるのです。
今回のシステム開発では、320×320ピクセルのサボォア邸とロンシャンの礼拝堂の画像を大量に用意して、システムを鍛えたそうです。
最初にサボォア邸、ロンシャンの礼拝堂それぞれに「似て非なるデザイン」を自動生成できるようにします。
その次の段階で「デザインの演算」によって、両建物のデザイン要素をベクトルで合成することにより、冒頭のデザインが生まれました。少しずつ違うデザインをつなぐと、次のような動画になります。
今回は、「コルビジェネレーター」というネーミングにちなんでコルビュジェの作品を学習させましたが、同様に他の建築家のテイストも学習させることができます。
例えば、ミース・ファン・デル・ローエやザハ・ハディド、黒川紀章など、今は亡き有名建築家の作品を元に、新しいデザインを生み出すこともできそうですね。
大野さんの研究は、「Deep Learningを用いた画像生成AIの建築都市デザイン分野への適用可能性」というものです。詳しくは、2018年12月6日~7日、東京・建築会館で開催される「日本建築学会情報シンポ2018」で発表するそうですので、ご興味のある方はどうぞ!