ライノセラスを3D地盤解析に!大成建設がモデル作成を10倍高速化
2018年9月26日

管理人のイエイリです。

地下に建設されるトンネルや駅舎などの工事は、工事中に思わぬ地層が出てきたり、地盤が変形したりして、その都度、設計や施工方法の変更が迫られます。

こうした地下施設の詳細検討には、施設の構造や地層構造、施工手順を3Dモデルで忠実に再現し、有限差分法(FDM)などの手法でコンピューター解析するのが最適です。

しかし、問題は3Dモデルの作成にとても手間ひまがかかることです。

例えば、下図のような地下駅の3Dモデルを作るとき、構造物や地盤を手作業で入力すると、トンネル径が連続的に変化する部分を「段落とし」(黄色の円内)で簡略化する必要があり、さらにFDMなどで計算するために「メッシュ」という細かい範囲に分割すると、2カ月以上もかかっていました。

ボスポラス海峡横断鉄道トンネル・シルケジ駅の3D数値解析モデル。メッシュ分割まで行うのに2カ月以上の作業が必要だった(以下の資料:大成建設)

ボスポラス海峡横断鉄道トンネル・シルケジ駅の3D数値解析モデル。メッシュ分割まで行うのに2カ月以上の作業が必要だった(以下の資料:大成建設)

そこで大成建設は、地下構造物の3Dモデルを効率的に作成するシステムを開発しました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

3Dソフト「ライノセラス」

で構造物などの形状を入力し、これを独自開発のプラグインソフト(Griddle)で、細かいメッシュに自動分割するというものなのです。

ライノセラス(Rhinoceros)で入力した地下構造物の3Dモデルを、プラグインソフト「Griddle」でメッシュに自動分割するイメージ

ライノセラス(Rhinoceros)で入力した地下構造物の3Dモデルを、プラグインソフト「Griddle」でメッシュに自動分割するイメージ

ライノセラス(Rhinoceros)は、自由な形状の3Dモデルをデザインできるソフトで、曲面が多い建築物のデザインなどにもよく使われています。そのため、トンネル径がテーパー状に変わる部分も忠実に入力できます。

また、地盤が悪いところでは、トンネルを掘削するときに全断面を一度に掘らず、小さな断面の「先進導坑」を先に掘ってから断面を切り広げたり、断面を上・中・下などに分けて掘り進む「ベンチカット工法」なども使われたりします。

ライノセラスを使うと、施工段階に応じてトンネル断面の一部分だけを掘ったときの3Dモデルなど、複雑なものも簡単に作れます。

ライノセラスで入力した3Dモデル。先進導坑だけを掘った状態を再現していると思われる。モデル作成にかかった時間は約7日間

ライノセラスで入力した3Dモデル。先進導坑だけを掘った状態を再現していると思われる。モデル作成にかかった時間は約7日間

このシステムができたおかげで、上記の解析用モデルは約7日間という短い時間で作れるようになり、

従来の10分の1程度

に短縮されたそうです。

3Dモデルをメッシュに分割して構造解析を行う手法は、これまで研究所などの専門家など行える人が限られていましたが、このシステムを使えば一般の設計者や、現場での活用も行えるようになりそうですね。

大成建設では今後、この手法を地下構造物の設計・施工の検討に活用していくとともに、合理的な設計や施工品質の向上、トンネルや備蓄タンクなどの技術開発を迅速化を図っていくそうです。

これまで、技術者の経験やカンがものを言っていた地下構造物の工事ですが、今後は数値解析という新たなツールの登場で、さらに合理的な設計や施工方法が登場するかもしれませんね。

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