管理人のイエイリです。
世界中で今、モルタル状の材料で造形する大型の3Dプリンターによって、実物の建物や構造物が造られています。
建物はもちろん、大きな荷重を支える橋梁も例外ではありません。例えば2017年10月には、オランダで世界初のコンクリート自転車橋(全長8m、支間長6.5m)が開通しました。(詳細は、2017年10月26日付けの当ブログ記事を参照)
橋梁の施工に3Dプリンターを使うメリットは、橋桁の断面形状や空洞部分を自由自在に造れることです。その結果、曲げ応力や断面力が小さい部分を空洞化することにより、橋桁を軽く造れるというメリットがあります。
ベルギーのゲント大学(Ghent University)構造工学科の研究者たちはこのほど、この特徴を最大限に生かしたPCコンクリート橋を3Dプリンターで造形することに成功しました。(ゲント大学のプレスリリースはこちら)
最少の材料で、最大の強度を持たせるため、橋桁断面を
ナ、ナ、ナ、ナント、
徹底的に最適化
したのです。
この設計には、アルゴリズミックデザインを使い、最適な形状を追求していきました。
その結果、橋桁の断面は一定ではなく、連続的に変化する形となりました。内部に空洞を作るというより、圧縮力を受け持つ床版部分や、引っ張り力のプレストレスを加えるPCケーブル部分だけが、空中に飛び出して配置されています。
造形された橋桁のパーツはまず、上下逆さまに並べて接合しました。そして、橋桁と下弦部にPCケーブルを通し、慎重に張力を導入しました。
完成した橋桁を、床版が上になるように180°引っくり返し、2本の橋脚の間に架設しました。
恐る恐る、研究者たちが橋桁の上に乗ってみたところ、
橋は無事だった
のです。
このプロジェクトには、物質の流れを扱う「レオロジー(流動学)」や、コンクリート部材の強度や耐久性を扱う「材料力学」、形状を最適化するための「数値解析」といった異なる分野の研究者が協力しました。
同大学では、この研究に興味のある人は、プロジェクトマネジャーに気軽に連絡してほしいとのことです。(メールアドレスは、プレスリリースの末尾を参照)
これまで型枠などの制約で、コンクリート橋の構造は限定されてきましたが、3Dプリンターで自由自在な断面が造形できるようになると、コンクリート橋やコンクリート構造の新たな進化が生まれてくるかもしれませんね。