管理人のイエイリです。
地震や洪水などの災害時に応急仮設住宅を建設するとき、着工が遅くなり、避難所で被災者が生活する期間が長引いてしまうことがよくありました。
熊本大学大学院先端科学研究部の大西康伸准教授の調査によると、平成28年熊本地震での仮設住宅の場合、建設予定地の調査や配置計画案の作成・承認だけでも約1週間かかっていました。1週間と言っても、避難所生活の大変さを考えると少しでも短縮したいですね。
そこで大西准教授は2017年6月から、仮設住宅の配置計画を少しでも早く行えることを目指し、研究を始めました。
建設候補地が決まったら、その上に建設する住戸や集会所などを
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMで自動配置
するものなのです。(大和ハウス工業のプレスリリースはこちら)
このプログラムはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Revit」の上で動くもので、建設予定地上に幹線道路を配置すると、その周りに住戸や駐車場を自動的に配置する機能を持っています。
集会所などの位置を設計者が決めると、集会所の規模をプログラムが自動計算して、住戸や駐車場の位置を自動的に微調整します。さらに単身者用、家族用などの住戸タイプも一定の比率になるように調整する機能も持っています。
道路や集会所の位置など重要なところは設計者が判断し、その他の詳細な部分はプログラムで自動化したというわけです。
この研究に大和ハウス工業と大和リースが協力し、このプログラムを使って配置計画の作成を行ったところ、これまで1週間かかっていた配置計画案の作成がわずか1時間でできるようになりました。
そこで3者はさらに研究を進めるため、このほど共同研究契約を締結することになりました。
その狙いは、仮設住宅の配置計画だけでなく、
工場生産や現地施工
さらには維持管理までを含んだ、仮設住宅の建設の全過程にBIMを活用することで、さらなる工期の短縮を図ることにあるのです。
契約は2019年4月1日~2021年3月31日までの2年間です。研究成果は仮設住宅の供給に広く活用できるように、オープンにしていくとのことです。
大和ハウス工業は先日、同社グループが扱う全物件の設計を2020年までにBIM化することを発表して、大きな注目を集めました。(詳細は、2019年3月22日付けの当ブログ記事を参照)
災害時の仮設住宅の設計から生産までを、BIMで一気通貫でスピーディーに対応できると、被災者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)は、大幅に改善しそうですね。また、海外で災害が起こった場合も、仮設住宅の分野で日本が大きく貢献できそうです。