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【動画付き】新工法で世界をリード!大林組が3Dプリンターで曲面ベンチを建設

2019年8月30日

管理人のイエイリです。

実物の建物を造る3Dプリンターの開発・実用化は、海外が先行しています。

3Dプリンターで造った建物や構造物の弱点は、鉄筋が入れにくいことです。地震国、日本で3Dプリンターによる建設を普及させるためには、部材の引っ張り強度をいかに出すかということが常に問われます。

大林組はこのほど、世界をリードすると言っても過言ではない国産3Dプリンターの開発に成功しました。

大林組が開発した新型の3Dプリンター。長さ約3mのロボットアームを搭載している(写真:大林組)

大林組が開発した新型の3Dプリンター。長さ約3mのロボットアームを搭載している(写真:大林組)

引っ張り強度を出すために、3Dプリンターで造形した部分を“打ち込み型枠”として使用し、その中に

ナ、ナ、ナ、ナント、

スリムクリート

という特殊なモルタル材料を充てん、複合構造を開発したのです。

造形中の3Dプリンター。外枠と内枠をまず造形する(以下の写真:特記以外は家入龍太)

造形中の3Dプリンター。外枠と内枠をまず造形する(以下の写真:特記以外は家入龍太)

部材の断面図。オレンジ色の実線が3Dプリンターで造る内枠と外枠。斜線部がスリムクリートで充てんされたところ(資料:大林組)

部材の断面図。オレンジ色の実線が3Dプリンターで造る内枠と外枠。斜線部がスリムクリートで充てんされたところ(資料:大林組)

外枠と内枠の間に充てんされた「スリムクリート」。枠の部分は幅30mm、層厚10mmで造形されている

外枠と内枠の間に充てんされた「スリムクリート」。枠の部分は幅30mm、層厚10mmで造形されている

スリムクリートとは、大林組が開発した常温硬化型のモルタル材料です。長さ12mmの高強度鋼繊維が入っているため、圧縮強度180N/mm2に対して、引っ張り強度が8.8N/mm2、曲げ強度が32.6N/mm2と、通常にはない引っ張り耐力もあります。

東京都清瀬市にある大林組技術研究所の建物内には、スリムクリートで造った橋が2本かかっています。鉄筋を使わずに、300mmと薄い桁高の橋が実現しています。土木学会の技術評価証も2012年に取得しています。(大林組のプレスリリースはこちら

大林組技術研究所内にかかるスリムクリートで造ったスリムな橋(写真:大林組)

大林組技術研究所内にかかるスリムクリートで造ったスリムな橋(写真:大林組)

一方、3Dプリンターで造形した“打ち込み型枠”部分は、デンカが開発した3Dプリンター用特殊モルタルで、圧送中は流動性を持ち、ノズルから出た後は形が崩れない性質を持っています。こちらは圧縮強度はありますが、引っ張り強度はありません。

大林組は、この3Dプリンターを使って幅7m、奥行き5m、高さ2.5mのシェル型ベンチを製作中です。3Dプリンターで造った構造物としては、日本最大級となるもので、12ピースに分けて部材を製作し、技術研究所内に設置していきます。

設計には大林組の意匠設計者や構造設計者がかかわり、曲面を利用したスマートなデザインになっています。

シェル型ベンチの完成イメージ(資料:大林組)

シェル型ベンチの完成イメージ(資料:大林組)

施工中のベンチ。取材当日は3つのピースが設置されていた

施工中のベンチ。取材当日は3つのピースが設置されていた

通常のコンクリート構造物と違って、3Dプリンターは部材断面内に中空部分を自由自在に作ることができます。これを実現するために、3Dプリンターには材料の吐出を途中で

止めたり、再開したり

できる制御機構を新たに搭載しました。

3Dプリンターが造形するためにアームなどを動かすデータは、造形するものの3Dモデル(ポリゴンモデル)から、自動的に書き出すソフトを開発しました。

また、部材断面から強度に影響の少ない部分を中抜きし、中空部分を設ける設計には「トポロジー最適化」という手法を使っています。

今回のベンチ製作に当たっては、断面の50%を中抜きしています。

トポロジー最適化による部材の中抜きイメージ

トポロジー最適化による部材の中抜きイメージ

3Dプリンターの開発に当たった大林組とデンカの技術者たち

3Dプリンターの開発に当たった大林組とデンカの技術者たち

それから、よく聞かれるのが実物の建物を造る3Dプリンターはいくらくらいするのかということです。

今回、大林組が開発した3Dプリンターは、アームに安川電機製のロボットアームを使用するなど、ほとんどが工場のオートメーション化などに使われる汎用パーツです。そのため、ハード作成の部品代としては「数百万円のレベル」と、意外にも安いのです。

しかし、3Dプリンターとして機能させるには、制御ソフトや材料の配合など、ソフトの部分がカギとなるそうです。

海外が先行している3Dプリンターによる建設ですが、今回の大林組による新工法の開発によって、技術面で海外をリードしたかもしれませんね。

 
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