熟練者の技を記憶!大林組が川上ダムで最大級のタワークレーンを自動運転
2019年12月18日

管理人のイエイリです。

三重県伊賀市で建設中の川上ダム(発注:水資源機構)では、堤体に打設するコンクリートを最大半径86m、定格荷重25tという、国内最大級のタワークレーンで運搬しています。

川上ダムの完成予想図。堤高84m、堤頂長334mの重力式コンクリートダム(資料:水資源機構川上ダム建設所)

川上ダムの完成予想図。堤高84m、堤頂長334mの重力式コンクリートダム(資料:水資源機構川上ダム建設所)

このクレーン作業では、一度に運搬するコンクリートとバケットの総重量が20t近くにも及ぶことがあり、運搬作業を安全に行うためには吊り荷の振れを最小限に抑える熟練技術が求められます。

しかし、集中力が要求されるこの作業を、長時間にわたって何度も繰り返し行うのは、オペレーターにとって大変なことです。

そこで大林組と北川鉄工所は、熟練オペレーターのクレーン操作を、

ナ、ナ、ナ、ナント、

クレーンに記憶させて

自動的に再現できる「コンクリート自動運搬システム」を開発したのです。

タワークレーンを用いた「コンクリート自動運搬システム」の稼働イメージ(資料:大林組、北川鉄工所)

タワークレーンを用いた「コンクリート自動運搬システム」の稼働イメージ(資料:大林組、北川鉄工所)

ダムの施工に用いるクレーンは、毎回、ほぼ等しい重量の荷を吊り上げて、一定の地点間を何度も繰り返し運転します。

そこで、このシステムでは、「ティーチングプレイバック」という方式によって、熟練オペレーターの操作をあらかじめ記憶させ、その動作をクレーンに“再生”させるようにしました。

そのため、自動運搬をさせている間は、オペレーターはクレーン操作から解放され、監視業務に集中することができます。

これだけ巨大なクレーンを自動運転させるため、安全対策もしっかり考えられています。

クレーンの先端位置は、GNSS(全地球測位システム)などでリアルタイムに把握しており、他のクレーンと接近した場合はオペレーターに警報を出すと同時に自動停止する仕組みになっています。

将来的には複数台のクレーンにこのシステムを導入し、

一人のオペレーター

で稼働状況を監視、管理することで省人化を図ることも可能になりそうです。

このシステムは、大林組がICT(情報通信技術)やIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を、同社の施工技術と融合させてダム工事の情報化施工技術を開発・集約した「ODICT(Obayashi-Dam
Innovative Construction Technologyの略。オーディクトと読む)」というソリューションの一部になります。

ダム施工技術とICT、IoT、AIを統合したソリューション「ODICT」の概念図(資料:大林組)

ダム施工技術とICT、IoT、AIを統合したソリューション「ODICT」の概念図(資料:大林組)

少子高齢化の影響による労働力不足は今後、ますます深刻になっていきますが、ODICTの進化によって熟練の技が要求されるダム工事でも、生産性がどんどん上がっていきそうですね。

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