管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した建築生産システムのメリットを語るとき、設計から施工、そして維持管理へとBIMモデルが引き継がれ、ライフサイクル全体の生産性が高まる、といった説明がなされることがよくあります。
しかし、実際のところは設計と施工の間の壁、施工維持管理の間の壁があり、BIMモデルデータがそこで途切れてしまうので、ライフサイクル全体でのBIMモデル活用はなかなか実現されていないのが実情です。
こうした問題を解決しようと2019年9月に設置されたのが「建築BIM推進会議」(委員長:東京大学 松村秀一特任教授)です。
委員には学識経験者のほか、設計、施工、維持管理にかかわる団体、そして国土交通省のBIM関係者が名を連ね、5つの部会とも連携しながら、BIMのワークフローの問題点にメスを入れ、解決策を探ってきました。
その集大成とも言える「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン」が、
ナ、ナ、ナ、ナント、
国土交通省のウェブサイト
で無料公開されているのです。
全107ページからなるガイドラインは、まさに建設生産プロセスにおけるBIMの不連続の問題にフォーカスしたものです。
そのため、BIMによるCG(コンピューターグラフィックス)やシミュレーションなど、派手な絵柄はほとんどありません。
しかし、これまでブラックボックスだった発注者や設計者、施工者、そして維持管理者の業務内容とBIMに求めるデータの内容を「見渡せる」ようになっているのは、画期的な成果と言えるでしょう。
そういえば、去年(2019年)の初夏に、FacebookなどのSNS上で、BIM関係者の皆さんが膨大なアンケート用紙への記入と格闘している様子がよくアップされていましたが、その内容が今回のガイドラインで明らかになったというわけですね。
ガイドラインでは、BIMの標準ワークフローを5つ想定し、それぞれについて各プレーヤーが行うべき作業や検討、契約などについて細かく解説されています。
例えば、設計から維持管理までBIMで連携し、さらに設計段階での施工技術コンサルティングを行うという「パターン5」のワークフローとBIMモデルの流れは次のようになっています。
これまでのBIMを使った設計や施工では、BIMのモデル作成などを管理する「BIMマネージャー」という職種がありましたが、建設生産プロセス全体におけるBIMモデルをアドバイスする、「ライフサイクルコンサルティング業者」という新しい職種が登場しているのがポイントです。
この職種はこれまでの「設計と施工の壁」などをまたいでBIMモデルを受け渡したり、フロントローディング(業務の前倒し)を行ったりするのをサポートする業種です。建築ワークフローをまたいだBIMマネージャーという感じでしょうか。
驚くべきことは、そのフロントローディング度です。例えば、実施設計時に設計者が行う仕事として、
石やカーペットの清掃面積
などを入力するということも例示されているのです(ガイドライン61ページを参照)。
さすがに建設プロセスの様々な部分に携わる専門家が集結して検討しただけあって、これまでのBIM活用とはさらにスケールの大きいフロントローディングの実践方法が提案されていますね。