中央大学理工学部精密機械工学科中村研究室のメンバーは、その研究成果を事業化しようと、2017年にベンチャー企業、ソラリス(本社:東京都文京区)を設立しました。
その製品の一つが、配管やダクトの内部を点検・清掃するミミズ型ロボットです。
これらのロボットは、内径18mm以上の配管内部を自走しながら映像を撮影したり、配管をブラシで清掃したりする機能を持っています。
写真を見るとクローラーやタイヤなどは見当たりませんが、その“走行装置”となっているのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
人工筋肉
なのです。(ソラリスのミミズ型ロボット解説ウェブサイトはこちら)
人工筋肉の中心部は空洞となっており、ここに圧縮空気を注入すると膨らみ、軸方向には縮みます。このとき、軸方向に強力な引っ張り力を発生します。
ロボットには多くの人工筋肉が取り付けており、これらを前方から後方に向かって順次、膨らませたり、しぼめたりします。
膨らんだところは管内での「固定点」となり、しぼめたところが軸方向に伸びて前進します。これを繰り返すことで、ミミズのように前進できるのです。
人工筋肉の収縮時には、大きな軸力が発生するため、管端から押し込む方法に比べて大きな前進力が発生します。
そのため、急な曲がり部や上り部が連続している管内でも、スムーズに移動できます。
また、中心部が空洞というメリットを生かし、カメラのケーブルやメンテナンス用の機器などを通すこともできます。
このロボットの将来性は、ビジネス界からも大きな注目を集めており、同社はこのほど第3回目第三者割当増資を行い、
合計4.1億円の資金調達
に成功しました。(ソラリスのプレスリリースはこちら)
●出資の引受先 リアルテックファンド3号投資事業有限責任組合(本社:東京都墨田区)、三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合(本社:東京都中央区)、MSIVC2020V投資事業有限責任組合(本社:東京都中央区)、国立研究開発法人科学技術振興機構(本部:埼玉県川口市)、静岡キャピタル8号投資事業有限責任組合(本社:静岡県清水区)、KSP6号 投資事業有限責任組合(本社:神奈川県川崎市) |
同社はこれまでも2.1億円の資金調達を実施しており、今回の調達で累計調達額は6.2億円に上っています。
同社は今回の資金調達を生かして複雑な配管を可視化・点検するミミズ型ロボットを、2022年夏にリリースする予定です。用途はビルや工場、インフラ施設などの配管内の点検・清掃をターゲットにしています。
このほか、人工筋肉を使って腸のように搬送する「ぜん動運動ポンプロボット」の製品化も促進します。固体と液体が混ざった高粘度の資材を混合・輸送するものです。
インフラの点検では、ドローン(無人機)の進出がめざましいですが、小口径の配管やダクトを長距離にわたって点検・清掃する分野は、未開拓の分野です。
ソラリスの人工筋肉を使った推進装置は、新たな点検・清掃市場を開拓しそうですね。