鹿島がAIでコンクリ打設のPDCAを回し始めた! 表層品質を評価し、過去の履歴をフィードバック
2022年9月28日

管理人のイエイリです。

昭和の時代には「男の顔は履歴書」という言葉が流行りましたが、コンクリートの“顔”となる表層品質も同じです。

コンクリート表面の状態は、生コン時代からの現場受け入れ状態、コンクリート打ち重ねの時間、打ち重ね時の表面処理などの集大成だからです。

しかし、コンクリートの打設から養生、脱型までの過程には、硬化前のコンクリートの性質や状態、打設時の温度など、多くのデータが必要で、それぞれの書類が別々のため、過去のデータを見て次回の施工にフィードバックするのが困難です。

コンクリート表面に表れた打ち重ね線や気泡は、"コンクリの履歴書"と言える(以下の写真、資料:鹿島)

コンクリート表面に表れた打ち重ね線や気泡は、”コンクリの履歴書”と言える(以下の写真、資料:鹿島)

そこで鹿島は、コンクリ打設のフィードバック実現にするため、AI(人工知能)アプリを開発しました。その目的の一つは、現場技術者のコンクリの良し悪しを判断する目を鍛えることです。

現場技術者は、アプリを入れたタブレットでコンクリート表面の写真を撮り、「打ち重ね線」「色つや」「表面気泡」「沈みひび割れ」「ノロ漏れ」「砂すじ」の6項目に分けて、それぞれ0.5点刻みで4段階評価を行い、アプリに入力します。

AIアプリを入れたタブレットでコンクリート表面の写真を撮る技術者

AIアプリを入れたタブレットでコンクリート表面の写真を撮る技術者

そして、ボタンを押すと、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

AIが答え合わせ

 

するように、AIによる各項目の評価値を表示してくれるのです。(鹿島のプレスリリースはこちら

コンクリートの表層品質を、6つの項目ごとに4段階評価する(上段)し、ボタンを押すとAIが答え合わせしてくれる

コンクリートの表層品質を、6つの項目ごとに4段階評価する(上段)し、ボタンを押すとAIが答え合わせしてくれる

こうした自己採点とAIによる答え合わせを繰り返すことで、コンクリを見る目が自然に養われてきそうですね。

このアプリは、鹿島がコンクリート構造物の品質を確保・向上するために構築を進めている「コンクリート・アイ」の一部として開発されました。

コンクリート・アイでは、生コンの受け入れ時の状態や打ち継ぎ面の処理状態など、過去の各段階におけるコンクリートの状態をデータ化し、記録しています。

コンクリート・アイの概念図。コンクリートの履歴をデータ化して管理する

コンクリート・アイの概念図。コンクリートの履歴をデータ化して管理する

コンクリートの表層品質の評価データは、コンクリート・アイの過去のコンクリ履歴データと自動連携して帳票としてまとめられ、クラウド上に蓄積されます。

鹿島はこのアプリを、水処理施設の建設現場で使用し、コンクリートの表層品質と、過去の打ち込み順序や層厚、打ち重ね時間間隔などを比べながら施工管理することで、

 

PDCAを実現

 

することができました。

コンクリ表層品質のPDCAを回すイメージ

コンクリ表層品質のPDCAを回すイメージ

その結果、アプリの使用前と比べて打ち重ね線の項目が高い評価となり、品質が大幅に向上しました。

水処理施設工事におけるアプリ使用前(左)と使用後(右)でのコンクリート表層品質の変化

水処理施設工事におけるアプリ使用前(左)と使用後(右)でのコンクリート表層品質の変化

PDCAの効果によってワンランク上がり、満点に近づいた

PDCAの効果によってワンランク上がり、満点に近づいた

鹿島は今後、このアプリを多くのコンクリート構造物の工事で使用し、全国の現場に広く展開していきます。そして品質向上のための工夫を蓄積していくほか、高品質のコンクリートを施工する新工法の開発も行っていく方針です。

コンクリートの表面は、生コンの受け入れから、打設、養生を経て脱型して初めて見えるものです。その長い時間には、人間の頭から過去のことは忘れてしまいがちです。

このアプリは生コン時代からのコンクリの履歴を記録し、脱型時に思い出させてくれることで人間の品質管理能力を“超人化”してくれるものと言えるでしょう。

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