管理人のイエイリです。
昭和の時代には「男の顔は履歴書」という言葉が流行りましたが、コンクリートの“顔”となる表層品質も同じです。
コンクリート表面の状態は、生コン時代からの現場受け入れ状態、コンクリート打ち重ねの時間、打ち重ね時の表面処理などの集大成だからです。
しかし、コンクリートの打設から養生、脱型までの過程には、硬化前のコンクリートの性質や状態、打設時の温度など、多くのデータが必要で、それぞれの書類が別々のため、過去のデータを見て次回の施工にフィードバックするのが困難です。
そこで鹿島は、コンクリ打設のフィードバック実現にするため、AI(人工知能)アプリを開発しました。その目的の一つは、現場技術者のコンクリの良し悪しを判断する目を鍛えることです。
現場技術者は、アプリを入れたタブレットでコンクリート表面の写真を撮り、「打ち重ね線」「色つや」「表面気泡」「沈みひび割れ」「ノロ漏れ」「砂すじ」の6項目に分けて、それぞれ0.5点刻みで4段階評価を行い、アプリに入力します。
そして、ボタンを押すと、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIが答え合わせ
するように、AIによる各項目の評価値を表示してくれるのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
こうした自己採点とAIによる答え合わせを繰り返すことで、コンクリを見る目が自然に養われてきそうですね。
このアプリは、鹿島がコンクリート構造物の品質を確保・向上するために構築を進めている「コンクリート・アイ」の一部として開発されました。
コンクリート・アイでは、生コンの受け入れ時の状態や打ち継ぎ面の処理状態など、過去の各段階におけるコンクリートの状態をデータ化し、記録しています。
コンクリートの表層品質の評価データは、コンクリート・アイの過去のコンクリ履歴データと自動連携して帳票としてまとめられ、クラウド上に蓄積されます。
鹿島はこのアプリを、水処理施設の建設現場で使用し、コンクリートの表層品質と、過去の打ち込み順序や層厚、打ち重ね時間間隔などを比べながら施工管理することで、
PDCAを実現
することができました。
その結果、アプリの使用前と比べて打ち重ね線の項目が高い評価となり、品質が大幅に向上しました。
鹿島は今後、このアプリを多くのコンクリート構造物の工事で使用し、全国の現場に広く展開していきます。そして品質向上のための工夫を蓄積していくほか、高品質のコンクリートを施工する新工法の開発も行っていく方針です。
コンクリートの表面は、生コンの受け入れから、打設、養生を経て脱型して初めて見えるものです。その長い時間には、人間の頭から過去のことは忘れてしまいがちです。
このアプリは生コン時代からのコンクリの履歴を記録し、脱型時に思い出させてくれることで人間の品質管理能力を“超人化”してくれるものと言えるでしょう。