AIで地盤のN値、細粒分をリアルタイム計測! 五洋建設が「サウンディングAI」を開発
2023年1月31日

管理人のイエイリです。

地盤の硬さを定量化した「N値」は、建設業にとって“ノドから手が出るくらいほしいデータ”と言っても過言ではありません。

「N値」とは、基本的には地盤に抵抗体を打ち込むボーリング調査(標準貫入試験)によって求められますが、費用が比較的高く、打撃音や機械音がするという課題もあります。

その代わりに、電気式コーン貫入試験(CPT)や、ロータリー式サウンディング試験(RST)によって地盤のデータを取り、それからN値を推定するという方法がよく採られています。

円すい形のコーンを圧入する「電気式コーン貫入試験」(以下の写真、資料:五洋建設)

円すい形のコーンを圧入する「電気式コーン貫入試験」(以下の写真、資料:五洋建設)

回転体を地盤に貫入し、回転トルクなどのデータを取る「ロータリー式サウンディング試験」

回転体を地盤に貫入し、回転トルクなどのデータを取る「ロータリー式サウンディング試験」

しかし、様々な土質データからN値を推定するためには、専門技術者が経験に基づいた実用式や図表、近隣のボーリング調査結果も参考にしながら、総合的に判断する必要があるため、時間がかかります。

そこで、五洋建設はこれらの土質データから、

ナ、ナ、ナ、ナント、

人工知能を使って

N値を求める「サウンディングAI」を開発したのです。(五洋建設のプレスリリースはこちら

様々な土質データからN値や細粒分率(Fc)を、AIで推定する「サウンディングAI」の概念図。CPTの場合

様々な土質データからN値や細粒分率(Fc)を、AIで推定する「サウンディングAI」の概念図。CPTの場合

今回、五洋建設が開発したサウンディングAIは、CPTとRSTの2種類のサウンディング調査結果のデータから、N値と細粒分含有率(Fc)を推定するAIモデルです。

同社が蓄積してきた過去10年分、約1800個のサウンディングデータとともに、ボーリング調査結果や各種土質試験結果、そしてこれまで着目してこなかった貫入履歴のデータも併せて、「ディープニューラルネットワーク(DNN)」でAIに学習させました。

さらにN値とFcの相関を考慮したマルチタスク学習を採用した結果、技術者の知識や経験では捉えられなかった特長量の抽出が可能となり、推定精度が向上しました。

東京国際空港の現場で行った検証では、N値の推定誤差(二乗平均平方根誤差)が、4.3という結果でした。

サウンディングAIによって推定したN値とFcの結果。ボーリング結果と非常によく合っている。CPTの場合

サウンディングAIによって推定したN値とFcの結果。ボーリング結果と非常によく合っている。CPTの場合

従来の専門家による推定に比べて、サウンディングAIは経済性が23%向上、期間は35%短縮されたほか、技術者の負荷削減や人的ミスの削減も期待できます。

このAIを使うと、地盤改良で使われる薬液注入工事を施工中に、

リアルタイムに

N値やFcが分かるというメリットがあります。

薬液注入工事では、Fcの値に基づいて注入速度を適切に管理し、薬液の流出や地表面の隆起を防ぐ必要があります。サウンディングAIの活用により、従来に比べてより詳細に注入速度を管理できるようになりました。既に10件の工事で実績があるとのことです。

このAIの結果を見ながら、現場で作業を繰り返すうちに、人間の専門家も地盤判定の“勘”が鍛えられていくというメリットもありそうですね。

(Visited 1 times, 1 visits today)

Translate »