社外の豊富なBIM資産、AutoCADとの連携が決め手
山下設計が阿賀野市新病院をRevitで設計(オートデスク)
2014年10月21日

2010年にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を本格導入した山下設計は、AutoCADや社外のBIM資産との連携を評価してオートデスクのRevitを選定。以後、3年計画で順次、BIM活用を進めてきた。新潟県の阿賀野市新病院では、部門間面積の管理、建具表、仕上表等にRevitの自動集計機能を活用することで、設計図書作成の効率化を実現した。

Revitで設計した阿賀野市新病院のBIMモデル(基本設計時)(資料:特記以外は山下設計)

Revitで設計した阿賀野市新病院のBIMモデル(基本設計時)(資料:特記以外は山下設計)

山下設計 第一設計部副部長 大屋 三幸 氏

山下設計
第一設計部副部長
大屋 三幸 氏

山下設計 建築設計部門 渡邊 匠 氏

山下設計
建築設計部門
渡邊 匠 氏

   プロポーザルでRevitによるプレゼンテーション

新潟県阿賀野市で建設中の阿賀野市新病院は、既存の病院施設を稼働させながら、敷地内建て替えを行うプロジェクトだ。

プロポーザル方式で行われた設計業務の入札で、山下設計はオートデスクのBIMソフト「Revit」を使用して作成したBIMの3Dモデルを基にイメージパースを作成し、病院関係者らにプレゼンテーションを行った。その結果、設計業務の受注に成功した。

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Revitの3Dモデルを基に作成したプレゼンテーション用のCGパース

「既存病院と同一敷地内に新病院を建て替える計画であったため、敷地利用計画をBIMを用いたイメージパースで視覚的に説明ができた」と、山下設計第一設計部 副部長の大屋三幸氏は説明する。

新病院の前面に大きくまとまったスペースを確保することで、将来の増築、建て替えスペースとして利用できることをBIMを用いたイメージパースでわかりやすく説明した。これもプロボーザルを勝ち抜いた1つの要因だ。

   部屋数の多い病院の数量をリアルタイムに集計

病院はオフィスビルに比べて部屋数が多く、外来や放射線部門等の様々な部門が集まってできた建物であるため、面積の管理はシビアに進める必要がある。「面積の上限が決められた中での各部門の面積配分をコントロールすることが重要となるので図面検討を行いながら、リアルタイムで面積管理ができる集計機能は、とても効果的でした」と山下設計建築設計部門の渡邊匠氏は語る。

1階のBIMモデルを切断したもの

1階のBIMモデルを切断したもの

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床レベルのチェック(左)と天井の仕上げ別の表示(右)。視覚的にわかりやすいカラー表示ができるのもRevitのメリットだ
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阿賀野市新病院の床仕上げの見える化(左)と自動集計された仕上表(右)

さらにフィルタ機能を活用し、床のレベルや仕上げ情報等を視覚化したため、チェックが容易となった。自動集計した数量やもとの図面は、設計中に要求値チェックに使った。最近は建設コストが高騰しているので、施主との合意形成や意思決定を迅速に行うのにも役立った。

   タグを活用して平面詳細図などを効率的に作成

こうして、阿賀野市新病院の設計図書は、基本設計から実施設計までをRevitの自動集計機能を使って効率的に作成された。

平面図や平面詳細図、天井伏図の作成ではBIMパーツに埋め込んだ「タグ」を活用し、室名や天井高、仕上げの種類、注記などを各種図面表記上で連動させることにより効率化した。

「新しい機能を初めて使うときは時間がかかるが、一度、経験してしまえば次のプロジェクトからは作業効率が高くなります」と、渡邊氏は説明する。図面や仕上表、建具表を描くときのテンプレートや、家具などのファミリ(BIMパーツ)を作るときも、日本中に多くのユーザーがいるRevitなら、他社のユーザーが作成したBIM資産を有効に活用できる。

その一例は、Revitユーザーグループが開発した「RUTS(ラッツ)」というツールだ。「当社でもRUTSは使っています。Revitモデルから属性情報を取り出し、それを表計算ソフトのExcelで編集し、再度、Revitモデルに戻すという作業に、RUTSのツールを活用しています」と大屋氏は語る。

BIMモデルの各部に埋め込んだ「タグ」を利用して室名レベルなどの表記を各種図面と連動した平面詳細図

BIMモデルの各部に埋め込んだ「タグ」を利用して室名レベルなどの表記を各種図面と連動した平面詳細図

設計図書の多くをRevitにより作成した

設計図書の多くをRevitにより作成した

エントランスホールのイメージ

エントランスホールのイメージ

病室(4床室)のイメージ

病室(4床室)のイメージ

   2010年から3年計画でBIMを導入

山下設計がBIMを本格的に導入したのは2010年だ。BIM導入の目的は、設計プロセスの効率化と、施主との合意形成や干渉チェックなどを早期に行うことで後工程での手戻りなどを防ぐ「フロントローディング」を実現することだった。

「最初は3年計画で意匠設計者を中心にパイロットプロジェクトを通じて、BIMの活用スキルを高めていきました。Revitを選んだのは、当社で設計ツールとして使っているAutoCADとの連携や整合性を評価したからです」と大屋氏は振り返る。

2年目の2011年には15件程度のパイロットプロジェクトを選び、一般図や仕上表・建具表の作成を行った。3年目の2012年は約10人の新入社員全員にRevitの教育を1週間行い、3Dでの設計を実習した。

2013年以降は10年目までの若手設計者約30人にRevitの講習を行い、BIM活用の質・量を急速に広げている。

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新入社員や若手設計者を対象にRevitの講習を行い、BIM活用を広げていく

また、ファミリやテンプレートの作成は自社で行っているが、場合によってはRevitの機能や活用ノウハウを熟知した外部の専門家に依頼することもある。臨機応変に社内外のBIM活用スキルや資産を活用できる点も、Revitを使うメリットだ。

   構造設計や施工、FMへの展開も視野に

山下設計はこれまで、プレゼンテーションや設計図書の効率的な作成にRevitを活用してきた。今後は構造設計との連携のほか、施工段階での納まり検討、竣工図の作成、そして完成後のファシリティー・マネジメント(FM)での活用も視野に入れて、BIMに取り組む方針だ。

Revitユーザーグループは、ユニオンシステムの構造設計ソフト「SS3」とRevitを双方向連携させる「SS3 Link」というツールを開発し、RUTSとして提供しているので、構造設計でのRevit活用も、既に道が開かれている。

また、竣工BIMモデルを山下設計が管理していくことで、施主に対してBIMを活用したFMや、将来の増改築の際に有利な提案を行うことも可能になる。

Revitは山下設計の設計業務の効率化だけでなく、新サービス提供という成長戦略もサポートしていくことになりそうだ。

阿賀野市新病院施設設備概要
敷地面積 : 36,428.51㎡
新病院建築面積 :5,382.08㎡(渡り廊下・附属建物除く)
新病院延床面積 : 20,037.28㎡(渡り廊下・附属建物除く地下ピット・塔屋含む)
病院規模 : 病床数/250床 診療科/16科
階  数 : 地上6階/地下なし
構  造 : 鉄骨造/耐震構造

山下設計東京本社のオフィスが入居するビル

山下設計東京本社のオフィスが入居するビル

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