現場にセンサーを設置せず、構造物や地盤の振動を計測
0.1ミクロンの常時微動も測れる「Uドップラー」(トップライズ)
2015年12月14日

トップライズが構造物診断に使用する非接触振動測定システム「Uドップラー」は、数十m離れた場所からレーザー光線で速度や加速度、変位、固有周期をリアルタイム計測できる。現場でのセンサー設置や電源が不要で、1カ所の計測も設置を含めて10分程度で済む。維持管理業務の効率化には欠かせないシステムになりそうだ。

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数十メートル離れた橋桁の振動を計測中する「Uドップラー」の本体部(上)とデータ収録部(下)

数十メートル離れた橋桁の振動を計測中する「Uドップラー」の本体部(上)とデータ収録部(下)

  足場を設けずに橋のたわみをレーザー計測

橋の上を車両が走行したときのたわみを測定するとき、これまでは橋桁の下に足場を設け、橋桁と足場の間に変位計を設置して測定する必要があった。

ところがUドップラーは、橋桁から数十メートル離れた位置に本体部を設置して、レーザー光を橋桁に当てるだけで変位や加速度などをリアルタイムに測れるのだ。

1カ所につき、設置時間は5分程度だ。計測時間を含めても10分で完了する。そのため、測定には足場を設ける必要も1日で何カ所もたわみを計測することができる。

橋桁の下にUドップラーを設置するだけで高精度にたわみを測定できる

橋桁の下にUドップラーを設置するだけで高精度にたわみを測定できる

本体部とデータ収集部はそれぞれ内蔵バッテリーで約7時間、約8時間の連続使用が可能だ。これらは専用のトランクケース2個に入れて、1人でもタクシーなどで簡単に持ち運べる。

そのため、必要なときに必要な場所にスピーディーに移動して、たわみなどの計測が行えるのだ。

  0.1ミクロンから50mmまでの変位を計測

トップライズが構造物診断に使用している「Uドップラー」は、鉄道総合技術研究所が開発したものだ。

構造物などの動きを計測するのに利用しているのが、レーザー光線のドップラー効果だ。ドップラー効果とは、サイレンを鳴らした救急車が近づいてくるときには「ピーポー」の音が高くなり、遠ざかっていくときには低くなるあの現象だ。

レーザー光線を発射し、反射光をキャッチするUドップラーの本体部

レーザー光線を発射し、反射光をキャッチするUドップラーの本体部

Uドップラーの本体部は、安全規格クラス2のレーザー光線を発射し、目標物からの反射光をキャッチすることで、構造物の速度を計測する。

この速度データをデータ収集部のパソコンで解析することで変位や加速度、振動のスペクトル解析などをリアルタイムで行える。得られたデータをその場で確認できるので、データに不具合があるときはすぐわかる。そのため、後で再計測を行うという2度手間も生じない。

変位の計測範囲は0.1ミクロンから50mmまでと広い。さらにレーザー光のパルス数を調整すれば53pm(53×10-9m)という小さな変位まで観測できる。

これだけ感度が高いと、本体部が風で揺れたり、地盤の常時微動による影響を受けたりすることもある。そこで、本体部には計測地点の振動を測定する微振動センサーを内蔵しており、計測結果を補正する機能も持っている。

データ収録部のパソコン画面。上から対象物の振動波形、本体の振動波形、対象物の振動を本体の振動で補正した3つの波形が表示されている。左下の緑色のグラフは振動の周期スペクトルをリアルタイム表示したもの

データ収録部のパソコン画面。上から対象物の振動波形、本体の振動波形、対象物の振動を本体の振動で補正した3つの波形が表示されている。左下の緑色のグラフは振動の周期スペクトルをリアルタイム表示したもの

黒っぽい構造物を計測するときは、レーザー光が反射しにくい場合もある。そんなときは反射マーカーを張り付けると、確実な計測が可能だ。

また、構造物の真下や真横から計測できないときは、本体部に内蔵した角度センサーによって水平方向や垂直方向の角度に補正することもできる。

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反射マーカー(左)と現場での設置例(右、円内)

  時間を高精度に記録するGPSカード

Uドップラーのデータ収集部のパソコンには、正確な時間を表示するGPSカードを搭載している。そのため、計測したデータには高精度の時刻が同時に記録されるようになっている。

そこで、3台のUドップラーを使ってX、Y、Z軸の振動成分を別々の場所で計測し、後で正確な時間データによって同期させることも可能だ。

また、高架橋と架線柱の計測を別々に行って後で振動データを比較し、共振の有無を確認するといった耐震性能の評価などにも使える。

製鉄所の高炉各部分の振動を3台のUドップラーで計測した例。各振動データはGPSカードによる時刻によって後で同期できる

製鉄所の高炉各部分の振動を3台のUドップラーで計測した例。各振動データはGPSカードによる時刻によって後で同期できる

  固有振動数の差から落石の危険性も判明

構造物の異常は、平常時の振動や固有周期の変化にも表れる。その性質を利用して橋などの固有振動数を定期的に計測すると、その変化からケーブルの切断や部材のひび割れなどの兆候を知ることができる。

また、地盤の崩壊や落石の予知にも活用できる。地盤にひびが入ったり、岩塊が不安定になったりしている場所は、常時微動でも周囲の地盤と違った揺れ方をしているからだ。

Uドップラーを2台使って、崩壊などの危険がありそうな場所と周囲の地盤の固有周期を計測し、比較することで、こうした危険個所も定量的に評価できる。

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2台のUドップラー(左)を使って、崩壊の可能性がある地盤の各部の常時微動を計測した例(右。黄色の円内は反射マーカーの位置)

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常時微動による固有周期の変化を計測する方法はこのほか、耐震補強工事の効果測定にも用いられる。地盤の固有周期と構造物の固有周期が、耐震補強工事の前後で離れたかどうかを実際の計測でわかれば、地震時の共振を防げるかどうかを確認できるからだ。

建設コンサルタントとして実績のあるトップライズは、このUドップラーを使った計測サービスを技術者付きで提供しており、橋桁のたわみ量計測や製鉄プラントの耐震性評価、落石の危険度評価など、北海道から九州まで様々な分野で約30件の実績がある。今後は風力発電や道路、建築分野などにもサービスを広げていく方針だ。

【問い合わせ】
株式会社 トップライズ

〒956-0864 新潟市秋葉区新津本町2-8-14
TEL 0250-24-8214
ウェブサイト:http://www.toprise.jp/

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