渋谷2大現場の物流をジャスト・イン・タイム化
東急建設が資機材搬入システム「DandALL」を導入(福井コンピュータ)
2016年3月31日

人やクルマが行き交う渋谷駅周辺で、2つの巨大ビル建設工事が進んでいる。その作業効率は資機材を搬入する車両と、クレーンによる荷物の揚重作業をいかに無駄なく行えるかにかかっている。そこで施工を担当する東急建設と福井コンピュータは、資機材搬入・揚重管理システム「DandALL(ダンドール)」を共同開発。両現場での活用が始まっている。

渋谷駅前に建つ渋谷ヒカリエ(右)と通りを隔てて向かい合う東棟の工事現場(左)

渋谷駅前に建つ渋谷ヒカリエ(右)と通りを隔てて向かい合う東棟の工事現場(左)

   現場の揚重情報をリアルタイムに共有

日本を代表するターミナル、渋谷駅の直上では、渋谷駅街区開発計画I期として高さ約230m、地上47階、地下7階建ての東棟(床面積18万1000m2)の施工が進んでいる。

その南に位置する旧東横線渋谷駅の跡地周辺では高さ約180m、地上35階、地下4階建ての渋谷駅南街区プロジェクト(床面積11万6300m2)の工事が急ピッチで行われている。

これから迎える工事の最盛期には、それぞれの現場で月間5000台を超える車両が工事用の資材や機材を搬入する予定だ。

昼夜を問わず、ひっきりなしに現場出入りする車両の到着時間と、クレーンによる揚重作業のスケジュールを管理し、施工者や専門工事会社、車両の出入りを管理するガードマンなど工事関係者の間で情報をリアルタイムに共有するために導入されたのが、福井コンピュータの資機材搬入・揚重管理システム「DandALL」だ。

資材搬入車両と揚重作業のスケジュールを現場全体で共有する「DandALL」の画面

資材搬入車両と揚重作業のスケジュールを現場全体で共有する「DandALL」の画面

DandALLとは、現場に資機材を搬入する車両やクレーンによる揚重作業のスケジュールを一元管理するシステムだ。その情報は工事関係者が持つスマートフォンやタブレット端末でリアルタイムに共有することができるため、「搬入待ち」「揚重待ち」といった“手待ちのムダ”をなくすことができる。

   情報共有にスマホ、タブレットを活用

渋谷駅南街区プロジェクトの機電長、大野氏は「これまでの現場では、車両の出入りや揚重のスケジュール管理は表計算ソフトで行ったり、現場内にある揚重センターのホワイトボードに書いたりしていました。そのため、予定の変更があった場合には、いちいち揚重センターに行く必要がありました。その点、DandALLはスマホでいつでも最新情報が確認できるので、“移動のムダ”が大幅に減ります」と語る。

スマホの画面にはゲートに入る予定車両の情報が時間軸で表示される。資材搬入を担当する協力会社名やナンバープレートの番号、運転手名、運転手の携帯番号など、ゲートの出入りを管理するガードマンが必要な情報がまとめられている。

搬入車両のスケジュールをいつでもどこでもスマホで確認できる便利さ

搬入車両のスケジュールをいつでもどこでもスマホで確認できる便利さ

 

資材到着と揚重作業のスケジュールを連動して管理できるので効率的

資材到着と揚重作業のスケジュールを連動して管理できるので効率的

同じ情報は、クレーンの玉かけや揚重を行う担当者、届いた資機材を使用する協力会社もリアルタイムで見ている。車両の到着が遅れそうという連絡が運転手から入ったときは、即座にスケジュールを修正し、その情報が関係者にも伝えられる。

そのため、車両が到着するときには、各作業を担当する関係者の準備も整い、ジャスト・イン・タイムでの揚重作業が行える。車両やクレーンの運転手、協力会社とも、“手待ちのムダ”はなくなるのだ。

   ドラッグ操作1つでスケジュールを変更

東棟の機電長、鶴飼氏は「DandALLは、スマホの画面上でスケジュールを移動させたり、一斉にずらしたりと、柔軟に変更することができるので、搬入車両の現場到着が遅れたときの順番入れ替えなども、ドラッグ操作1つでスムーズに行えます」と言う。

DandALLの開発は、東急建設から福井コンピュータに持ちかけられたのがきっかけだった。毎月1回、両社はミーティングを行い、資機材の搬入スケジュール管理システムに求められる機能をリストアップした。それを受けて福井コンピュータがプロトタイプを開発していった。

スケジュール変更はドラッグ操作1つで完了する

スケジュール変更はドラッグ操作1つで完了する

この開発作業には、2012年に完成した高層ビル「渋谷ヒカリエ」の工事の経験も生かされた。鶴飼氏は「渋谷ヒカリエの工事では、累計で15万台の車両が現場に出入りし、最盛期には月間5000台の車両が5分刻みで現場に到着した。遅れる車両や、前倒しも多かった。当時はサーバーによる会議室予約システムを使ったが、搬入と揚重の連携や柔軟な予約変更に対応しにくかった」と振り返る。

こうした現場の経験に裏打ちされたニーズに対応できる機能が、DandALLに搭載されていったのだ。

DandALLの開発に関わった東急建設の技術者と福井コンピュータの担当者

DandALLの開発に関わった東急建設の技術者と福井コンピュータの担当者

   現場ニーズを盛り込んだDandALLを導入

そして2015年9月にはまず、渋谷駅南街区プロジェクトの現場で導入準備が始まった。協力会社の職長を対象にDandALLの説明会を行った後、車両の到着スケジュールなどを職長自身で行ってもらうようにした。

現在は施工者の職員を含め、約20人で活用しているが、今後、工事が本格化してくると、さらに多くの職長にもDandALLを使ってもらう予定だ。

旧東横線渋谷駅の跡地周辺で進む渋谷駅南街区プロジェクトの現場

旧東横線渋谷駅の跡地周辺で進む渋谷駅南街区プロジェクトの現場

一方、東棟の現場では、同10月にDandALLが導入され、約10人が使用している。現場のゲートキーパーを務める新入社員の西山氏がスケジュール入力を一手に引き受けている。

「操作方法は半日くらいで理解できた。細かい操作はマニュアルを見ながら行っている」と西山氏は語る。

約230m、地上47階、地下7階建ての東棟の現場は、これから最盛期を迎える

約230m、地上47階、地下7階建ての東棟の現場は、これから最盛期を迎える

   トラックの現在位置もリアルタイムにわかる

東急建設の現場では2年ほど前から携帯回線付きのスマホやタブレット端末を業務に使用するようになった。そのため、DandALLを導入する体制が既に整っていた。

「渋谷駅南街区プロジェクトの現場は飛び地があるため、現場のどこにいても、リアルタイムに揚重スケジュールなどの情報共有ができるのはとても効率的です」と菊池技術員は説明する。

同年12月には、定常的に現場に出入りするトラックのドライバーにも、DandALLの使用を拡大する。スマホに搭載されたGPS機能でトラックの現在位置も把握できるようになり、揚重スケジュール管理はさらに高度になる。

将来的には、DandALLの機能に受け入れ検査や伝票管理との連動を追加するとともに、生コンを搬入するコンクリートミキサーにも適用範囲を広げていく予定だ。そして揚重スケジュール記録をもとに、予定と実際を比較し、さらにムダのない高精度な揚重スケジュールを追求していく。

工事情報を共有すると現場全体がつながる

工事情報を共有すると現場全体がつながる

渋谷駅南街区プロジェクトは2018年秋、東棟は2019年度に完成する予定だ。その工事に使われる資機材のスムーズな搬入と揚重作業を、DandALLは裏方として支えていくことになる。

【問い合わせ】
福井コンピュータ
DandALL(ダンドール)サイトhttp://const.fukuicompu.co.jp/products/dandall/index.html
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