6台のICT建機と3Dスキャナーをフル活用
南雲建設が社員30人で挑む“自社流i-Con”(トプコン)
2018年6月26日

群馬県渋川市に本社を置く南雲建設は、6台のICT建機を保有し、30人の社員がフル活用している。これらのICT建機の制御を支えているのは、トプコンのマシンコントロールシステムだ。このほかトプコンの3DレーザースキャナーやGNSS測量機器も導入し、自社の工事を効率的に進めるための“自社流i-Construction”に取り組んでいる。

群馬県内にある八ッ場ダムの工事現場。南雲建設のICT建機が活躍している

群馬県内にある八ッ場ダムの工事現場。南雲建設のICT建機が活躍している

   社員30人の会社が6台のICT建機を保有

群馬県内で建設中の八ッ場ダム。施工の一翼を担う南雲建設は自社が保有するICTバックホーとICTブルドーザーをフル活用し、高精度の施工をスピーディーに行っている。

群馬県渋川市に本社を置く南雲建設は、社員30人という規模ながら、3Dマシンコントロール(MC)やマシンガイダンス(MG)を採用したICT建機を6台のほか、3Dレーザースキャナー、そして出来形管理などに使用するGNSS受信機などを積極的に導入し、自社の現場で活用している。

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南雲建設が所有するICT建機(上)と測量機器(下)。トプコン製のシステムを中心に採用している

南雲建設が所有するICT建機(上)と測量機器(下)。トプコン製のシステムを中心に採用している

南雲建設 代表取締役 南雲 和好 氏

南雲建設 代表取締役
南雲 和好 氏

同社がICT建機を導入したのは、2014年にトプコン製の2DMCシステムを搭載したブルドーザーを導入したのが始まりだった。

以来、3D-MC付きの0.7m3、0.45m3クラスのバックホーやブルドーザー、そして2017年には3Dレーザースキャナー「GLS-2000」を導入した。

「ICT建機は初め、レンタルして使っていましたが、その後はすべて自社で購入しています。自社で保有していると、社員全員が使えるようになると考えたからです」と南雲建設代表取締役の南雲和好氏は説明する。

南雲建設は1993年、南雲氏が立ち上げた。「人がやらない仕事に挑戦し、新しい技術や機器を積極的に導入してきました。品質管理では、規格値の50%以内の精度に収めることを社内基準としています」と南雲氏は言う。

どんな工事でも自社で対応できるように、ICT建機を含めて大小さまざまな建機約50台をそろえている。例えばクレーン車は12t~50tのものを4台、コンクリートポンプ車は3台といったラインアップだ。

   3Dスキャナーで起工測量し、ICT建機で施工

南雲建設 取締役 土木部長 片野 光男 氏

南雲建設 取締役 土木部長
片野 光男 氏

現場での施工に先立って行う起工測量では、3Dレーザースキャナー「GLS-2000」を使用し、現場の地形だけでなく周囲にある建物や設備などを3Dの点群データとして記録し、施工計画の検討を行う。

「GLS-2000を使うと、図面に描かれていない電柱や電線など、細かいものももらさず記録できるので、建機の障害物を避けた施工計画を作れるなど、工事の手戻りを防ぐのに役立ちます」と言うのは、南雲氏とともに同社のICT施工を推進する取締役土木部長の片野光男氏だ。

「農地整備事業など土地造成工事では、3Dモデルで完成形状や施工計画を作ると、切り盛り土量の計算が正確にできるだけでなく、土地の所有者にも完成形状をわかりやすく説明できるのもメリットです」(片野氏)。

3Dレーザースキャナー「GLS-2000」による起工測量の様子。電線や樹木など現場周辺の状況を残さず3D点群で記録し、施工計画に生かす

3Dレーザースキャナー「GLS-2000」による起工測量の様子。電線や樹木など現場周辺の状況を残さず3D点群で記録し、施工計画に生かす

その後の施工では、ICT建機をフルに活用する。特に土工事の場合は、ほとんどの工事でICT建機を使っているという。

「水路掘削やU字溝の施工などは以前、丁張りと建機を誘導する補助員を使っていましたが、今はICT建機で丁張りや補助員なしで行えるようになりました。小さい現場でもICT建機は生産性向上に役立っています」と南雲氏は続ける。

「自社でICT施工に取り組み始めてから、建機のオペレーターを含めて社員全員でICTの使い方を考えるようになり、それが自信となって新しい活用法のアイデアが生まれています」(南雲氏)。

ICT建機によるU字溝の掘削イメージ

ICT建機によるU字溝の掘削イメージ

斜面造成のために作った3Dモデル

斜面造成のために作った3Dモデル

   若い社員が3Dデータ作成を担う

i-Constructionに欠かせない3Dデータの作成は、多くの企業にとって悩みのタネだ。南雲建設では、3次元CADの扱いが得意な20代の社員が、この作業を一手に担っている。

3次元CADソフトは、国産ベンダー2社の製品とオートデスクの「AutoCAD Civil 3D」をメインに使っている。

「3Dデータの作成は若手社員が担当しているが、ちょっとした修正は現場の社員でも行っています。3次元CADというと難しそうで尻込みしてしまう人も多いですが、2次元CADが使える人なら、ちょっと踏み出せばできるようになります」と南雲氏は言う。

一見、難しそうな3次元CADも、一つのツールとして気軽にチャレンジする。こうした社風が南雲建設のICT施工を可能にしているようだ。

自分でデータを入力すると、現場の施工管理で必要となる点の座標データなども盛り込むことができる。社員自身が3Dデータの作成や修正にかかわることで、現場の生産性向上にもつながるのだ。

完成した道路の法面工事現場(左)とICT施工に使った3Dモデル(右)

完成した道路の法面工事現場(左)とICT施工に使った3Dモデル(右)

   過積載防止システム「LOADEX100(ローデックス100)」も導入

南雲建設の売り上げは、群馬県や県内各市からの元請け工事が約3割、国の工事の下請けが約7割だ。近隣の施工現場では軽石などが多いため、残土をダンプカーで搬出する場合に、重量よりも積み荷の体積が多くなる傾向がある。

そのため、過積載の取り締まりで、チェックされることも少なくない。 そこで同社が導入したのが、「LOADEX100」というトプコンが近く発売する予定の土砂重量計測システムだ。

このシステムを搭載したバックホーは、バケットで土砂をすくうと、その重量を10キログラム単位で精密に計測することができる。そして、ダンプカーに積み込む際には、合計重量も計算できるようになっている。

そのため、過積載を防ぎつつ、最大限に残土を積み込み、効率的な運搬が可能になる。

運転席のLOADEX100モニター画面。バケットがすくい取った土砂の重量や積載した合計重量が10kg単位で表示されるので過積載を防ぎつつ、効率的な運搬が可能だ

運転席のLOADEX100モニター画面。バケットがすくい取った土砂の重量や積載した合計重量が10kg単位で表示されるので過積載を防ぎつつ、効率的な運搬が可能だ

最近、最新型のバックホーには同様の機能を組み込み搭載したものも市販されているが、LOADEX100のメリットは既存のバックホーに後付けできることだ。

「トプコンの3D-MCシステムやLOADEX100は、使い慣れた既存の建機に後付けできる点が気に入っています。社員も使い慣れた建機なので、普段の仕事の延長で自然にICT施工に取り組むことができます」と片野氏は言う。

小規模な地方ゼネコンでありながら、積極的にICTに取り組む南雲建設は注目を集め、現場には県外からの見学者が訪れるほか、「トプコンソキアポジショニングジャパンロードショー2018」での講演では、多数の来場者で会場が埋まった。

2018年2月6日に東京・有明で開催された「トプコンソキアポジショニングジャパンロードショー2018」で講演する片野氏

2018年2月6日に東京・有明で開催された「トプコンソキアポジショニングジャパンロードショー2018」で講演する片野氏

ICT建機や3Dレーザースキャナーなどの測量機器は、技術の進歩が早いので、後から導入した方が得という考え方もある。しかし、南雲建設の場合は、常に最新型、最先端スペックの機器を導入している。

「近い将来は無人建機による施工が現実的になるでしょう。そんな時代に備えて、今から3Dデータを使った情報化施工に慣れておく必要があります。そこであえて最新型や最先端にこだわりながら、“自社流i-Construction”に取り組んでいます」と、南雲氏はその狙いを説明する。

土木工事の世界も昔と今とでは、技術や仕事のやり方が変わってきた。同社はICT施工を武器に、新しい土木工事の世界を開き続けている。

●南雲建設が導入したトプコンのi-Constructionシステムの例
<3Dレーザースキャナー>
GLS-2000
<2周波GNSS受信機>
HiPer V
<3Dマシンコントロールシステム>
ブルドーザー用マシンコントロールシステム 3D-MC2
<トータルステーション>
GT-1003(ICTブルドーザー用)
PS-103AS(ICTブルドーザー用)
 【問い合わせ】
株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン
東京営業所 ICT推進部
TEL: 03-5994-0671 / FAX: 03-5994-0672
ウェブサイト: http://www.topcon.co.jp/
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