BIMの3D情報生かし、施工図作成を大幅自動化
ハイビッグ建築図面工房のRevit活用現場を直撃(オートデスク)

2019年9月2日

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルから図面を作成するとき、寸法線や部材の仕様を表すタグなどを手入力すると図面の作成や設計変更などに多大な労力が発生する。そこでオートデスクのBIMソフト「Revit」を活用するハイビッグ建築図面工房(本社:京都市伏見区)は、BIMモデルの3Dデータや属性情報を生かして施工図を作成する際の手作業を自動化するテンプレートやファミリ、アプリを開発。図面作成作業を大幅に自動化した。

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ハイビッグ建築図面工房 北野 宏明 課長

ハイビッグ建築図面工房
北野 宏明 課長

   高さをもとに柱の階記号を自動作図

「これまでは平面図上の柱の階記号を手入力していましたが、Revitモデルの柱オブジェクトに含まれるZ座標データ情報を使って、階数を自動入力できるアドオンアプリを開発しました」とハイビッグ建築図面工房の東京オフィスでBIMチームを率いる北野宏明課長は語る。

RevitでBIMモデルから施工図を作成する業務を主に手がける同社の課題は、これまで手入力することが多かった図面上の寸法線や部材の記号、仕様などの情報を集約した「タグ」内の情報入力をいかに自動化するかということだった。

例えば、鉄骨造の工場や鉄筋コンクリート造のマンション、複合施設などの施工図は、図面の詳細度(LOD)が300~350にもなる。それだけ図面内には、部材の仕様や型番など多くの情報がある。その中から必要な情報を組み合わせて図面表現を自動的にするかが、施工図作成業務のカギとなっている。

「こうしたワンクリックの手間を地道に自動化していくことで、施工図作成の生産性が上がり、ヒューマンエラーもなくなります」と北野氏は言う。

Revitで作成したBIMモデル

Revitで作成したBIMモデル

BIMモデルの位置情報や属性情報を使って自動作図した柱のタグ。「1C1」の最初の「1」は「1階」であることを表すが、BIMモデルのZ座標データから階数を自動表示させている。柱の構造体寸法「650×650」は柱の属性情報をもとに表示している。こうすることで、C1の柱のタイプを1つにすることができ、ヒューマンエラーもデータ容量も減らすことができる

BIMモデルの位置情報や属性情報を使って自動作図した柱のタグ。「1C1」の最初の「1」は「1階」であることを表すが、BIMモデルのZ座標データから階数を自動表示させている。柱の構造体寸法「650×650」は柱の属性情報をもとに表示している。こうすることで、C1の柱のタイプを1つにすることができ、ヒューマンエラーもデータ容量も減らすことができる

   寸法線を自動作図し、パート主婦が微修正

寸法線の自動作図アプリも開発した。柱や壁など寸法線を表示する部材をメニュー上で選んだ後、「図面寸法」のコマンドをクリックするだけで、図面上に次々と寸法線や数値が表示されていくものだ。フカシなどの細かい寸法押さえにも対応している。

これまで1つ1つ、手作業で描いていた膨大な寸法線が自動作図されることで、図面作成の効率はぐっと上がった。

「自動化すると、寸法線が重なって見えにくい部分も当然出てきます。その修正作業は、寸法線をずらすだけなので、主婦のパートの方にお願いしています。すべての作図を技術者だけで行うのではなく、経験の浅い人とも分業できるようになり働き方改革にもつながっています」と、北野氏は作図の自動化がもたらした分業効果を説明する。

寸法線の自動作図機能。まず、寸法を表示する部材を選択する

寸法線の自動作図機能。まず、寸法を表示する部材を選択する

画面左上の「図面寸法」(赤丸印)をクリックすると、柱周りや壁に寸法線が自動的に作図されていく。施工図ならではのフカシと言われる部分の寸法も考慮して押さえることができる

画面左上の「図面寸法」(赤丸印)をクリックすると、柱周りや壁に寸法線が自動的に作図されていく。施工図ならではのフカシと言われる部分の寸法も考慮して押さえることができる

このほか、同社が開発した機能としては、躯体図や仕上図など、作成する図面の種類に応じて必要なBIMモデルだけを表示する「ビューテンプレート」、壁のフカシの有無やフカシの付いた側を表示するタグの自動作図などがある。

さらには、レベルの数値がRevitではデフォルトが「0」となるところを「±0」と自動表示させるといった日本の図面ならではの細かいものまで開発している。

   社内統一基準でファミリやテンプレートを整備

ハイビッグ建築図面工房 日暮 映吏 係長

ハイビッグ建築図面工房
日暮 映吏 係長

施工図作成の生産性向上を図るワークフローを実現するため、BIM活用に関する様々な開発や環境整備に取り組んでいるのが同社のBIMチームだ。BIMマネジャーを務める日暮映吏係長は新卒で入社後、約10年にわたって施工図の知識を学んだ上でRevit関連のシステム開発などに取り組んできた。

「BIMモデルから3D座標データや属性情報を利用して、2Dの施工図作成を自動化するためには、ファミリやテンプレート、アプリの社内規格を統一しておく必要があります」と、日暮氏は言う。

「梁などのオブジェクトには属性情報として『共有パラメーター』が設定してあり、そのデータを施工図作成用のテンプレートと連携させることで、効率的な作図が行えます」(日暮氏)。

つまり、BIMモデルを作成する段階から、施工図作成に必要な情報をファミリにインプットしておき、テンプレートで施工図作成の様々な作業を自動化するという作業を、技術者が無意識に行えるように、地道な開発を続けている。

独自開発のファミリ、テンプレートと自動化アプリを使って効率的に描かれた基礎伏図

独自開発のファミリ、テンプレートと自動化アプリを使って効率的に描かれた基礎伏図

日々の実務で作成した新しいファミリやテンプレートから“いいとこ取り”して、BIM資産に取り込むことも行っている。こうして、社員が編み出したRevit活用ノウハウや貴重なデータが死蔵されることなく、全社で活用し日々向上させながら取り組んでいる。

そのため開発対象は、3Dモデル構築やファミリの管理機能の部分まで及んでいる。設備や建材のファミリを検索するアプリはその一例だ。

ファミリの検索機能。JANコードや品目名、説明文などから必要なファミリをファミリに入力してるパラメータ情報から情報を自動で取り出し素早く見つけることができる

ファミリの検索機能。JANコードや品目名、説明文などから必要なファミリをファミリに入力してるパラメータ情報から情報を自動で取り出し素早く見つけることができる

「寸法や色などが少しずつ異なる建材設備を、ファミリ名にどれだけ工夫を凝らしてもそれだけの情報で検索するのは限界があります。そのため、型番や仕様、物流管理に使われるJANコードなどのカタログデータからもパラメータ情報に入力しているものなら検索できる機能を開発しました」(日暮氏)

このほか、仮設のBIMモデルをスピーディーに作るため、Revitのカーテンウォール機能を使って建物の枠組み足場をひとまとめにモデリングし、さらにフェーズ設定まで簡易的に作成する機能なども開発している。

枠組み足場をスピーディーにモデリングする機能。ビケ足場など他の足場材にも対応しており、Revitのカーテンウォール機能をベースとして開発した

枠組み足場をスピーディーにモデリングする機能。ビケ足場など他の足場材にも対応しており、Revitのカーテンウォール機能をベースとして開発した

「開発したい機能はまだ100個以上ピックアップしています。うち20個を現在開発し活用中です」と北野氏は言う。

BIMチームが開発した様々な自動化機能は、各現場の最前線での施工図作成業務に生かされる。このほか、仮設や鉄骨建て方の施工手順を検討する際に、3Dモデルに時間軸をプラスした「4Dシミュレーション」など行うときにもフルに活用されている。

   「最終的に図面はいらなくなるだろう」

ハイビッグ建築図面工房 相原 和教 代表取締役社長

ハイビッグ建築図面工房
相原 和教 代表取締役社長

ハイビッグ建築図面工房の3D活用は、2000年ごろオートデスクの建築向け3次元CADソフト「AutoCAD Architectural Desktop(ADT)」を導入したときにさかのぼる。

「当時のADTで、鉄骨の建て方シミュレーションを行い、3Dモデルのわかりやすさに着目しました」と、ハイビッグ建築図面工房の相原和教代表取締役社長は振り返る。

同社は2007年ごろ、本格的なBIM活用に移行するため別のソフトベンダーが開発したBIMソフトを導入した。

その後、2013年頃にはオートデスクのRevitに切り替えた。「BIMが普及するのに従い、当社のクライアント企業の中でもRevitユーザーが圧倒的に多くなってくると予測したため」と、相原氏は説明する。

現在、施工図まですべてBIMで行う“フルBIM”は年間3件程度だが、仮設など部分的にBIMを活用する業務は年間約80件もこなしている。

現在、社員約30人のうちRevitユーザーは11人ほどになってきている。社長の相原氏自身もユーザーだ。今後は社員全員が実務を通してつかえる状態にしていく。RevitはAECコレクションを2ライセンス、通常版を2ライセンス、LT版を10ライセンス導入している。

長年、施工図作成にRevitを活用してきた結果、BIMモデルから作成した図面のクオリティーは、従来のAutoCADで描き込みながら作成したものと変わらないレベルになった。BIMモデルの属性情報を利用した作図の自動化によって、今後の生産性は飛躍的に向上していくだろう。

従来のAutoCADで作成した基礎伏図(上)とRevitで作成した基礎伏図(下)の比較。図面としてクオリティーはほとんど同じレベルになった

従来のAutoCADで作成した基礎伏図(上)とRevitで作成した基礎伏図(下)の比較。図面としてクオリティーはほとんど同じレベルになった

新しい取り組みとしては、RevitのBIMモデルをVR(バーチャルリアリティー)化し、現場担当者と実寸大、立体視で部材の納まりを確認したり、景観シミュレーションソフトによって仕上げ部材などを選ぶ「モノ決め」を実施する事例も出てきている。

さらには同社の強みである施工段階のノウハウを、上流の設計段階で生かした設計業務への展開も今後は視野に入れている。

これが実現すると、施工段階の問題を設計段階で解決する「フロントローディング(業務の前倒し)」が、いっそう加速しそうだ。施工図という図面の中では難易度が高い図面がクリアできれば、どの段階での図面もBIMから作ることができるだろうと考える。

長年、施工図の作成に携わってきた相原社長だが、「最終的には図面がいらなくなる時代がやってくるでしょう」と語った。その言葉からは、BIMモデルから効率的に施工図を作るビジネスモデルにとどまらず、施工に必要な情報を施工図以外の方法で提供する新しい時代への構想が、既に相原社長の中で動き始めていることが感じられた。

 

【問い合わせ】
Autodesk Revit日本公式Facebook
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