ArchiCAD BIM事例レポート 株式会社エー・エム・エーデザイン建築設計事務所
2014年10月12日

株式会社 a.m.a design

ArchiCAD「 エネルギー評価」機能がアトリエ事務所に新たな武器をもたらす

横浜市のa.m.a designは一級建築士の朝倉元氏・美穂氏夫妻が主宰する建築設計事務所である。ご夫妻のほかスタッフ3名という小規模の事務所ながら東北から九州まで広汎なフィールドに展開し、年間約6棟の注文住宅の設計・監理を行なっている。このパワフルな活動を可能にしているのが、夫妻の息の合ったチームワークとArchiCADによる3次元設計である。今回、ご夫妻はArchiCAD17 内蔵の「エネルギー評価」機能に取り組んだ。早速その狙いと背景についてお話しを伺った。

自宅を題材に「エネルギー評価」機能を運用

朝倉 元 氏
株式会社 a.m.a design 代表 朝倉 元 氏

朝倉 美穂 氏
株式会社 a.m.a design 代表 朝倉 美穂 氏

「ArchiCAD に搭載された時から、「エネルギー評価」機能は知っていました。私は大学でも建築の環境系を扱う研究室で学んだので、この分野には関心がありました。でも、じっくり試す時間がなかなかなくて」。a.m.a design代表、朝倉元氏はそういって苦笑いを浮かべる。5名という少数精鋭で本州全域から九州まで対応し成長を続ける同社にとって、新ツールを細かく試す余裕は取りにくいのである。そんな同氏が、今回グラフィソフトの協力のもと、「エネルギー評価」機能の試用に取り組んだのにはもちろん理由がある。

「ご承知のとおり、個人住宅においても“エコ”はいまや時代のキーワードです。実際、地球温暖化など外的要因も大きく変化し、より良い住環境を作る上で無視できないテーマとなっています。その意味でエネルギー消費の影響を設計段階でシミュレートできる「エネルギー評価」機能の活用は、私たちにとっても大きな課題となったのです」。

朝倉氏の言葉通り、近年はお客様も環境やエコに対する関心を深めているが、「そのために何をすれば良いかわからない」という方も少なくないのだという。

「そこでたとえば私たちの側から、“感覚的なものを数値で示すことができれば断熱性は良くなり、快適性もこれほど向上する”と提案でき、設計者としてはもちろん、事務所の信頼度としても大きなプラスになります」と朝倉美穂氏も言葉を添える。

今回、朝倉夫妻が「エネルギー評価」機能の運用の題材に選んだのは2人の自宅。夫妻みずから設計し雛壇状の敷地に建てた、混構造(RC+W)延床面積175.21㎡の建築である。白い外観にコーナーのガラスブロック壁が印象的な美しい住まいだ。ここなら、ArchiCAD によるモデルデータはじめ建材のスペックなど、建築時のデータがきちんと保管され、実生活を通じて冷暖房費など光熱費他のコストも明確に出すことができる。つまり、「エネルギー評価」機能によるエネルギー消費シミュレーションの結果と実際のデータを具体的に比較検討しようというのである。

「現在は検証を始めて2カ月ほど経ったところで、データを入力して一部検討しながら、グラフィソフト社とのやり取り等も行なっています。最終的な結論は出ていませんが、現時点ですでに数値は「エネルギー評価」機能による想定範囲内に収まっており、ブラッシュアップしていけば、十分現実に即したシミュレーションが可能だと感じます」(元氏)。

日吉台の家_外観写真日吉台の家_外観写真
エネルギーモデル検討 – ゾーン表示エネルギーモデル検討 – ゾーン表示ソーラー解析ソーラー解析

施主に対する大きな説得材料

今回の試験運用で、朝倉氏が注目したのは断熱性能の評価である。実は7年前の新築当時、断熱性等の住宅性能について、予算内で考え得る最高レベルのスペックを実現すべく工夫を凝らしたのだという。

「ですから、それが実際どれくらい反映できたのか確認したかったんです。幸い、前述のとおり現実にもほぼシミュレーション通りの数値が出ました。また、この時は内断熱を採用したんですが、もし外断熱でやっていたらどうだったのか? という仮定もシミュレートしてみました」(元氏)。後者の結果は想定した理論値に近い判定が出たそうだ。その他のさまざまな判定結果と合わせて、日本の建築にも使っていける目処が立ったのだという。

「内/外断熱を例に取れば、“外断熱と内断熱はこれくらい違う”と、初期段階で数値を挙げてアドバイスできるんです。お客様にちゃんと納得して選んでもらえるわけで。スペックを重視される施主にとっては、住宅性能の数値化は説得力がある」(元氏)。

ハウスメーカーはある程度決まった規格で家づくりを行なっているため、各種の住宅性能についても数値化しやすく、断熱性能なども明確な数値を上げることができる。断熱性能を気にする施主に対して、これは大きな説得材料だ。だが、設計事務所がつくる住宅は1棟1棟カタチが異なり、計画段階で数値を踏まえて説明するのは難しい。だが「エネルギー評価」機能を使えばそれが可能になる。

「今はWebで簡単に情報を入手できるので建材など勉強する方も多いのですが、断熱材は難しく、私たちプロでもどれがいいと一概に言えません。内/外断熱も建物による差が大きく、研究熱心な施主さんほど悩んでしまうでしょう。しかしArchiCAD内蔵の「エネルギー評価」機能があれば、いろいろなパターンを検証し提案できます。お客様に眼で見て数字でも確認いただけるわけです」(美穂氏)。 少数精鋭による全国展開を基本とする朝倉氏らにとって、ArchiCAD を中心とするデジタルツールの活用は重要な戦略だ。その中で「エネルギー評価」機能もまた、大きな役割を果たすことになるのである。

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