あえて言おう! 建設ICT普及を阻む“7つの要因”【前編】
2019年2月26日

「建設ICTをほめて育てる」がわたくしイエイリのポリシーです。しかし、ほめるためには、ポジティブな面もネガティブな面も見る必要があります。そこで今回は、建設ICTの現状を直視し、再認識していただきたいという思いを込めて、建設ICTの普及を阻む要因をあえて提示していきたいと思います。

では、建設ICT普及を阻む「7つの要因」とは……?

1 現場の職人のレベルが高すぎる問題

博物館などで昔の木組みを見てみると、その継手はパズルのように、非常に複雑に組み合わさっています。昔の職人さんは、脳内でどうやってそのパズルを組み合わせるか、そして完成後にどう見えるかまで考えてつくっていた。それと同じようなことは、いまの日本の建設現場で働く職人さんも同様です。

彼らは2D図面であっても、脳内で3D化できてしまうので、「3Dでなくても、なんら困っていなかった」。日本の建設業は、そんな彼らのレベルの高さに依るところが大きい。

一方、海外でBIM/CIMが普及した理由として、職人のレベルが均一ではなかったことがある。たとえばシンガポールで建設現場や工場で働く人はインド人やベトナム人、ミャンマー人などのいろいろな国籍の人が混ざって働いています。

彼らはもともとのスキルがそれほど高くないため、2Dの図面を渡して「このとおりにつくってください」と指示しても、実現が難しい。だから20年以上前から、複雑で難しい部分、たとえばパイプとパイプの結合部の切り口などは3D-CADに設計させて、さらに連動して切断させるようになっている。かたや切ったものをつないだりと簡単な作業は、人間が行う。そのようにして、海外では生産性を上げてきたんですね。

また、人は変化を嫌います。そして未体験の事象を嫌う。よほどのことがない限り、人間はなかなか変化しないものなんですね。たしかに、新しい試みによってかえって能率が下がることもあるし、邪魔になることもある。手慣れた方法でやったほうが確実にできるのに、と思ってしまうことも……。かく言う私も、インターネットプロバイダひとつ取っても、より安くなったりより良くなることが分かっていても「めんどくさいからやめとこう」となる(苦笑)。

ただ職人は、「技術に対する理解力が非常に高い」という特性を持っています。たとえば競馬場整備の仕事。これは一見平らに見えるけれど、雨が降った時に備えて微妙な排水勾配をつくるなど、ものすごい職人技。職人たちは最初、ICTブルドーザーに対して「こんなのにできるわけがない」「俺たちと一緒になんてできない」とすごく懐疑的な見方をしていた。

そこでICTブルで競馬場の整備を実際に行ってみた。すると、それを見た職人が「すごい!できているじゃないか」と感動し、以来、ICTブルに対する見方がガラッと変わったとか。職人さんも決してICTを嫌っているわけではなく、それでメリットが分かったり、いい結果が出ればむしろ積極的に使うようになる。「いいものを創りたい」思いは人一倍強いですからね。

あとはICTを体験する機会の創出です。これまでは機会があまりなかったですが、国交省のi-Construction推進によって、やや半強制的にICT体験をさせられる職人さんが増えたので、結果的にICTにどんどんのめりこんでいく人が増えていくんじゃなでしょうか。

続きは、「建設の匠」のウェブサイトで。

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