トルシア形高力ボルトの施工管理をAI化! 清水建設の技術をオービタルネットがWeb提供
2024年4月12日

管理人のイエイリです。

鉄骨部材同士を接合する「トルシア形高力ボルト」は、トルクレンチでの1次締め付けの後、ボルトの端部の「ピンテール」に専用電動レンチをつないでナットだけを回し、ピンテールが破断するまで本締めを行います。

トルシア形高力ボルトの仕組み。ギザギザの付いたピンテールに電動レンチの反力を取り、ピンテールが所定のトルクで破断するまでナットだけを回す(資料:高力ボルト協会「トルシア形高力ボルト使用の手引」より)

トルシア形高力ボルトの仕組み。ギザギザの付いたピンテールに電動レンチの反力を取り、ピンテールが所定のトルクで破断するまでナットだけを回す(資料:高力ボルト協会「トルシア形高力ボルト使用の手引」より)

その施工管理は大変な手間ひまがかかります。1次締め付け後に専用ペンでボルトやナット、座金、鋼板にマーキングを行い、本締め後にマーキングのズレを見て、全ナットの回転角を計測・集計し、回転角の平均値を算定。合否判定を行うのです。

1カ所の接合部で多い時には数十本もあるボルトに対して、これら一連の作業を作業員の目測と手計算で行うので、時間がかかり、現場作業員には大きな負担になっていました。

そこで、オービタルネット(本社:名古屋市中区)は、ビル建設現場向けに、トルシア形高力ボルトの締め付け検査を自動化する「鉄骨高力ボルト締付け自動検査サービス」の提供を2024年4月8日に開始しました。

「鉄骨高力ボルト締付け自動検査サービス」の画面(以下の写真、資料:オービタルネット)

「鉄骨高力ボルト締付け自動検査サービス」の画面(以下の写真、資料:オービタルネット)

本締めが終わった接合部をスマートフォンやタブレットのカメラで撮影するだけで、

ナ、ナ、ナ、ナント、

AIが締め付け角の測定

と平均値の計算、ボルト全体の合否判定を行い、瞬時に結果を受け取れるのです。(オービタルネットのプレスリリースはこちら

本締めが終わった接合部(左)をスマホで撮影すると、AIが締め付け角の測定と平均値の計算、ボルト全体の合否判定を行う(右)

本締めが終わった接合部(左)をスマホで撮影すると、AIが締め付け角の測定と平均値の計算、ボルト全体の合否判定を行う(右)

AIによる締め付け角の測定

AIによる締め付け角の測定

締め付け部のボルト群を撮影すると、中心以外は傾いた状態の画像になり、そのままでは正確な締め付け角がわかりません。

そこで、AI(人工知能)によって取り付け面、ナット上部、ボルト上部のズレを補正する「射影変換」によって自動補正し、締め付け角を測定します。

画像の処理はGPUを搭載したクラウドサーバー上で行います。

傾いたボルトやナットの画像からAIと射影変換で締め付け角を測定する仕組み

傾いたボルトやナットの画像からAIと射影変換で締め付け角を測定する仕組み

「鉄骨高力ボルト締付け自動検査サービス」の利用イメージ。これまで目測や手計算で行っていた作業を完全自動化できる

「鉄骨高力ボルト締付け自動検査サービス」の利用イメージ。これまで目測や手計算で行っていた作業を完全自動化できる

このサービスは、清水建設が保有する特許をオービタルネットが実施許諾契約のもと、AI技術によって実装・実現したもので、Webアプリとして提供されます。

2024年6月末までは、

期間限定で無償提供

し、入出力画面や操作性の改良、学習モデルの強化を行った後、同年8月をメドに有償サービスとして提供を開始する予定です。

高力ボルトによる接合は、高所作業が多いので、スマホやタブレットで瞬時にチェックできるようになると生産性向上や働き方改革とともに、作業の安全性も高まりそうですね。

トルシア形高力ボルトを扱う方は、一度、試してみてはいかがでしょうか。

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