管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を使って48時間で課題の建物を設計する仮想コンペ「Build Live Tokyo」の原型となったのが、「BIMStorm」という国際コンペです。
その創始者であるキモン・オーヌマ氏(Kimon Onuma)がこのほど来日しました。オーヌマ氏は来年、アメリカ建築家協会(AIA)でBIMの活用を推進する「TAP」という委員会の議長を務めることが決まっています。
そこで、日米でコラボレーションできるプロジェクトについて意見を聞きたいというので、オーヌマ氏と話しました。
その結果、出てきた案は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMでTPPを商機に変える
研究を日米共同で行ってはどうかという大胆なものだったのです。
来日したキモン・オーヌマ氏。JR上野駅の「翼の像」前で(写真:家入龍太) |
TPPとはもちろん、今、話題の環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership )のことです。日本では、農業分野をはじめ、建設業界の一部でも強い反対論が出ています。
日本はこのところ、東日本大震災の復興工事のために建設投資が増える傾向にあります。しかし、5~10年たって復興が一段落すると、また国内建設市場は縮小の道をたどることになります。
その間に建設業の新しい成長戦略を確立しないと、日本の建設業に未来はなくなると言っても過言ではありません。建設業の海外進出は、その大きな柱です。
WikipediaによるとTPPの加盟・交渉国に日本を加えた10カ国の国内総生産をみると、91%を日本とアメリカの2カ国が占めるそうですので、まずは日米の建設業界でお互いにどんな市場拡大の可能性があるかについてシミュレーションしてみるのも有意義なことです。
オーヌマ氏の提案はさらに具体的です。日米で
BIMStormを相互開催
し、日本の参加者はアメリカの敷地に建物を設計し、アメリカの参加者は日本の敷地に建物を設計し、それぞれ他国からの投票で評価する、というものです。
BIMStromのウェブサイト(資料:BIMStorm) |
その結果、お互いに他国の建物ユーザーからの評価が得られることになります。日本では当たり前と思われていたものが、アメリカでは新しいものとして高く評価されたり、逆に日本ではなかったユニークなデザインの建物がアメリカから入ってきたりと、相互の建設市場を広げる可能性もあります。
海外との取引には語学力も必要となるので、日本の建設業にとっては大変なことと思われがちです。しかし、BIMという“万国共通語”を使うことにより、言葉のハンディをカバーして日本の技術力やおもてなしの心を売り込んでいくこともできるのではないでしょうか。
TPPは日本にとって不利なことばかりと言われがちですが、この“外圧”を利用することにより、これまではなんとなく先送りにしてきた海外進出について真剣に検討したり、取り組んだりすることで、海外でも利益が出せる建設業に変身させる前向きな考えがあっても、いいのではないでしょうか。
オーヌマ氏がAIAのTAP委員会でどのような取り組みをするのかが、今後の動向が注目されますね。