管理人のイエイリです。
建設業の生産性を高めるため、政府主導でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入を進めるシンガポールでは、2015年に建築確認申請でのBIM使用が義務づけられます。
設計でBIMが必須となると、次に来るのは施工段階のBIM化です。建設会社には設計事務所やコンサルタントからこれまでの図面でなく、BIMモデルが送られてくることになります。
そのため、2015年以降はシンガポールの建設会社もBIMモデルデータを受け取り、施工に生かすことが求められてくるのです。
一体、建設会社はどんな準備をしているのだろうかと、昨日(10/9)、まず向かったのは五洋建設のシンガポール事務所です。同社は、昨日の記事でご紹介したマリーナ・ベイ・サンズのアートサイエンス・ミュージアムの建設を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
元請として工事を受注
したのでした。
マリーナ・ベイ・サンズのプロジェクトはCM(コンストラクション・マネジメント)方式により、発注者と専門工事会社が直接契約するものが多かったのですが、元請として受注したのは他にホテル本体だけとのことです。
複雑な曲面で構成されたアートサイエンス・ミュージアム(左)。五洋建設がシンガポールで手がけたプロジェクト。建築物はランドマーク的な作品が多いのが特徴です(右) |
複雑な曲面で構成されるミュージアムの屋根や外壁は、鉄骨のほか断熱材のロックウールやセメントボード、防水シート、その上にアルミ屋根やグラスファイバーの外壁を順次、重ねて作られています。
五洋建設では、TeklaStructuresとRevitで作られた3Dモデルを合成するため、自動車などの設計で使われる「HICAD」を使って設計を進めました。といっても、自社でこれらのソフトを使えるスタッフはいなかったので、インドの会社と契約してHICAD、TeklaStructures、Revitのオペレーターを派遣してもらったり、社内スタッフをトレーニングしたりしてBIMモデルを使っての施工をやり遂げたそうです。
複雑な曲面だけに足場を建てる方法がありません。そこでロッククライミングのようにロープにぶら下がってビルの窓ふきをする作業員を職人として訓練し、足場なしで施工するという荒技まで生み出したそうです。機動力がすばらしいですね。
五洋建設シンガポール事務所では、2015年に向けて、どんなBIMソフトを導入するのかを検討しているそうです。
五洋建設シンガポール事務所の伊原成章所長(左写真左側)と中川裕一郎氏(同右側)。事務所があるグレート・ワールドシティのオフィス棟ビル(右)(写真:特記以外は家入龍太) |
次に向かったのが、地元のゼネコン、スイーホン(SWEE HONG)社です。同社はBIMソフト、Allplanを使って建物や土木構造物の設計や施工シミュレーションを積極的に行っています。
マリーナ・ベイ・サンズのすぐ隣にある公園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(Gardens by the Bay)の施工を手がけています。この公園は一部完成済みで2020年まで順次、拡張工事が行われて、最終的には55ヘクタールの巨大な公園になるそうです。
スイーホン社はこの工事で土木構造物や埋設管などをAllplanでBIMモデル化し、施工をスムーズに行うのに役立てていました。
マリーナ・ベイ・サンズの隣で進むガーデンズ・バイ・ザ・ベイの工事 |
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スイーホン社の施工スタッフ(左)とどこでもパソコンやiPadなどを持ち歩き、軽快に作業を行う社員 | |
土木工事用にAllplanで作成したBIMモデル(2点の資料:SWEE HONG) |
スイーホン社はシンガポールの建設局「BCA」から、IT活用の優秀さに対して何度も表彰されているそうです。
さぞかし、BIM活用歴は長いのかと思いきや、
ナ、ナ、ナ、ナント、
2年前からBIMに取り組み
始めたそうです。
短い期間にもかかわらず、これだけの活用ができるのは、やればできるということを実証しているかのようでした。
日本でも「CIM」こと、土木のBIMがこれから急速に導入されることが予想されますが、スイーホン社の例は勇気づけられますね。