管理人のイエイリです。
クルマの中で人間が「熱い」「寒い」と感じる温熱快適性を高めるために、これまではカーエアコンによる冷房や、エンジンの排気熱による暖房が頼りでした。
しかし、最近はエンジンの高効率化が進み排熱量が減ったり、電気自動車(EV)では航続距離を伸ばすためにカーエアコンへの電力を減らしたりと、車内空調のエネルギー削減が求められています。
そこで東京都市大学、東京大学生産技術研究所、自動車技術会による研究チームは、快適で省エネなカーエアコンを実現するために、車内温度予測手法を開発しました。
車内の気温だけでなく、エアコンによる気流や日射や天井からの放射熱も考慮し、車内の快適性を
ナ、ナ、ナ、ナント、
「等価温度」で評価
するという、建築っぽい手法を使っているのです。
等価温度とは、空気の温度、気流速度、周囲の壁からの放射温度という3要素を考慮した温度で、建物内部の快適性の指標として使われています。
例えば、「気温が28℃で扇風機を使ったとき」に「気温23℃で扇風機を使わないとき」と同じ快適さを感じた場合、「等価温度は23℃」ということになります。
建築設計では、こうした設計を行う場合、放射熱を考慮したコンピューターによる熱流体解析(CFD)を行って建物内部の等価温度を求めますが、計算に数日かかることもあります。
一方、クルマの場合は日射の向きなどが時々刻々と変わるため、あらゆる条件を網羅したCFD解析を行うのは難しいという事情があります。
そこで、エアコンの吹き出し温度や風量、日射量、外気温などの影響を「温熱環境形成寄与率(CRI)」という指標に分解し、事前に行っておいたCFD解析の結果に
足し合わせる
ことで、簡単に車内の温度を求められるようにしたのです。
この研究によって、カーエアコンの吹き出し口の配置や制御方法を改善することが期待でき、最小のエネルギーで最大の効果を発揮させることが期待できます。
この研究は、東京都市大学工学部機械システム工学科の永野秀明講師と修士1年の田ノ上康弘さん、東京大学生産技術研究所の加藤信介教授、そして自動車技術会
車室内環境技術部門委員会が共同で行いました。
人間が活動する場所の快適性を“建築っぽい手法”で評価、改善していく余地は、クルマの中にとどまらず、まだまだ多く残されているように思います。建築設計者も建物以外の快適性追求に活躍の場を広げてみてはいかがでしょうか。