打音検査をAI化!産総研がインフラの異常部分マップを自動作成
2017年6月2日

管理人のイエイリです。

コンクリート構造物などの異常を発見する手段として、点検ハンマーで構造物の表面をたたき、その音で亀裂や浮きなどを発見する「打音検査」は有効な手段です。

しかし、異常音を聞き分けるにはベテランの経験と感覚が必要で、その種類や場所を正確に記録し、後で活用するためには大変な労力が必要でした。

そこで産業技術総合研究所(以下、産総研)人工知能研究センターは、首都高技術、東日本高速道路東北支社、テクニーとともに、インフラ構造物の打音検査結果を、「異常度マップ」として自動作成するシステムを開発しました。

インフラ構造物の打音検査をした範囲(上)と、自動作成された「異常度マップ」(下)(以下の写真、資料:産業技術総合研究所)

インフラ構造物の打音検査をした範囲(上)と、自動作成された「異常度マップ」(下)(以下の写真、資料:産業技術総合研究所)

ベテランの経験と感覚に依存してきた異常音の聞き分けには、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

AIによる機械学習

 

を活用しているのです。

開発した計測ユニットの外観

開発した計測ユニットの外観

異常を通知する携帯デバイス

異常を通知する携帯デバイス

この「AI打検システム」は音響センサーや測域センサーを搭載した計測ユニットと、AIを搭載したタブレット端末、そして異常を通知する携帯デバイスから構成されています。

点検ハンマーで構造物の表面をたたくと、その音から異常の有無を自動的に判定するとともに、たたいた位置情報を取得します。

計測ユニットから半径4m程度以内の打撃を検知することができます。

打音検査での使用シーン

打音検査での使用シーン

点検ハンマーの打音と打撃位置を検知するイメージ

点検ハンマーの打音と打撃位置を検知するイメージ

黄色の各点がハンマーでたたいた場所の位置。計測ユニットの設置位置が中央の原点になっている

黄色の各点がハンマーでたたいた場所の位置。計測ユニットの設置位置が中央の原点になっている

使用に当たっては、最初に正常な部分を10秒ほど打撃してシステムに入力し、「正常な打音モデル」を構築します。

その後、検査モードに移行して現場で打音を検知し、正常な打音モデルから逸脱したときは異常音として検出します。検査中も正常な打音モデルは機械学習によって更新されていきます。

異音が検知されるとすぐ、点検者が持つ携帯デバイスにLEDの点灯とブザー音で通知されるので、

 

その周辺を密に打撃

 

することで、異常を見落としなく検査することができます。

移動しながら検査を行う場合は、検査ユニットの再設置作業が必要になりますが、簡単に位置合わせを行える機構を備えているので1分程度で再設置できます。

産総研では今後、現場での実証試験を重ねて完成度を高め、2017年度中に製品開発体制を構築していくとのことです。そして検査対象もRC床版を桁下から検査できる治具も開発し、検査対象を広げていきます。

このシステムは、一瞬で音が消える打音検査の結果を、わかりやすく見える化して記録できるのが強みです。デジタルデータ化された結果は、現場の写真やBIM/CIMモデルなどと重ね合わせて表示すると、打音検査のIoT化などにも活用できそうですね。

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