長周期地震動の恐怖を体感!日建設計が地震体感VRシステムを開発
2018年11月30日

管理人のイエイリです。

ビルを建てるとき、一般的な耐震設計にするか、それとも揺れを軽減できる免震構造や制震構造にするかは、コストと効果によって悩むことでしょう。

「耐震構造を制震構造にすると、揺れはこれだけ減ります」と言って、下のような加速度波形のグラフを見せられても、地震波形から実際の地震時の室内の状態を想像するのはかなり難しいのではないでしょうか。

超高層ビルを耐震構造(左)にしたときと、制震構造(右)にしたときの上階での揺れの違い(以下の資料、写真:特記以外は日建設計)

超高層ビルを耐震構造(左)にしたときと、制震構造(右)にしたときの上階での揺れの違い(以下の資料、写真:特記以外は日建設計)

そこで日建設計は、誰でもリアルに地震時のオフィスを体感できる「仮想地震心理評価システム」を開発しました。

地震が起こったときのビル内の様子を

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

360度VRと地震ザブトン

 

で超リアルに体験できるものなのです。

地震を体験する人はVRゴーグルをかけ、「地震ザブトン」に座ってシートベルトを着用する(写真:家入龍太)

地震を体験する人はVRゴーグルをかけ、「地震ザブトン」に座ってシートベルトを着用する(写真:家入龍太)

日建設計本社に設けられた体験コーナー(写真:家入龍太)

日建設計本社に設けられた体験コーナー(写真:家入龍太)

地震ザブトンとは、地震観測機器メーカーの白山工業(本社:東京都府中市)が開発した可搬式の地震動シミュレーターです。

自走する台車の上にいすが載った構造で、地震波形に合わせて前後左右に急加速、急減速できるようになっています。そのため、変位の大きな長周期地震動もリアルに再現できるようになっています。


イエイリも地震ザブトンとVRで長周期地震動を体験してみた。40秒以降の変位の大きさに注目(撮影:日建設計)

そして、VRゴーグルで見る映像は、パソコンやモニター、家具などが並ぶ日建設計の一般的なオフィスを再現した3Dモデルに、物理法則を再現する「Unreal Engine」というソフトによって解析し、揺れに応じていすが動き回ったり、パソコンや家具が倒れたりする様子を再現しています。

地震ザブトンから振り落とされそうな激しい揺れを感じながら、VRで周囲のパソコンや家具が倒れていく様子を見ると、地震時のオフィスがどうなるのかがよく理解できます。

そして、耐震構造と免震構造、制震構造の効果の違いもよくわかるので、その効果を体験してからどの設計方法を採用するのかを決めることができます。

耐震構造(左)はパソコンやモニターがひっくり返るほどの揺れだが、免震構造(右)にすると室内の被害はかなり抑えられることが体感できる

耐震構造(左)はパソコンやモニターがひっくり返るほどの揺れだが、免震構造(右)にすると室内の被害はかなり抑えられることが体感できる

地震ザブトンの本体は重さ93kgで、AC100V電源(1500W)で動作するので、相手先の会議室に“出前”してプレゼンテーションすることも可能です。

きっと、これで地震体験すると、少しコストが高くなっても、免震構造や制震構造を選ぶ施主が多くなるのではないでしょうか。

しかし、日建設計のシステムはこれだけではありません。被験者の指に発汗量計を取り付けて

 

地震の不安感を定量化

 

して比較できるのです。

被験者の指に取り付けた発汗量計で地震時の不安感を測定する

被験者の指に取り付けた発汗量計で地震時の不安感を測定する

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日建設計では、VR、地震動再現装置、不安感計測装置を組み合わせたシステムによって、「耐震性能のコミュニケーションツール」としてビジネス展開していく計画です。

仮想地震心理評価システムの全体像

仮想地震心理評価システムの全体像

システムの開発に関わった日建設計エンジニアリング部門構造設計グループ構造設計部主管の福島孝志氏。にこやかに取材に応じてくれました(写真:家入龍太)

システムの開発に関わった日建設計エンジニアリング部門構造設計グループ構造設計部主管の福島孝志氏。にこやかに取材に応じてくれました(写真:家入龍太)

この地震体験VRは、2018年11月5日から12月7日までの9時10分~17時まで、日建設計東京ビル1階ギャラリー(東京都千代田区飯田橋2-18-3)で体験できます。

非常に人気があり、多い日には約50人が体験に訪れることがあるそうです。興味のある方は実物を見てみてはいかがでしょうか。

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