CADの代名詞的な存在でもあるAutoCAD。2014年3月に販売開始となった最新版「AutoCAD 2015」は従来から何がどう変わったのか。そして最新AutoCADを活用するにはどのようなハードウェアを選んだらよいか、ベンチマーク結果から導いた最適構成を考えた。
新しくなった最新版「AutoCAD 2015」
AutoCADはCADに関わる人で知らない人はいないほど有名なCADソフト、年々熟成が進み、最新となる“2015”では、ユーザーインターフェースの改善など操作性の向上を図っているほか、ソフトウェアの内部も大きく変わっている。以前からもすでに対応していたが、マルチコアCPUへの対応がより進化・最適化されたこと。それによってマルチコアが当たり前となった最近のコンピュータで使うことで、より高速動作が期待できる。
同時にGPUを使った処理についても大きく改善され、最新かつ高性能のGPUを使うことで、処理や描画が高速になっている。グラフィックの利用状態は従来よりもわかりやすく表示され、万一、グラフィック周りで異常が発生した場合は、グラフィックボードの機能を制限して問題の切り分けがしやすくなっているなど、細かな改善点は多岐にわたる。
結果、最新バージョンではコア数の多いCPUや最新グラフィックスボードを搭載した超高性能パソコン＝ワークステーションを使うことで、新しくなったソフトウェアとの相乗効果を生み出し、より高いパフォーマンスを発揮する。
今回はAutodeskユーザーグループ「AUGIjp」の協力のもと、最新エントリーワークステーションのThinkStaton P300でベンチマークテストを行った。特に作業に影響を与えるストレージやグラフィックボードを中心に行い、AutoCADに最適なスペックを検討してみた。
ストレージはコストパフォーマンスでSSHDに注目
まず、ストレージの性能を見てみたい。AutoCADの場合、一定時間ごとに自動保存する機能があるが、ストレージの速度が作業上のストレスの有無に大きく関わっている。試したのは500GB HDD、1GB SSHD、256GB SSDの3種類。SSHDとは基本的な保存はHDDだがSSDの大きなキャシュを持っており、キャッシュの範囲なら高速に読み書きができるというHDDの容量や価格メリットとSSDの高速性を合わせもったものとなる。
読み書きの速度を見れば、SSDがシーケンシャルでは500MB/秒の読み書き速度を記録し、ランダムアクセスではHDDを寄せ付けないほどの高速さで他を圧倒していることに間違いないが、SSHDの書き込み速度にも注目。シーケンシャルアクセスではHDDの倍、小さめのデータのランダムアクセスでもHDDよりも高速となっている。
ThinkStation P300で搭載可能なストレージ。
左からHDD、SSHD、SSDとなる
また、HDDよりもSSHDがディスクアクセスも全体的にムラがなく高速。これはHDDの書き込みの際のヘッドの物理的な移動による速度のムラを、内蔵のSSDがうまくカバーしていることが想像できる。
実際にSSHDを搭載して使用した場合の第一の効果は書き込みが早くなることで、前述の自動保存がかかった際の操作性の落ち込みが少なくなる。今までのHDDでは書き込み動作があった際は、一瞬、動作が詰まる瞬間があり、作業を長時間に渡って行えば行うほど書き込みによる動作詰まりに遭遇する回数が多くなりストレスとなるからだ。
以上のことから、導入予算が潤沢にあればストレージをSSDにすることで最高の性能が得られるが、限られた予算の中で書き込み速度もデータの保存容量も両立させるとなると、SSHDのメリットが見えてくる。
なお、SSDをキャッシュに使う方法は、HDDとは別に小容量のSSDを別途用意してキャッシュ付きのストレージとして使う方法もある。この方法でも同様に書き込み速度が高速化し、作業のストレスも軽減してくれるが、ひとつだけ問題がある。キャッシュとディスクが別々のパーツとなっているため仲を取り持つ制御ソフトウェアの状態によっては不具合が発生する可能性があること。その点、SSHDはキャッシュとディスクは一体のハードウェアとなっており、外部の制御ソフトを介在させずに読み書きができる。データの安全性という点でも優位性がある。
