コラム「BIMによってうまれるもの」公開

2019年3月5日

BIMで建築が夢をみる

#56 BIMによってうまれるもの

前回に引き続き、2月19日のBIMの日に開催されたシンポジウム「BIMによってなくなるもの・うまれるもの」からBIMによってうまれるものついて考察してみます。

新しい建築技術者像とは?

既存の産業としての建築業にICTを入れて掻き混ぜると、新しい事業ドメインになると執筆し続けてきました。シンポジウムでも、コンピュテーショナルデサイン、AIとの関連で近似するような発言もありました。一方で、建築物は多くの場合、一品生産ですから、その建築物を、そのつどBIMなどを用いてデジタル化するのは無駄だとも考えられています。それなのに、何故、今、BIMなのでしょうか。その設問を解くと、BIMによってうまれるものがおぼろげながら見えてきます。

BIMによるデジタル化は、建築業の業務自体の生産性向上や品質確保に寄与するのは自明となりつつあります。また、そのようにデジタル化された建築物のデータは、施主、建築主、発注者にとってこそ、重要なのだとの考えが一般的になりつつあります。竣工後、可動し始めた建築物のFM(施設管理)やリノベーションに、建築物のデータがあれば有利だからです。建築の発注者である社会のさまざまな産業組織の方も急速にデジタル化する中で、建築物に求められるニーズもデジタル化との関連で考えざるを得なくなっています。

そのような流れの中で、社会のデジタル化との関連も充分に視野に入れつつ、BIMなどのデジタルツールを自在に用いて建築生産に寄与する「新しい技術者」ともいえる人たちが生まれて始めています。

既存建築物のデジタル化が一大産業になるかも

少子高齢化が急速に進み、人口減少が現実のものとなる中で、象徴的にいえば、これまでのように建築物は建てられなくなるかもしれません。一方で、そのような状況下、既存建築物の維持管理やリノベーションによる不動産市場での流動化に注目が集まっています。施主、建築主、発注者の中には、それらの変化に気づき始めているケースも散見されます。

日刊建設工業新聞紙上で、日本一の大家さんともいえる日本郵政グループのBIM運用の特集を執筆したことがあります。その際にも、明らかとしたのですが、日本郵政グループでは、新築の建築物でのBIM運用と合わせて既存建物のBIMによるデジタル化を明確に視野に入れていました。

千葉県のある設計事務所に、既存建築物のデジタル化の見積もり依頼が寄せられました。その際には、見積もりは不調になりましたが、その設計事務所では、既存建築物のデジタル化のニーズが潜在しているのではと考え、千葉県内で、BIMでデジタル化できる(しそうな)既存建築物への市場調査を行っています。新築を凌駕するニーズがあると判明したとのことでした。

BIMによってうまれるもの。その現実的な回答の一つは、BIMによる既存建築物のデジタル化とも考えられます。その際には、当然のように、新築でのBIM運用で培ったノウハウが生かされます。そのような視点からBIM運用を捉えるのも必須となるでしょう。

日刊建設工業新聞「日本郵政グループ」関連特集号紙面から

詳しくは、GLOOBEのウェブサイトで。