管理人のイエイリです。
シンガポールでは2015年から、床面積5000m2を超える建物は建築確認申請で意匠、構造、設備のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のモデルデータが義務づけられています。
そして今では、BIMを使った設計・施工プロセス「VDC(バーチャル・デザイン&コンストラクション)」の考え方が根付き、施工段階でもBIMが幅広く使われるようになりました。
これだけではありません。シンガポールでBIM普及をけん引してきたシンガポール建築建設庁(以下、BCA)は、工場でのプレハブ化もBIMのワークフローに取り入れ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
IDDという新戦略
を掲げ、さらなる生産性向上を目指しているのです。(2017年10月24日にBCAが発表した英文プレスリリースはこちら)
IDDとは、インテグレーテッド・デジタル・デリバリー(Integrated Digital Delivery)の略で、その中には「デジタルによる設計」、「デジタルによる資産、工程管理」、「デジタルによるプレハブ化」、「デジタルによる建設」の4要素が入っています。
従来のVDCに、「デジタルによるプレハブ化」、つまり工場製作のプロセスをBIMのワークフローに組み込み、クラウドでリアルタイムに連携させる点が、IDDの特徴と言えるでしょう。
そのシナリオでは、最新の自動化技術がふんだんに組み込まれています。
例えば、設計ではパラメトリックデザインやAR(拡張現実)などの活用、工場製作ではロボットやセンサー、ジャスト・イン・タイムの工程管理、施工ではドローンや現場でのBIM活用、そして維持管理ではモバイル端末やスマートFMを活用し、データを連携させるイメージです。
ホテルや寮などの部屋を丸ごと工場製作し、現場で積み上げて高層ビルなどを建設するモジュラーコンストラクション的な手法である「PPVC(Pre-fabricated
Pre- finished Volumetric Modular Construction)」を積極的に導入してきたシンガポールらしい構想ですね。
IDDの実現に向けての動きはスピーディーです。BCAの資料によると、2018年度にはデジタルによる設計と施工のプラットフォームを整備し、19年度にはデジタルによるプレハブ化と資産・工程管理のプラットフォームを整備するとのことです。
これと並行して
パイロットプロジェクト
も18年度に5~8件、19年度に10~15件、20年度に25~30件のペースで行っていくようです。
そして、2025年までに建設業全体の生産性を25~35%向上させるという目標もあります。最新技術を積極的に取り込むシンガポールのIDDから、しばらく目が離せそうにありませんね。