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大手ゼネコン5社がDWG互換CADの実用性を語る
前田建設工業の土木部門はJDrafを導入(ジェイドラフ)

2015年3月10日

2月12日、東京・秋葉原で開催された「これからの2次元CADを考えるセミナー」では、大手ゼネコン5社の実務者が、DWG互換CADの性能や評価について経験を基に語った。また前田建設工業の土木技術者は、(株)ジェイドラフの「JDraf」の導入結果を報告した。その結果、ここ数年、DWG互換CADの性能や品質は急速に向上し、実務での使用に耐えるものになっていることが明らかになった。

●パネルディスカッションに登壇した大手ゼネコン5社の設計者

大林組 設計本部 設計ソリューション部 BIM推進課 課長 一居 康夫 氏

大林組
設計本部 設計ソリューション部 BIM推進課
課長 一居 康夫 氏

鹿島建設 建築設計本部 企画管理統括グループ 企画グループ チーフ 玉井 洋 氏

鹿島建設
建築設計本部 企画管理統括グループ 企画グループ
チーフ 玉井 洋 氏

清水建設 生産技術本部 生産計画技術部 BIM推進グループ 主査 三戸 景資 氏

清水建設
生産技術本部 生産計画技術部 BIM推進グループ
主査 三戸 景資 氏

大成建設建築本部 技術部 技術計画室チームリーダー 友近 利昭氏

大成建設
建築本部 技術部 技術計画室
チームリーダー 友近 利昭氏

竹中工務店 設計本部 設計企画部 部長ICT担当 能勢 浩三 氏

竹中工務店
設計本部 設計企画部
部長ICT担当 能勢 浩三 氏

   BIM/CIM推進で注目されるDWG互換CADの活用

ここ数年、日本の建設業界では3次元モデルを使って建物を設計するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や、「土木のBIM」とも言われるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が急速に普及してきた。

従来の2次元CADに比べてずっと高価なソフトやハードを必要とするBIMやCIMに対する投資が本格化するなか、2次元CADソフトの運用コストをどう削減するかが各社の課題になりつつある。

そこで浮上してきたのが、従来、建設業界で広く使われてきたAutoCADの図面ファイルを読み書きでき、しかも安価なDWG互換CADの導入だ。

DWG互換CADの一種である「JDraf」の画面

DWG互換CADの一種である「JDraf」の画面

しかし本当に実務で使えるのか―――。いざ導入するとなると心配は多い。例えば、DWGファイルの互換性や図面化けなどの有無、大きなファイルを扱うときの安定性や操作性、教育訓練の必要性、そして実際に実務に耐えるのかどうかといった疑問だ。

こうした問題は、CADソフトのスペックやカタログなどの情報だけでは、なかなか解決できない。そこで「これからの2次元CADを考えるセミナー」では、スーパーゼネコン5社の実務者が、自社でのDWG互換CADの活用や評価についての実体験を率直に語り合った。

DWG互換CADの導入、評価の実体験を語り合うスーパーゼネコン5社の実務者。左端はコーディネーターの建設ITジャーナリスト、家入龍太氏

DWG互換CADの導入、評価の実体験を語り合うスーパーゼネコン5社の実務者。左端はコーディネーターの建設ITジャーナリスト、家入龍太氏

   鹿島建設、大林組、大成建設は既にDWG互換CADを導入済み

鹿島建設 建築設計本部 企画管理統括グループ 企画グループ チーフの玉井洋氏は「当社の建築部門では2012年から順次、AutoCADからDWG互換CADの『BricsCAD』に切り替えていった。現在では、建築部門全員がBricsCADを使っている」と、衝撃的な報告を行った。「AutoCADは全く使っていないが、実務は支障なく行えている。土木部門でもDWG互換CADに移行するための検討を行っている」(同)。

また、大林組 設計本部 設計ソリューション部 BIM推進課課長の一居康夫氏は、「2010年にBIM推進室ができて以来、BIMの活用を進めている。限られた予算の中でIT投資を行うために設計部門では、無料のDWG互換CAD『DraftSight』を利用している」と言う。

DWG互換CADの導入について語る大林組の一居康夫氏(左)

DWG互換CADの導入について語る大林組の一居康夫氏(左)

大成建設建築本部 技術部 技術計画室 チームリーダーの友近利昭氏は「AutoCADは、社内のパソコン約数千台に導入しており、プラグインソフトを利用することで作図の効率化を図ってきたが、ライセンスが足りなくなった。社員の中には図面はほとんど描かないが、編集は少しだけ行うといったライトユーザーはかなり多い。そこでDWG互換CAD『JDraf』を導入した」と語る。

   竹中工務店、清水建設もDWG互換CADに手応え

竹中工務店 設計本部 設計企画部部長でICT担当の能勢浩三氏は「当社は2次元CADのコストダウンのために、2年前からDWG互換CADの導入を検討し、昨年、JDraf、BricsCAD、IJCADをテストした。操作性やDWGファイルの互換性も実用上、問題ないと感じた」と語る。

同社ではまだDWG互換CADの導入は行っていないが、将来、可能性はあるという。

DWG互換CADを評価した竹中工務店の能勢浩三氏

DWG互換CADを評価した竹中工務店の能勢浩三氏

また、清水建設 生産技術本部 生産計画技術部 BIM推進グループ主査の三戸景資氏は「去年からBIM推進の原資確保を含めたIT関係投資を見直すため、2次元CADのコスト見直しを行っている。その一環として、JDraf、IJCAD、BricsCAD、DraftSightをテストした結果、実務でも十分使えるという手応えを感じた。中にはAutoCADよりも軽快に動作するソフトもあった。現在、トータルコストを試算中だ」と説明する。

   共同開発のDWG読み書き機能を搭載

DWGファイルの入出力機能を持つCADソフトは数多くあるが、今回のセミナーに登壇したスーパーゼネコン各社が導入、または検証したDWG互換CADソフトはいずれも「オープン・デザイン・アライアンス(Open Design Alliance)」(以下、ODA)と呼ばれる非営利団体が開発を続けるDWGの読み書き用ライブラリー「Teigha」を搭載している。

ODAのメンバー企業が共同開発しているライブラリーなので、ベンダーごとにDWG互換機能を独自開発するよりも効率的で高性能なものが作れる。JDrafやIJCAD、BricsCAD、DraftSightなどのDWG互換CADもこのライブラリーを搭載している。そのため、どのCADもDWGファイルとの互換性については、ほぼ同レベルの性能を持っているのだ。そして価格的にはAutoCAD LTの数分の1~半額程度と、かなりリーズナブルだ。

●Open Design Allianceのメンバーと関連CADソフトの例
IMSI/Design (TurboCADなど)Graebert GmbH (JDraf、DraftSight、CorelCADなど)

ZWSOFT (ZWCADなど)

ESRI  (ArcGISなど)

IntelliCAD Technology Consortium (IntellCAD、IJCADなど)

Bricsys  (BricsCADなど)

   実務で使えるレベルまで性能が向上

DWGファイルとの互換性がほぼ同じとなると、あとはユーザー企業が何を求めるかで、選択するCADが決まることになる。

「検討をはじめた2010年版のDWGファイルを社内標準とし、2011年に図面がきちんと印刷できるかどうかを基準にBricsCADを選んだ」(鹿島建設の玉井氏)という声もあった。逆に「BIMソフトへの移行を促すため、あえて、AutoCADほど使い勝手が良くなく、補助的にという意味合いもふくめ無料のDraftSightを選んだ」(大林組の一居氏)という意見もある。

「JDrafは独自の日本語フォントを持ちながらもAutoCADと同じように表示されるほか、カスタマイズも同様にできる。また、当社は海外に作図子会社があるため、海外でもCADを使う。高価なライセンスを買わなくても、インターネットライセンスで海外でも使える点も便利だ」(大成建設の友近氏)という。

会場は約170人の参加者で立ち見も出るほど。熱心にメモを取る姿も目立った

会場は約170人の参加者で立ち見も出るほど。熱心にメモを取る姿も目立った

かつて建設業界では、DWG互換CADは安いが性能面や実務での活用は厳しいという声も聞かれたが、スーパーゼネコン5社での実務での活用実績を聞くと、現在のDWG互換CADソフトの性能は格段に向上し、十分、実務で使えるレベルに達していると言えそうだ。

   JDrafを選んだ前田建設工業の土木部門

前田建設工業 土木事業本部 営業推進部 営業推進第2グループ マネージャー 長友 卓 氏

前田建設工業
土木事業本部 営業推進部 営業推進第2グループ
マネージャー 長友 卓 氏

続いて前田建設工業 土木事業本部 営業推進部 営業推進第2グループマネージャーの長友卓氏が「システム運用コスト削減の成功の鍵! 2次元CAD導入によるシステムコストの削減」と題して講演した。

講演の冒頭、長友氏は「当社の建築部門は以前からBIMを活用しているが、土木部門にも3次元化の波が押し寄せている。国土交通省が推進するCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)への対応や情報化施工、そして入札時の技術提案や住民説明会での説明資料に、CIMや3次元ソフトは欠かせなくなりつつある」と説明した。

そこで同社の土木部門では2000年代半ばからすべてのCADを「Civil3D」に入れ替え、ネットワークライセンスで運用していた。しかし、CADユーザーの数は年々増え、そのたびにライセンスを買い足したためCADの運用にかかる経費も増加の一途をたどった。「このままでいいのかということで、ソフト、ハードを含めてCADコストの見直しを始めた」と長友氏は振り返る。

運用コストが増えた要因は、業務の目的と使用するソフトが合っていないこと、必要ライセンス数の増加、そしてライセンス維持のために毎年払う「サブスクリプション」の費用が高額になってきたことだ。

また、リースのパソコンが5年サイクルで変わるのに対し、AutoCADは3年サイクルで新しくなる。パソコンの性能がソフトに追いつかなくなるという問題もあった。そして今後は64ビット版しかサポートされなくなるが社内では32ビット版のWindows7のパソコンが多数稼働しているためバージョンアップができない

「社内でのCAD利用実態を調査したところ、3次元機能を使っているユーザーはわずか1割しかいなかった。残りは印刷だけや、ちょっとした修正を行うユーザーで、2次元CADで十分ということになった」と長友氏は説明する。

増大するBIM/CIMコストに2次元機能しか使わないユーザーのライセンスをDWG互換CADに切り替えて対応するイメージ

増大するBIM/CIMコストに2次元機能しか使わないユーザーのライセンスをDWG互換CADに切り替えて対応するイメージ

そこで、3次元CAD のライセンスを2次元CAD機能だけを使うユーザーの分だけDWG互換CADに置き換えることにした。代替CADの条件となったのは、1から操作を覚える必要がないこと、過去のDWGファイルが使えること、DWGファイルの互換性が高いこと、起動が早いことだった。

これらの条件を満たすDWG互換CADとして選んだのが「JDraf」だった。その理由は日本語の表示がしっかりできること、メニューも日本語化されており、AutoCADに似た操作方式であることだ。

JDraf導入の理由を説明する長友氏

JDraf導入の理由を説明する長友氏

試用で検証したポイントはこれまでのDWGファイルがAutoCADと同様に再現できるか、JDrafで作成したファイルがAutoCADで同様に再現できるか、操作方法がAutoCADと大きく違わないか、そして他のソフトと干渉せず、社内のパソコン環境で不具合なく動作するかといったことだ。

こうした検証の結果を踏まえて前田建設工業の土木部門ではJDrafの導入を決めた。その結果、3次元CADのライセンス数の削減により運用コストを3分の1に、JDrafは運用コストを抑えられることから3次元CAD削減数以上のJDrafのライセンス数を追加できた。そしてCAD全体の運用コストは約40%も削減できたのだ。

   今なぜ、2次元CADを考えるのか

ジェイドラフ 代表取締役 宮田 信彦 氏

ジェイドラフ
代表取締役 宮田 信彦 氏

現在の建設業界で求められているのは、やはりBIMやCIMの導入による生産性の向上だ。DWG互換CADの一つであるJDrafを開発・販売するジェイドラフの代表取締役、宮田信彦氏は「BIMやCIMで成功するためのポイントは、人材育成と環境整備にある。これらのポイントを実現するためには高価なハードウェアとソフトウェアが必要となる。安価なDWG互換CADを導入して2次元CADのコスト削減ができれば、その実現に近づくことになる」と語った。

DWG互換CADで最も重要なのはDWGファイルとの互換性だが、これは前述したようにODAによる共同開発のライブラリーを採用している製品は実務での使用に耐える性能を有している。ユーザーは、ソフトごとの機能やサポート体制、そして価格によってどの製品を導入するかを決めることになる。

例えばJDrafの場合はAutoCADに似た操作性のほか、AutoCAD用に作られたCAD部品や各種カスタマイズを再利用できる。さらに、日本の建設業界で現在も幅広く使われているフリーソフト「Jw_cad」のデータを読み込めるほか、Jw_cadライクな操作画面も用意されている。そのため、Jw_cadに慣れた実務者も抵抗なくDWG互換CADに移行し、社内の図面ファイルをDWGに統一し、図面資産の効率的な利用も可能だ。

20150310-DWG15

BIMやCIMの導入を推進するためにも、安価なDWG互換CADを導入して2次元CADのコスト削減を行うという選択肢は、いまや現実的なものと言えそうだ。

 

JCICT

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