子育てや介護、働き方改革と生産性向上を両立
乃村工藝社のBIM360 Design活用戦略(オートデスク)

2019年7月18日

イベント空間や商業空間などの企画からデザイン、施工までを得意とする株式会社乃村工藝社(本社:東京都港区)は、2018年にオートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Revit」を本格導入し、クラウドサービス「BIM360 Design」と併用しながら、オフィスのほか、自宅やサテライトオフィスでもスムーズな設計業務を行えるようにした。その結果、 “働き方改革”と生産性向上を両立したのだ。

在宅勤務中の女性社員。自宅からBIM360 Designにアクセスすれば、会社にいるのと同じようにRevitによるデザイン業務が行える

在宅勤務中の女性社員。自宅からBIM360 Designにアクセスすれば、会社にいるのと同じようにRevitによるデザイン業務が行える

   出先からRevitで社内のデザイナーと共同作業

「オートデスクのクラウドサービス、BIM 360 Designを導入したおかげで、自宅や出先のサテライトオフィスでもRevitによるデザイン業務ができるようになりました。」と乃村工藝社
事業推進統括部 生産技術研究所BIMルームの田辺真弓さんは語る。

2002年に入社後、田辺さんは商業施設やショールーム、展示会、イベントなど様々な施設の制作管理に関わってきた。この間、同社では初の女性制作管理職になったほか、社内で初めて子ども3人を持つ母親となった。

そして仕事と子育てを両立しながら、2018年に発足したBIMルームの初代ルームチーフに就任。乃村工藝社でのBIM活用の推進や教育、サポートを担っている。

BIMルームのスタッフ。前列中央がルームチーフの田辺真弓さん

BIMルームのスタッフ。前列中央がルームチーフの田辺真弓さん

乃村工藝社グループにはデザインや設計を行うプランナーやデザイナーが約560人、制作管理を担うプロダクトディレクターが約520人いる。同社の特長は、内装や店舗デザインを行う前に、クライアントのビジネスを理解し、真の目標はどこにあるのかを探ることから始まる。

その後、デザイナーがデザイン・設計を進めるのと並行して、プロダクトディレクターと呼ばれる制作管理担当者が施工費をはじき出す。そしてコストオーバーになりそうなときは、デザイナーに早めにフィードバックする。

そして、工場製作も含めて現場で施工する。企画からデザイン・設計、施工までを一貫して、社内外のスタッフが密に連携しながら、クライアントが求める施設を予定されたコスト、工期の中で実現していく。こうしたプロジェクトは、年間約1万5000件にものぼる。

東京・お台場にある乃村工藝社の本社ビル。企画からデザイン・設計、施工までを社内外のスタッフが密に連携しながら、年間約1万5000件ものプロジェクトをこなしていく

東京・お台場にある乃村工藝社の本社ビル。企画からデザイン・設計、施工までを社内外のスタッフが密に連携しながら、年間約1万5000件ものプロジェクトをこなしていく

「BIM360 Designの導入は、密なチームワークが要求される当社にとって不可欠なものでした。社内外を問わず、デザイナーやプロダクトディレクターが同じBIMモデルにアクセスし、会社にいるのと同じように共同作業ができます。在宅勤務をしていても“孤立感”がないので安心です」と田辺さんは言う。

BIMとクラウドサービスを組み合わせた乃村工藝社のワークスタイルは、場所にとらわれずに働ける「テレワーク」を活用した働き方改革の成功例として社外からも注目を集めている。

BIMとクラウドを組み合わせた乃村工藝社の働き方改革は、テレワーク関係のイベントでも注目を集めている。アドビ システムズ主催の「建設・建築業向け働き方をデザインセミナー」に登壇した田辺さん(中央、写真:アドビ システムズ)

BIMとクラウドを組み合わせた乃村工藝社の働き方改革は、テレワーク関係のイベントでも注目を集めている。アドビ システムズ主催の「建設・建築業向け働き方をデザインセミナー」に登壇した田辺さん(中央、写真:アドビ システムズ)

   設計から工場製作、施工までをBIMで実施

企画、デザイン・設計から施工、運用までを一貫して行う乃村工藝社の業務スタイルに合わせて、BIMのワークフローも自然にできあがった。

デザインや設計のコンセプトが決まった後、RevitなどのBIMソフトを駆使して、デザイナーが設計を行っていく。その過程では、RhinocerosやGrasshopperなどのアルゴリズミックデザインソフトも駆使して形をデザインし、RevitのBIMモデルに取り入れていく作業もある。

アルゴリズミックデザインソフト、RhinocerosとGrasshopperによる展示会ブースのデザインデザイン案

アルゴリズミックデザインソフト、RhinocerosとGrasshopperによる展示会ブースのデザインデザイン案

レンダリングによるデザインの確認

レンダリングによるデザインの確認

Revitに統合された展示ブースのBIMモデル

Revitに統合された展示ブースのBIMモデル

その設計内容は、図面のほかCGパースなどでクライアントともに確認しながら詰めていくスタイルだ。

同時に、制作管理を担うプロダクトディレクターが、BIMモデルを元に建設コストをリアルタイムにはじき出していく。予算オーバーになりそうなときは、デザイナーに早めにアラートを出すことで、設計の手戻りやコストアップを未然に防ぐことができる。

設計が固まった後は、部材の工場製作に使う図面も自社で作成する。展示会ブースの装飾に使われる鋼板の形状は、一つ一つ、形が違う場合もある。

「そこで効果を発揮するのがデジタルファブリケーションです。BIMモデルから工場加工用のデータを作成すると、レーザーカッターで1枚ずつ形やサイズが違う鋼板を、スピーディーに切り出せます」と、乃村工藝社内でデジタルコミュニケーション領域の開発するNOMLABの高野次郎ディレクターは説明する。

このほか1枚の鋼板からできるだけ多くの部材を切り出せるように「板取図」や、部材を区別するために刻印する「自動ナンバリング」を行うためデータも自社で作成するのだ。

1枚の鋼板からできるだけ多くの部材を切り出すために作成した「板取図」

1枚の鋼板からできるだけ多くの部材を切り出すために作成した「板取図」

デジタルファブリケーションのために、部材の取り付け角度や座標を正確に決め、自動ナンバリングを行うための加工用データのイメージ

デジタルファブリケーションのために、部材の取り付け角度や座標を正確に決め、自動ナンバリングを行うための加工用データのイメージ

レーザーカッターによる部材の切り出し作業

レーザーカッターによる部材の切り出し作業

イメージ通りに完成した展示ブース

イメージ通りに完成した展示ブース

   VR、3Dスキャナーも活用した社内改装プロジェクト

2018年6月にオープンした社内の改装プロジェクトでは、BIMのほかバーチャルリアリティー(VR)や3Dレーザースキャナーによる点群計測といった最新技術も活用した。

社内の執務スペース1フロアを、社員同士のコミュニケーションスペース「Reset Space」として、若手社員を中心に企画からデザイン、設計、施工のすべてを手がけたものだ。

会話、くつろぎ、飲食、集中のほか体を動かすという5つのゾーンを設けているのが特長だ。

2018年6月にオープンした社内のコミュニケーションスペース「Reset Space」

2018年6月にオープンした社内のコミュニケーションスペース「Reset Space」

「このプロジェクトで特筆すべきは、既存のオフィス内部を3Dレーザースキャナーで計測したことです」と乃村工藝社生産技術研究所所長の福島努さんは語る。

「オートデスクの点群処理ソフト『ReCap』とライカジオシステムズの小型の3Dレーザースキャナー『BLK360』を連携させて、床や壁、天井裏の配管・ダクトなどを点群計測し、現況モデルを作成しました」(福島さん)。

このデータに基づいてRevitで改装案のBIMモデルを作成していった。さらにはVRデータも作成し、デザインを確認した。

施工に当たっては実験的に、壁やパーティションの造作、床の施工、家具の製作、植栽など複数の専門工事会社の担当がひと目でわかるように、BIMモデル上で発注先別の色分け表示も行った。多数のメーカーや施工会社をたばねて内装工事を行う乃村工藝社ならではのBIM活用がそこにあった。

オートデスクの点群処理ソフト「ReCap」と連動する小型3Dレーザースキャナー「BLK360」で改装前の建物内部を点群計測した

オートデスクの点群処理ソフト「ReCap」と連動する小型3Dレーザースキャナー「BLK360」で改装前の建物内部を点群計測した

計測された点群データ

計測された点群データ

Revitによる改装案の設計

Revitによる改装案の設計

BIMモデルをVRデータ化したもの。ウェブブラウザーを通じて上下左右360度、拡大・縮小してデザインを確認できる

BIMモデルをVRデータ化したもの。ウェブブラウザーを通じて上下左右360度、拡大・縮小してデザインを確認できる

工事の発注先別に色分け表示されたBIMモデル

工事の発注先別に色分け表示されたBIMモデル

開放感あふれるコミュニケーションスペース。左からBIMルームの赤池桃さん、生産技術研究所所長の福島努さん、BIMルーム ルームチーフ田辺真弓さん(左)。その片隅には、集中して作業できるブースも設けられている(右)

開放感あふれるコミュニケーションスペース。左からBIMルームの赤池桃さん、生産技術研究所所長の福島努さん、BIMルーム ルームチーフ田辺真弓さん(左)。その片隅には、集中して作業できるブースも設けられている(右)

   BIMルームを設置後、ユーザーが急増

乃村工藝社がBIMの本格導入を検討し始めたのは2017年だった。社内的にはBIM指定プロジェクトの増加や、子育てなどの負担が大きい女性デザイナーが増えたこと、外部的には働き方改革やBIM活用が普及しつつある業界動向に、対応が迫られたことがきっかけだった。

そこで部門を横断するBIM導入委員会が設置され、BIM勉強会や社外のイベント・セミナーでの情報収集が行われた。その中には、オートデスクが主催するAutodesk University Japanや、米国オートデスクがラスベガスで開催するAutodesk Universityも含まれた。

そして翌2018年、BIMの普及と活用促進を図る「BIMルーム」が発足し、ハイスペックのワークステーションが並ぶ「BIMトレーニングルーム」も開設。本格導入が始まったのだ。

これらの施設を利用したBIM研修は、毎年、Revitユーザーを50人ずつ増やすほどの人気だ。社内から希望者を募り、上司の了解を受けて実施している。

また、2018年度には、BIMなどのテクノロジーに興味のある学生を対象にインターンシップも行った。当初は100人程度を予定していたが、実際は約200人が参加した。2020年にはそのうち数人が入社する見込みだ。

「BIMトレーニング用研修室」でのRevit研修。毎年約50人のRevitユーザーを輩出している

「BIMトレーニング用研修室」でのRevit研修。毎年約50人のRevitユーザーを輩出している

「Revit講座は1回7時間で合計9日間行います。また、地方拠点から泊まり込みで受講する社員向けに、1日7時間半を5日間連続で行う短期集中コースも用意しています」と田辺さんは言う。受講生はオートデスクが実施する「Revit Architecture ユーザー試験」を受験するが、7割が合格している。

2019年度からは工事を発注する協力会社のスタッフや、海外拠点の社員向けにもBIM教育メニューを開始する。こうして乃村工藝社のBIMコミュニティーは、プランナー・デザイナーやプロダクトディレクターから協力会社、海外拠点、さらには新入社員まで急速に広がりつつある。

2016年以来、導入したAECコレクションのライセンス数は、2019年6月現在で28にものぼり、今後も導入の拡大が見込まれる。Revitのほか、内装業界での活用が多いVectorworks、Rhinoceros、SketchUpも併用している。

東京・お台場にある乃村工藝社は、BIMとクラウドが生み出す“BIMのダイバーシティー(多様性)”によって働き方改革と生産性向上を両立させていると言えそうだ。

【問い合わせ】
Autodesk Revit日本公式Facebook
autodeskrevitjapan@facebook.com
http://www.facebook.com/RevitJapan


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