山岳トンネルの予測型CIMをさらに「見せる化・活かす化」
岩判定会議の“バーチャル開催”で働き方改革(大林組コンソーシアム)

2020年2月11日

大林組コンソーシアム(大林組・伊藤忠テクノソリューションズ)は、山岳トンネル工事で前方の岩質変化などを3Dで見える化する「予測型CIM」をクラウド化し、岩判定会議の“バーチャル開催”を実現するために必要な開発を続けた。この試みが成功すれば、山間部の工事における「移動のムダ」がなくなり、生産性向上や働き方改革が実現できそうだ。

“バーチャル開催”された岩判定会議に、遠隔地から参加するイメージ

“バーチャル開催”された岩判定会議に、遠隔地から参加するイメージ

   予測型CIMをクラウドで「活かす化」

国土交通省は内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(略称:PRISM)を活用し、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」を進めている。

2019年度プロジェクトの試行業務として大林組コンソーシアムは、福井県と岐阜県の県境に位置する冠山峠道路第2号トンネル(発注:国土交通省近畿地方整備局)の工事で、「クラウドを利用したトンネル現場岩判定会議の遠隔参加」に取り組んでいる。

具体的には①切羽前方の岩質変化などの「見える化」に成功した予測型CIMのデータに説得力を加えて「見せる化」する、②予測型CIMをクラウド上で展開して「活かす化」する、③現場に受発注者などが集合して行っていた岩判定会議をWeb会議システムで“バーチャル開催”することで「移動のムダ」を削減する、という流れだ。

その中核となる予測型CIMの「活かす化」は、伊藤忠テクノソリューションズの情報共有プラットフォーム「CIM-LINK」によって実現している。(今回は予測型CIMの「活かす化」について記載する。「見せる化」については、2019年12月26日付けのサクセスストーリーを参照

地山情報などを「見える化」した予測型CIMに、説得力ある補足データを加えて「見せる化」し、さらにクラウドによって「活かす化」するイメージ

地山情報などを「見える化」した予測型CIMに、説得力ある補足データを加えて「見せる化」し、さらにクラウドによって「活かす化」するイメージ

   大容量3Dモデルもブラウザーでサクサク

「山間部で行われることが多い山岳トンネル工事では、現場への移動や情報収集、作業の手待ちなど、間接的な業務には今も多くのムダが潜んでいます。この部分の生産性向上には、工事関係者が場所や時間にとらわれず、施工に関する情報にアクセスできるクラウドシステムの導入が有効です」と、大林組技術研究所 地盤技術研究部の三宅由洋氏は説明する。

予測型CIMをクラウド上に展開するにあたって、地山情報や、施工データなど個々の3次元モデル化は3次元地質解析システム「GEORAMA」で作成した。

個々に作成したモデルは3次元属性管理システム「Navis+」(ナビスプラス)を用いて属性付与と統合を行い、統合3Dモデルとして作成、「CIM-LINK」のクラウド上で共有した。(GEORAMA、Navis+は、伊藤忠テクノソリューションズ製)。

「3Dモデルはクラウド上の高性能コンピューターで動くようになっているため、ユーザーはインターネットに接続された端末とウェブブラウザーさえあれば、大容量でもサクサクと動かすことができます」と伊藤忠テクノソリューションズ 建設ビジネス推進部建設システム課の山根裕之氏は説明する。

クラウド上に展開する予測型CIMを含めた地山情報のイメージ

クラウド上に展開する予測型CIMを含めた地山情報のイメージ

   SNSのように情報を手軽に共有、交換

CIM-LINKには、予測型CIMの3Dモデルのほか、様々な文書や写真をクラウド上のフォルダーに入れて共有する機能、メンバー間でメッセージを交換する機能などがある。まるでSNS(会員制交流サイト)のように、いつでもどこでも情報交換できるバーチャル会議室のような使い勝手だ。

「プロジェクトごとに工事に関わる発注者や受注者などのメンバーを登録できるので、情報共有やアクセス制限といった情報管理が簡単に行えます。新たにメンバーになった人も過去のメッセージをさかのぼって知ることができるので、過去の経緯を説明する手間も省けます」と伊藤忠テクノソリューションズの吉田哲也氏は説明する。

クラウド上では岩判定に必要なデータや資料をわかりやすいように一つの画面にまとめて配置することも可能だ。「ダッシュボード」機能を用いて、3Dモデルの表示領域や帳票などを自由にレイアウトする。

これを利用すればフォルダー上の資料を開いて見なくても、整理されたダッシュボードを見るだけでおおよその現場の状況を迅速に把握することができ、発注者は事前に事務所でその情報を閲覧することで、岩判定会議の効率化が図れる。また、施工者側も会議のための資料作成の手間を省くことができる。

関係者は遠隔地からクラウド上に整理されたデータにアクセスできる

関係者は遠隔地からクラウド上に整理されたデータにアクセスできる

   “バーチャル岩判定会議”で働き方改革を

このCIM-LINKの機能を使って実現を目指すのは、山岳トンネル工事の施工管理に欠かせない「岩判定会議」のバーチャル開催だ。

トンネル掘削時に突発的な不良地山に遭遇した際でも、工事関係者が様々な場所からネット上に集結し、クラウドサーバー上の切羽写真や施工データを見ながら、切羽最前線とWeb会議を開催することで支保パターンの選定を協議することができる。

大林組技術研究所 地盤技術研究部主任の藤岡大輔氏は「予測型CIMの視覚的でわかりやすい情報共有と、切羽からの音声付き動画の生中継を併用することにより、岩判定会議のバーチャル開催を実現したい」と意気込みを語る。

この計画が実現すると、これまで岩判定会議につきものだった「移動のムダ」や「手待ちのムダ」、「スケジュール調整のムダ」といった直接的な施工に関係のないムダが大幅に削減できることになる。

山岳トンネル工事の生産性向上はもちろん、現場で働く技術者や作業員の働き方改革にもつながりそうだ。

予測型CIMの開発にかかわった大林組コンソーシアムのメンバー

予測型CIMの開発にかかわった大林組コンソーシアムのメンバー

 【問い合わせ】
株式会社 大林組
生産技術本部 トンネル技術部
〒108-8502 東京都港区港南2-15-2 品川インターシティB棟
TEL 03-5769-1319、FAX 03-5769-1976
WEBサイト https://www.obayashi.co.jp

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部 建設ビジネス推進室
〒141-8522 東京都品川区大崎1-2-2 アートヴィレッジ大崎セントラルタワー TEL 03-6420-2666、FAX 03-3494-1940
WEBサイト https://www.ctc-g.co.jp/

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